
インナーやアウターとしてカジュアルファッションやスポーツでも着用されている、「レギンス」と「スパッツ」。
実はどちらも元は世界の軍隊で装備として使われた軍装品で、軍事用語でもありました。
今回はそんな2つの違いやそれぞれの名称の由来、歴史などを見ていきましょう。
目次
日本でのレギンスとスパッツの解釈
レギンスとスパッツはどちらもタイツの足先がない形をした、脚にぴったりとフィットする伸縮性のあるボトムスです。
特にはっきりとした定義や明確な区別はありません。
それもそのはずで、レギンスとスパッツは元は同じものだったのです。
ですから、なんとなくといった感覚的な使い分けがされていても間違いではないでしょう。
それでも、日本ではこの2つは次のように区別される傾向があります。
レギンス

レギンスは比較的新しく使われるようになったファンション用語です。
その丈は足首くらいまでのものが多く、スカートやワンピース、チェニックなどの下に女性が履いているものです。
使い方はタイツとほぼ同じです。
最近では男性にも、スポーツの際などにレギンスを愛用する人が増えてきているようです。
その場合もレギンスの上にスパッツを重ね履きします。
レギンスは英語でもleggings(レギングス)といいます。
スパッツ

スパッツはレギンスよりも前からある名称で、元はレギンスと同じようにファッション用語として使われてきました。
最近では膝上丈のものを指すようになり、ファッションとしてよりはスポーツ用途や寒さ対策のインナーとして着用する人が多くなっています。
通気性に優れ、ほどよく体にフィットする素材で作られているので、自転車競技や陸上競技、球技などではユニフォームの下に身につけるインナーとしても幅広く利用されています。
このスパッツはいわゆる和製英語で、英語のスパッツというと全く別のものを指します。
スパッツからレギンスへ

このように使い分けされるようになっている2つの用語ですが、元を辿るとまったく同じものでした。
元々はスパッツだった
今ではファッション用語としてすっかり定着しているレギンスですが、一般的にこの名称が使われるようになったのは、割と最近のことなのです。
2006年頃からファッション業界が使われ始めた言葉です。
それまではスパッツと呼んでいたものが、急にレギンスと呼ばれるようになりました。
ファッション業界の戦略
レギンスは、スパッツをもっとオシャレな呼び方で需要を高めようと考えたファッション業界が、戦略として打ち出したのが名称です。
その思惑通りにレギンスがヒットしてスパッツと分けられるようになった現在、レギンスとスパッツは日本の中ではそれぞれに違った用途で使われるようになってきています。
実は元々の意味はどちらも脚絆

レギンスもスパッツも、元々はゲートル、日本語でいう「脚絆(きゃはん)」のことを指します。
現在とはまったく違った意味を持つものでした。
レギンスも脚絆(ゲートル)を指していた
レギンスは、本来は脚絆(ゲートル)のことを意味する名称でした。
広い布や柔らかい革をボタンやバックルで固定したレギンス型(スパッツ型とも)や、包帯状の細い布を巻き上げて脚絆を作る巻脚絆が、第二次世界大戦の頃まで陸軍の装備として着用されていました。
硬い革で作られたすね当てのゲートルが、その形から幼児用の脚にぴったりとした細い防寒パンツの名前として使われるようになり、やがて女性向けファッションの名称へと変化していきました。
スパッツは元々誤訳
スパッツというのは、キレイに磨いた靴を土埃やはねた泥水などの汚れから守るために、靴を覆うカバーの一種です。
革や厚地のリネン生地、コットンなどで作られ、靴の上から足首全体を覆うようにつけます。
西洋では19世紀から20世紀にかけての、特に男性の礼装用として使われていました。
日本では脚絆=レギンス=スパッツという認識だったからか、前述した通りファッションに流用されたレギンスという名称が、スパッツとして伝わり定着したようです。
ただし登山用のスパッツは、そもそもの靴カバーと同じ意味で使われています。
似たようなトレンカ

スパッツやレギンスとよく似ているボトムスに、「トレンカ」というものもあります。
トレンカにはわかりやすい特徴があって、スパッツやレギンスにはない、足の裏の土踏まず部分に引っ掛ける部分がついています。
元はバレエ用のタイツとして利用されていたものですが、ファッション用として普及しました。
トレンカレギンスとも呼び、つま先やかかとの部分が素肌になるタイツとイメージするとわかりやすいかもしれませんね。
まとめ
それほど違いを意識せずに使っていたレギンスとスパッツですが、元は同じものでした。
そのため、混合されるのも仕方ないことだったりします。
スパッツは和製英語で、あとから普及したレギンスの方が英語として正しかったという少し特殊な普及の仕方をしています。