「檄を飛ばす」に励ましの意味は無かった!誤用表現は漢字の間違いから広がった?

落ち込んでいる人を元気づけようと声をかける意味で用いられる「檄(げき)を飛ばす」。
ところが、この「檄を飛ばす」には、本来元気づけるという意味はありません。

そこでここでは、「檄を飛ばす」という言葉の本来の意味や誤用の広がりについて解説します。

「檄を飛ばす」とは

 

まずは、「檄を飛ばす」の意味や成り立ちについて見ていきましょう。

本来の意味

自分の主張や考えを人々に知らせることで、同意を求めたり決起を促すというのが、「檄を飛ばす」の本来の意味です。

考えを周りに伝えて賛同を得ようすることをあらわしているので、「発破をかける」「やる気になる言葉を向ける」という意味はない、ということになります。

「檄を飛ばす」の由来

「檄を飛ばす」の『檄』は、自分の意見や主張をまとめて周りに賛同を得るのを目的とした文書「檄文」をあらわしています。
賛同してほしい自分の意見や主張を文書にまとめたうえで周囲に拡散する「檄文を飛ばす」行為が、「檄を飛ばす」の言葉の始まりです。

日本で有名な檄

「檄」は主に戦国時代といった名目を立てる必要のあった時代に見られ、現在ではめったに見られることのないものです。
戦後の日本では、小説家の三島由紀夫が1970年に陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地内の東部方面総監室占拠した際の声明が有名な檄文としてあげられます。

勘違いされるようになった「檄を飛ばす」

 

本来の意味合いとは異なる用いられるようになった「檄を飛ばす」。
それはどのくらい普及してしまっているのでしょうか。

文化庁による国語に関する世論調査

2018年3月に行われた文化庁の「国語に関する世論調査」の中で、「檄を飛ばす」の用法についても調査が行われました。
その調査では、本来の意味「自分の主張や考えを、広く人々に知らせて同意を求めること」と、勘違いされている意味「元気のない者に刺激を与えて活気付けること」どちらが正しい意味か、をアンケート形式で回答してもらうことで進められました。

その結果、「元気のない者に刺激を与えて活気付けること」を意味するという回答は67.4%にものぼりました。
本来の意味が正しい「檄を飛ばす」の意味だと回答した人は、22.1%と3分の1しかいませんでした。

年齢別に見ると、勘違いされている「元気のない者に刺激を与えて活気付けること」が正しい意味だと回答した割合の一番多かったのは30代で、74.8%、4分の3と大多数を占めています。
とはいえ、70代以上でも59.9%と半数を超えていますので、全世代的に本来の意味より勘違いの意味合いの方が広まっているということが分かります。

勘違いは漢字違いから?「激を飛ばす」

「檄」というのは、現代の私たちの生活では非常に見慣れない漢字です。
そのため「檄」の字を間違えて「『激』を飛ばす」と書き間違いをされることもあったようです。

この誤字「激」が励ましの意味を持つ「激励」と結びつき、現在の人を元気づけるという意味合いが誤用表現として生まれたのだと考えられています。

まとめ

本来は自分の意見を主張する意味である「檄を飛ばす」という言葉は、見慣れない漢字「檄」が「激」と勘違いされたことで激励の意味がある言葉と勘違いされるようになりました。
その結果、今では大多数の人が勘違いされた新しい意味を正として用いています。

激励の言葉だという認識がこのまま広まっていけば、遠くない将来のうちに辞書にも激励の意味が追加されるかもしれませんね!

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