「寂しい」と「淋しい」の違いが分かりますか?その使い分けは感情の激しさにあった

一人でいる時にふと「さみしい」や「さびしい」と感じたことはありませんか?
そんな「さみしい」や「さびしい」という言葉を漢字で書くと、「寂しい」の人もいれば、「淋しい」をイメージする人もいるでしょう。

本来どちらが正しいのか、今回は「寂しい」と「淋しい」の違いについて見ていきましょう。

「寂しい」と「淋しい」の意味

 

「寂しい」と「淋しい」、両者の意味は同じです。
「あるべきものや、あって欲しいものがなく、物足りない感情」「孤独で人恋しい感情」「にぎやかさがなく、静かな状況」という意味があります。

そして静かな状況ということから、もともとあった賑わいがなくなってしまった様子を指すこともあります。
「寂しい」と「淋しい」のように、漢字は違うけれど意味が同じ言葉を「異字同訓」といいます。「熱いと暑い」や「聞くと聴く」などが他にあげられますね。

このような異字同訓の細かい違いや使い分けを知るには、言葉ではなく"漢字"に着目します。
今回でしたら「寂」と「淋」です。

そこで、ここからは単漢字「寂」と「淋」について見ていきましょう。

「寂」とは

「寂」は、音読みで「ジャク」もしくは「セキ」と読みます。
意味は、「静か」や「ひっそりとしている様子」です。

「淋」とは

「淋」は、音読みで「リン」と読みます。
意味は「水が滴り落ちること」です。

「寂しい」と「淋しい」の違い

 

「寂」と「淋」の意味の違いが分かったところで、どのように使い分ければいいか、より詳しくみていきましょう!

 

「寂しい」と「淋しい」の使い分け

「寂」と「淋」の意味から、使い分けができます。

「寂」が静かな空間を指すことから、「寂しい」は情景の描写で用いることができます。
例えば、「人通りが少なくて寂しい道だ」といったように、シーンとした静寂さを表すときには「寂しい」を用いるのが一般的です。

「淋」は水が滴り落ちる様子を意味することから、涙の比喩表現となります。つまり、「淋しい」は心情を表すときに用いることが多いです。
「事故で主人を失い、淋しくて仕方ない」のような自分の心情を表す時には、「淋しい」と表記することができます。

常用漢字なのは「寂しい」

ところが、常にこのような「寂しい」と「淋しい」の使い分けができるわけではありません。
なぜなら両者には、現代日本語として大きな違いがあるためです。

その大きな違いというのが、「常用漢字」かどうかです。
常用漢字とは内閣告示による法令などの公用文書、新聞をはじめとしたメディアで使用できる漢字のことです。

この常用漢字に選ばれた漢字と読みは、「常用漢字表」に記載されます。
常用漢字表を確認すると、「寂しい」は記載されていますが、「淋しい」は記載されていません。

そこから考えると、「さびしい」や「さみしい」心情や状態を表す際には、基本的に「寂しい」と記述するのが無難でしょうね。

読みは「さびしい」と「さみしい」、どっち?

 

孤独な様子を表す際に、「さびしい」と「さみしい」という2つの読み方の候補がありますよね。
読み的にはどちらが正しいのでしょうか?

最初の読み「さびしい」

先に生まれたのは「さびしい」という読みです。

平安時代に「さぶし」という語から、「さびし」という言葉が出てきました。
これら「さぶし」や「さびし」が転じて、「さびしい」になったと考えられています。

転じて生まれた「さみしい」という読み

「さみしい」は、「さびしい」から転用された読み方とされており、江戸時代頃から使われるようになった読み方と考えられています。

無難な読みは「さびしい」?

「さみしい」は、「さびしい」から派生した読み方なので同じ意味合いです。
そのため大抵の場合、読み方は「さびしい」と「さみしい」のどちらでも良いともいえます。

しかし、一部の意味合いによっては「さびしい」の方が好ましい場合もあります。
それは、人気がなくてひっそりしている状況です。

「さびしい」の意味合いでは、あるべきものやあって欲しいものがなく物足りない感情と、にぎやかさが無静かな状況の両方を指します。

それに対し、「さみしい」は物足りない感情を指すことはあっても、無静かな状況で使わないとされています。
そのため、「人気がなくてひっそりしている状況」を表す場合は、「さびしい」を使うことになります。

また、前述の常用漢字表では「寂しい」の読みは「さびしい」のみで、さみしいは記載されていません。

こうなると、「さびしい」を使ったほうが無難と言えますね。

まとめ

ここでは「寂しい」と「淋しい」の意味の違いと使い分け、「さびしい」と「さみしい」の読み方の違いについて見てきました。
基本は「寂しい」を使ったほうが良いですね。
「淋しい」は常用漢字ではないので、公的な場面ではふさわしくありません。

しかし、あまりに孤独で悲しくて涙が止まらないような深い感情を表したければ、「淋しい」を使ったほうがいいかもしれませんよ。

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