表面上は言うことを聞いているように見せながら、内心は反対していることを「面従腹背」と表現されます。
その様子から「腹背」は、内心で背くの意味のようにも見えますが、実際は異なる描写なのだとか。
そこでここでは、この「面従腹背」という言葉について、意味や由来、その類義語について見ていきましょう。
目次
「面従腹背」とは
まずは「面従腹背」という言葉について、その意味や用い方を見ていきましょう。
「面従腹背」の意味
「面従腹背」は従っているように見せておきながら、心のうちでは反対していることを意味します。
「面従」は外の面だけは従うように見せることを、「腹背」は腹の中では反対していることをあらわしています。
表と裏で思惑が異なることを指す表現なのです。
人は裏では何を考えているかわからない、という教訓めいたニュアンスで用いられることもあります。
「面従腹背」の用い方・例文
「面従腹背」は、立場が上な人への皮肉や批判などの意を込めて使用されます。
例えば、上司と部下や先輩と後輩の関係を見てみるとわかりやすいです。
嫌いな上司や先輩に命令された場合、立場上「仰せの通りに」と従っていても、腹の中では「やってられるか!」と悪態を背く場合もあるかもしれません。
このように、表向きは従っているように見えながらも、心根の感情は真逆であることを「面従腹背」と言うわけです。
「腹背」は『腹の中では背く』ではなかった!
「面従腹背」はもともと違う漢字表記だったとされます。
ここからは、「面従腹背」の由来について見ていきましょう。
もともとは「面従腹誹」だった?
現在は「面従腹背」と漢字表記がされますが、以前は「面従腹誹」と表現されることが多かったようです。
この「誹る(そしる)」という漢字は、「誹謗中傷」などで見かけることの多い漢字で、他人を貶したり悪く言うことをあらわす際に用いられます。
江戸時代末期の人物吉田松陰や明治時代に活躍した森鴎外なども「面従腹誹」という表現を使用しています。
ところが、「誹る」という漢字が日常では見かけない字だったこともあってか、いつのころからか「背く」という間違った字が使われるようになったようです。
中国での「腹背」の用いられ方
中国から来たようにも見える「面従腹背」ですが、実際は間違いが広まった言葉ですので、中国の故事に由来する四字熟語ではありません。
そもそも中国では、「腹背」はお腹と背中の意味から「前と後」を指すとされます。
「面従腹背」の類義語
最後に「面従腹背」の類義語を見ておきましょう。
類義語としては「腹に一物あり」「二股膏薬」「二枚舌」があげられます。
腹に一物あり
「腹に一物あり」とは、心中に企みがあることを意味します。
この「一物」とは、心の内に芽生えている企みのことを指します。
二股膏薬
「二股膏薬」とは、あちらこちらに従っていて態度が一定しないことを言った四字熟語です。
「内股膏薬」と表現されることもあります。
内股に貼った膏薬が、右と左、2つの股につくところから来た言葉とされています。
その様子から、相手に合わせて態度を変えることを意味するようになったのだとか。
二枚舌
「二枚舌」とは、前後矛盾したことを言うことを表す言葉です。
相手や自分の状況などに合わせて嘘をつくことを言います。
まとめ
「面従腹背」は従っているように見せかけながら、心中では反対していることを指します。
上の立場の人に従っているように見えつつも、実際には穏やかならぬ感情を抱いている下の立場にある人間の心情をあらわす言葉となります。
その類義語としては「腹に一物あり」「二股膏薬」「二枚舌」があげられます。