秋葉原を「あきはばら」と当たり前のようにみんな読んでいるけど・・、何かおかしくない?

電気街、そしてアニメ・サブカルの街として知られ、日本中だけでなく世界中から人々が訪れるアキバこと「秋葉原」。
"秋葉原"と書いて「あきはばら」と読みますが、じっくり地名と読みを見ているとある種の違和感を抱きませんか?

そう、漢字だけ見ると読みは「あきばはら」もしくは「あきははら」になるはずなんです。
それにもかかわらず、一般的に「あきはばら」と呼ばれています。

今回は、この読み方に謎がある秋葉原の地名について見ていきましょう。

秋葉原の地名の遍歴

 

まずは、秋葉原と呼ばれる地域の歴史を見ていきましょう。

秋葉原は明治になってから生まれた地名

「秋葉原」と呼ばれる土地の出現は、明治時代まで遡ります。

明治2年12月に大火が発生し、現在のJR秋葉原駅のある場所に防火用の空き地「火除け地」ができました。
この場所に明治3年10月、明治天皇の勅命で鎮火社が建立されました。

この鎮火社では、火の神「火産霊大神(ほむすびのおおみかみ)」、水の神「水波能売神(みづはのめのかみ)」、土の神「埴山毘売神(やにやまのめのかみ)」を祀っていました。
しかし、江戸時代から火事の多かった江戸の街では、火防の神として静岡県に総本社のある「秋葉大権現」が信仰されていました。

そのような背景があったことから、秋葉大権現が勧請されたものと誤解した人々は鎮火社を「秋葉様」や「秋葉さん」と呼んでいました。
そして、鎮火社のある火除け地は「秋葉様のある原っぱ」の意味で「秋葉の原(あきばのはら)」や「秋葉っ原(あきばっぱら)」、「秋葉ケ原(あきばがはら)」と呼ばれるようになりました。

秋葉大権現が祀られているという誤解は解かれることはなかったようで、いつの頃からか秋葉社と呼ばれるようになり、昭和5年には正式に「秋葉神社」と改名されたようです。
ちなみに、秋葉大権現は本来「あきはだいごんげん」と読むのですが、下町の訛りで「あきば」と発音が変化したそうです。

この秋葉大権現が勧請されたと勘違いされた「鎮火社の建立された火除け地」が、秋葉原の名前の起源となります。

現在は秋葉原にない秋葉神社

秋葉神社が建立されたのは、現在のJR秋葉原駅がある場所です。

秋葉原駅が作られる際、秋葉神社は実は移動しています。
現在、秋葉神社があるのは上野駅の北東、台東区の入谷や稲荷町と呼ばれる地域になります。

「あきはばら」という読みが根付いたのは駅ができてから?

 

「あきばのはら」や「あきばっぱら」、「あきばがはら」など様々な呼称をされていた秋葉原の読みですが、明治時代後期に「秋葉原駅」ができたことで「あきはばら」という読みが定着しました。
明治23年にできた貨物取扱所として開業した当時の「秋葉原駅」は、読みを「あきばのはらえき」とされていましたが、明治44年に「あきはばら」へと変更され現在に至っています。

「あきはばら」という読みは音位転換

 

秋葉原の読み方について、「あきはばら」と「あきばはら」どちらが正しいという歴史的資料はありません。

しかし、秋葉原という漢字表記を眺めると「あきばはら」が「あきはばら」へと変化したのだろうなといった予想もできます。
この発音などが入れ変わることを「音位転換」といいます。

音位転換というのは読みやすくするためだったり、なんとなくだったりで頻繁に起きる現象です。

例えば、「舌鼓」も音位転換が起きている単語です。
「した+つづみ」の組み合わせなので本来は「したつづみ」となるべきところを、より読みやすくするために「したづつみ」と読まれています。

秋葉原や舌鼓のように正式な読みが音位転換している単語は意外に多く、「新しい」は「あらたしい」が変化し「あたらしい」と読むようになったり「シミュレーションをシュミレーション」と読みやすいように誤読するというのは日常的に見られます。
これらのことからも、音位転換自体は決して珍しい現象ではないというのは分かっていただけるかと思います。

秋葉原の住所は秋葉原ではない?

 

ところで、意外なことに秋葉原駅の住所は秋葉原ではないということはご存知でしょうか?

秋葉原駅の住所

 

秋葉原駅周辺地域の住所は千代田区外神田となっています。
この「外神田」という住所は、神田川の外側に当たることから付けられた名前です。

江戸時代や明治時代初期は神田旅籠町や神田末広町など「神田〇〇町」と呼ばれていましたが、1964年の住居表示実施以降は「外神田一丁目~六丁目」という住所に変更されました。

秋葉原ってどこ?

 

秋葉原駅のある千代田区内に秋葉原という住所が無いことから、秋葉原を指す明確な範囲はありません。
そこで、東京都が策定した都心等拠点地区を見てみると、東はオフィスの立ち並ぶ「昭和通り」、西が神田神社の手前を走る「昌平橋通り」まで、南が万世橋のある「神田川」までで、北を末広町駅のある「蔵前通り」までとし、この4つに囲まれたエリアが秋葉原とされています。

真の秋葉原は台東区?

秋葉原駅のある千代田区には秋葉原という住所はありませんが、実は隣接した台東区には秋葉原という住所があります。
末広町より東部、JR線を越えた場所と昭和通りの間のワンブロックに「丁目」の設定こそない単独町名ですが、住所としての「秋葉原」は存在します。

まとめ

アニメやゲーム、そして電気街として知られる「秋葉原」の街を「あきはばら」と呼ぶのは歴史的いわれがあってのことではありません。
明治の終わりにできた秋葉原駅の読みが「あきはばらえき」となったことから定着した地名のようです。

もし、読み方が変更されず「あきばのはら」のままだったら・・・、略称はアキバから変わらないですね。

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