「あこぎな商売をする」などに用いられる「あこぎ」という言葉。
義理人情に欠けていることを意味し、特に利権や物をむさぼろうとすることを指す言葉です。
そんな「あこぎ」は能が由来となって生まれた言葉とされ、密漁をしていた漁師の物語が由来となっているとされています。
そこでここでは、「あこぎ」が持つ意味と類義語、この言葉の由来について解説します。
目次
「あこぎ」の意味と類義語
まずは「あこぎ」の意味と類義語をまとめたので、早速ですがチェックしていきましょう。
「あこぎ」の意味
あこぎは漢字表記で「阿漕」となり、利権や物をむさぼろうとする強欲であくどい様子などといった意味です。
シンプルに悪党であることを表現する言葉でもあります。
ニュアンスとしては「しつこい」「図々しい」などの意味合いが強く含まれており、特に義理人情に欠けていてあくどいことを指します。
主に無慈悲に金品をむさぼることを意味しており、現代ではぼったくり商法や悪徳商法などに対して使われることも多いのが特徴です。
また、度重なることを意味する言葉でもあります。
「あこぎ」の類義語
あこぎには、類義語として「非常」や「冷徹」といった言葉があります。
非情
「非情」とは、行動や言動が極めて悪いことを意味します。
人間らしい思いやりのない、感情が無いかのような言動を指します。
態度が極めて悪いことを指すことや、人の道を外れた行動などを表現する際に用いられることも多いです。
冷徹
「冷徹」とは、態度が冷たくて凄味があること指します。
この言葉には冷たく接するというところが強調された言い回しとなっています。
また、凄味を含んでいるのも特徴から、迫力のあるようなシーンで使われることがあります。
あこぎな商売
あこぎという言葉とセットで使われるのが「あこぎな商売」です。
倫理的に良くない商売のやり方を指しており、いわゆるぼったくり商法や悪徳商法の他、詐欺などの意味でも使われる言葉となっています。
「あこぎ」の由来
あこぎという言葉は、能の演目が由来となったとされています。
では、どのような物語からこの言葉が使われるようになったのかを解説していきます。
「あこぎ」の由来は能にあり
あこぎの語源は、能の演目にあります。
語源となったのは「阿漕」という題名の演目で、室町時代の能役者である世阿弥が作ったものとされます。
伊勢参りに訪れた人物が、年老いた漁師に「ここがどこか」と訪ねます。
すると阿漕ヶ浦という場所だと教えられました。
話の流れで漁師の話を聞くことになるのですが、その話は阿漕ヶ浦という地名の由来に関するものでした。
昔からこの地は伊勢神宮のお膝元であり、禁漁地であった。
しかし、阿漕という人物は穴場という事で度々密漁を行っていた。
そのため捕らえられ、海に沈められるという罰を受けた。
この逸話から、この地は阿漕ヶ浦となったというものでした。
漁師は最後に、阿漕は罪に苦しみ成仏できていないので弔って欲しいといって姿を消すのでした。
「あこぎ」は実際にある土地
あこぎの由来とされる「阿漕」の舞台となった阿漕ヶ浦。
これは実在する土地です。
現在の三重県津市東部一帯の海岸を指しており、実際にここは伊勢神宮に供える魚を獲る漁場としてかつて殺生禁断の地だったそうです。
「あこぎ」のもう一つの意味
あこぎは、アコースティックギターの略称でもあります。
ただし、その場合はカタカナ表記で「アコギ」となります。
アコースティックギターとは撥弦楽器の中でも古典的なもので、楽器から直接音が出るものを指すのが一般的です。
そのことから生ギターと呼ばれることもあります。
狭義でフォークギターのことを意味するとされていますが、「アコギ」という呼称の方が一般的な用法となっていますね。
「あこぎ」と使い分ける際には、カタカナ表記で「アコギ」とするとわかりやすいです。
まとめ
「あこぎ」は「あこぎな商売」というように、道理に反したあくどい商売をしている際などに用いらえる例えとなっています。
商売に限らず、義理人情に欠けていることを指したり、非情や冷徹という言葉と同様な意味でも用いられます。
これは実際にある阿漕ヶ浦という土地を舞台にした能の演目「阿漕」が由来とされています。