「なし崩し」は、うやむやになる事ではない?元はネガティブな意味でさえなかった!

「なし崩し」という言葉の印象はどのようなものがあるでしょうか?

例えば『友達と出かける予定がなし崩し的に無くなった』というように、予定がうやむやになってなんかなくなってしまった、そんな意味合いで使われていないでしょうか。しかし「なし崩し」という言葉は本来あいまいさとは真逆の、計画性のある言葉でした。

時代を経て、いつの間にか真逆の意味になってしまった「なし崩し」という言葉についてご紹介します。

なし崩し

本来の意味

なし崩しを辞書で調べるとこのような意味になります。

1. 物事を少しずつかたづけていくこと。 
2. 物事を少しずつ変化させ、うやむやにしてしまうこと。

出典:dictionary.goo.ne.jp

現在では2のうやむやにしてしまう、の意で使われることが多いですが、本来は徐々に物事を変え整えていくこと、といったポジティブな意味合いの言葉でした。物事や状況を少しずつ変えていきという点は変わっていませんが、現在ではネガティブに用いられる言葉になってしまいました。

語源は「済し」「崩し」

前述で意味を2つ紹介しましたが、なし崩しにはもう一つの意味があります。

3. 借金を少しずつ返すこと。

出典:dictionary.goo.ne.jp

この借金を徐々に返済していくという意味こそが「なし崩し」の最初の意味です。

「なし崩し」とは本来「済し崩し」と書きます。「済し」は「済す」の変化形でこちらを意味します。

① 支払うべきものを支払う。 
② 借りたものを返す。

出典:weblio.jp

借金を返済し無くしていく、という計画的な行動をあらわしていた言葉が本来の「なし崩し」です。

勘違いされるようになった「なし崩し」

文化庁調査

2018年3月に文化庁が行った「国語に関する世論調査」では、なし崩しを「:少しずつ返していくこと」と返答した人が19.5%なのに対し、「なかったことにすること」と答えた人は65.6%と3倍以上の比率でした。

この調査は「借金をなし崩しにする。」の例文に対して「(ア):なかったことにすること 」「(イ):少しずつ返していくこと」のどちらかもしくは両方か別の意味、分からないの5つの選択肢から回答するというものでした。意味を2つ出された状態で大勢が「なかったことにする」を選択したので、「少しずつ返していくこと」の意味がそれだけ普及していないとも考えられます。

誤用されるまでの遍歴

本来は借金を徐々に返済する様をあらわしていた「済し崩し」は意味が転じて、物事を少しずつ片付けること、変化させていくこと、という意味が追加されました。そこから「少しずつ変化」の意味がネガティブな意味に誤用されて、現在では借金を済し崩すという文が、借金を徐々に返却することで借金を無くすという本来の意味から、借金の存在をうやむやにして踏み倒すと真逆の意味をあらわす文になってしまっています。

まとめ

「なし崩し」は本来の徐々に物事を前に進めることををあらわしていましたが、誤用が進んだ現在では物事をうやむやに収束させるという意味で使われることが多くなっています。

誤用とされてきた意味が、現在では辞書に記載されるほど普及していますので、言葉が生きているというのをあらわしている一つの例として覚えておきたいですね!

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
出典:dictionary.goo.ne.jp(なし崩し) / weblio.jp(済す)

関連記事(外部サイト)

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事