
珍味として食されているホヤは、5つの味覚を持つ食材とされています。
このホヤ、ホヤ貝とも呼ばれることから貝の仲間と思っている人もいるのではないでしょうか。
しかし、実際には貝の仲間ではありません。
貝でないならどんな生き物なのでしょうか。
でこぼこしたこぶが並ぶ不思議な形状はまるで特撮映画などに出てくる怪獣や宇宙生物のようですが。
そこでここでは、不思議な生き物であるホヤについて、何者なのかご紹介します!
目次
ホヤ貝とは言うけれど・・・
ホヤについては市場などでもホヤ貝とされていることが多いのですが、果たして貝の仲間なのでしょうか。
ここでは、ホヤ貝と呼ばれるホヤが貝なのかどうかについて解説します。
ホヤは貝ではない
ホヤはホヤ類やタリア類、オタマボヤ類などが含まれる尾索動物という脊索動物の一種であり、貝ではありません。
ちなみに脊索動物とは、魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類など背骨(脊椎)を持つ動物を含む脊椎動物と、その近縁動物群であるナメクジウオとよばれる頭索動物、そしてホヤの尾索動物を合わせたものを指します。
ホヤ貝と呼ばれているのですが、これはあくまでも俗称であり貝ではないので注意が必要です。
幼生は泳げる
ホヤといえば海の中でも岩場などにくっついて生活している姿が観測されていますが、実はホヤの赤ちゃんは泳げるんですよね。
ホヤの幼生はオタマジャクシのような形状をしており、この時期の幼生は尾を振って泳ぐことができます。
泳げなくなるのは大人になった証
この遊泳するオタマジャクシ型の幼生は、成熟を前にして変態を行い固着性の成体となります。
ホヤの幼生は海底に降り、頭部を下にして岩場などに付着します。
それにより尾部が吸収され、脊索や背側神経索も消滅してしまうそうです。
その代わりに体全体を包む筋肉性の膜である被嚢(外套)が出現するのが特徴で、彼らにとっては泳げなくなることこそが大人になった証と言えるでしょう。
なお、ホヤの成体は入水口と出水口を持ち、海水を取りこんでプランクトンを食べて排出することで生活しています。
ホヤの名前の由来
そもそもホヤはなぜ「ほや」なんて呼ばれているのでしょうか?
これには諸説あるのですが、一番有力な説としてはヤドリギの古名で「寄生」を意味する「ほや」に由来しているという説です。
この説ではホヤの成体の姿がヤドリギの根を張る姿に似ていることから流用されるようになったとされています。
また、ランプシェードの「火屋(ほや)」に似ていることが由来とする説もあります。
しかしランプが伝来した江戸時代末から明治時代のことですので、それ以前からホヤと呼ばれていたことを鑑みると語源には該当しないとされます。
火屋は香炉の蓋から転用されてランプシェードの意味になったのですが、香炉の蓋とホヤは形状が全く異なりますので、旧来の火屋もまた語源では無いとされます。
他にも、炎のように赤いから「火焼(ほや)」、滋養強壮に効果があるとされたことから夜に保つと書いて「保夜」、と呼ぶようになったという説もありますが、いずれも俗説とされています。
ホヤにしかない?ホヤの5つの味覚とは
五味もしくは基本味ともいわれる味覚があります。
ホヤはこの五味を全て有した食材ともされています。
食材とされるホヤ
日本で食用とされているのは「マボヤ」と「アカボヤ」の2種類であり、いずれも新鮮なものはとても美味しいとされています。
主に食材としているのが、三陸地方を中心とした東北地方や北海道です。
逆に関東以西では、においが強いとされ、食卓に出されることはめったにない食材となっています。
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ホヤの生産地
マボヤは日本全国、韓国や中国でも漁獲されますが、一大生産地は東北、宮城県です。
特に牡鹿半島を中心とする東北地方に多いとされており、三陸沿岸などでは養殖も盛んに行われています。
対してアカボヤはというと天然物のみが存在しており、北海道などで生息しているのが確認されています。
ホヤの旬
ホヤはとにかく鮮度が命であり、旬な時期に食べるのと旬ではない時期に食べるのとでは味覚が大きく変わってしまうとも言われる食材となっています。
鮮度の落ちが早いため、時間が経つにつれて金属臭もしくはガソリン臭と形容されるような独特の臭いを強く発するようになります。
もしホヤを食べるなら新鮮なうちに食べなくてはいけません。
そんなホヤの旬は5月~8月とされています。
水揚されるのもこの時期なので、生のものを食べたいとなると口にできるのは初夏から夏にかけてという事になります。
5つの味覚
ホヤは五味の「甘味・塩味・苦味・酸味・うま味」の全てを兼ね揃えた唯一の食べ物とされています。
刺身だけではなく酢の物や焼き物、フライといった調理の他にも塩辛や干物に加工されることがあります。
ちなみに、韓国などではキムチの具とされることもある他、刺身としても食されているそうです。
まとめ
ホヤはホヤ貝とも呼ばれますが実際には貝の仲間ではありません。
尾索動物という脊索動物の一種とされています。
その味覚は5つもあるなど、食材としてはかなり万能です。
東北、特に三陸地方ではホヤを食す文化が強く、イメージキャラクターが作られたりイベントが催されたりもしています。