ことわざ「急がば回れ」、その由来とされる土地はどこにあるか知っていますか?

「何が起きたり何があるか分からない危険な近道を行くよりも、慌てずに遠回りでも安全な道を進んだ方が結果的に早く着くよ」という意味で使われる、ことわざの『急がば回れ』
これは、ある場所に向かう際、危険な近道を選ばずに安全な遠回りした方がいいとなった由来となる土地が明確にあります。

では、どの場所に対して迂回した方がいいといわれた言葉なのでしょうか?
今回は、ことわざ『急がば回れ』について見ていきましょう。

「急がば回れ」の意味

 

『急がば回れ』は、「物事を急いで成し遂げようとする際に、危険性の高い近道を選ぶよりも、遠回りでも安全な道を進む方が結果的に早く到着できるので遠回りの方が得策だ」という意味があります。
危険性が共に低いにも関わらずあえて遠回りした場合や、近道よりも遠回りの方が危険性が高いにも関わらず遠回りした際に使う言葉ではありません。

あえて遠回りしたという挑戦的な意味ではなく、あくまでも「危険な近道を選ぶより、安全な迂回路を進んだ方が得策」という意味だということをご留意してください。

急がば回れの類義語

急がば回れと同様の意味を持つことわざが、いくつかあるのでご紹介します。

急いてはことを仕損ずる

急いてはことを仕損ずるには、
いつもならうまくできることも、焦ってしまうと失敗することがある。
焦るような時こそ、はやる気持ちを落ち着かせて行動した方がいいという意味があります。

果報は寝て待て

果報は寝て待てには、
好機というものは願ったりすれば訪れるものではないので、焦って動くのではなく、静かに待っていた方がいいという意味があります。

「急がば回れ」の成り立ちで分かる、遠回りすべき道

 

多くのことわざが中国の故事に由来しますが、『急がば回れ』は室町時代の日本で生まれた比較的新しいことわざです。

語源は「短歌」

 

『急がば回れ』の由来となったのは、室町時代の詩人「宗長(そうちょう)」の詠んだ短歌です。

もののふの矢橋の船は速けれど急がば回れ瀬田の長橋

この短歌は、日本最大の湖「琵琶湖」の東にある草津宿から、西にある大津宿までの行き方を詠んでいます。

現代訳は以下の通りです。
「矢橋の船」は確かに足が早いけれど、急ぐ道なら「瀬田の長橋」を渡った方がいい。

早く行けるという「矢橋の船」というものよりも、「瀬田の長橋」というのを渡った方がいいというのはどういうことなのでしょうか?
ここからはこの歌に込められた意味を解説していきます。

遠回りした方が早いし安全!

 

当時、草津宿から大津宿までのルートは2つありました。

1つは近道となるルートで、草津から大津までを船に乗って横断するルートです。
草津宿の「矢橋(やばせ)」という湊から大津の湊まで一直線に行けるので、地図上では最短ルートになります。

もう1つは草津宿と大津宿を結ぶ東海道を進むルートです。
このルートは、琵琶湖の南端から流れる瀬田川に架かる「瀬田の大橋(唐橋)」まで迂回する必要があるため、遠回りとなります。

この2つのルートを聞いただけだと、直線状に進む上に船で移動できる横断ルートの方が早いように見えます。
しかし実際には船で湖上に出ると、琵琶湖の西にある比叡山から「比良おろし」と呼ばれる突風が来ますので非常に危険性が高いルートとなっています。

 

「比良おろし」は特に3月下旬、春の訪れのころの風は強くなります。
現在も琵琶湖の西部を走るJR湖西線の列車は、春先になると強風の影響で運休になることもあるそうです。

近道を船で移動すると、この比良おろしの影響で転覆する恐れもあります。
それに対し、迂回して瀬田の大橋の方まで行くルートは風の影響もないことから安全ですし、風の影響で船が欠航して足止めをくらうという心配もありません。

宗長はこれを歌に詠んだんですね!

まとめ

『急がば回れ』は、室町時代に交通の要所である琵琶湖を越えて京都に入るルートの2つのうち、どちらの方がより安全かつ早く到着するかを詠んだ歌から来ています。
比叡山からの風は非常に強く、現在も電車が運休になることもしばしば。
過去には実際に停車中の貨物列車が転覆するという事故も起こったほどの突風で、その時の推定最大瞬間風速57m以上であったとされています。

たしかにそんな突風の中、風を受けて進む帆船に乗っていたらいつ転覆するかわからないので、おすすめはできませんよね。

それに対して、琵琶湖の南端にある瀬田の長橋を渡るルートは、たしかに移動距離こそ大きくなるものの、安全に琵琶湖の西側まで行くことが可能です。
ですから、このルートをお勧めするというのは理にかなっているかもしれませんね。

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