「奈落の底」の奈落ってどこ?「奈落の底に突き落とす」という言葉もあるけどその意味は?

「奈落の底」や「奈落の底に突き落とす」などの言葉で使われる「奈落」とは、端的にいうと「地獄」のことです。
奈落とは仏教用語での地獄の意味であり、奈落の底というと地獄の底という意味になります。

ここでは、そんな奈落がそもそもどこを指していて、どのような意味合いで使用される言葉があるのかを見ていきましょう。

「奈落」とは地獄のこと

 

まずは奈落がどこを指しているのか、どのような意味合いで用いられるのか、その詳細を見ていきましょう。

「奈落」とは

奈落とは、仏教用語で地獄を意味します。
その意味から一度落ちたら二度と浮かび上がることのできない場所を総じて奈落と表現することもあります。

また、地獄の底の中でも最下層を意味するところから、物事が落ちていって最後にたどり着く終焉の地のことを指すこともあります。

その他では、劇場で舞台や花道の下にある通路やスペースのことも奈落と呼びあらわされます。

「奈落」の由来

「奈落」という言葉は、梵語から来ています。
梵語というのは古代のインド・アーリアなどの言語に含まれるサンスクリット語のことです。
そのサンスクリット語の中の「naraka」という言葉が「奈落」の由来となっています。

この言葉の発音を音写という形で漢字表記して「奈落迦」という言葉が生まれました。
そこから「迦」の字が抜け落ちたとこで「奈落」になりました。

「奈落の底に突き落とされる」とはどういうこと?

 

仏教用語「奈落」を用いた「奈落の底に突き落とされる」という慣用句にはどのような意味があるのか、をここからは見ていきましょう。

「奈落の底」とは

奈落という言葉が地獄を意味します。
そして「奈落の底」はさらにその地獄の中でも底の底を意味していると捉えらることができます。

後述するのですが、古くから仏教などでは「地獄にはいくつもの階層がある」とされています。
そのため奈落の底は、その地獄の中でも最下層を意味するともされています。

まさに這い上がることのできない地獄の終着点なのです。

「奈落の底に突き落とされる」の意味

奈落には地獄を表す意味から転じて、どんなことをしても抜け出すことのできない状態に陥ることを表現する慣用句となります。

絶望の淵に追い詰められる状況や不幸のどん底に陥ったことを指しています。
そこから、失望させることや希望を奪うことをあらわす言葉としても用いられることがあります。

地獄とは一つではない?!罪によって様々な地獄が用意されている!!

 

日本に古くから伝わる地獄というのは、実は1だけではないのだとか。
複数の階層があるとされ、生前の罪によって落ちる場所が異なるとされます。

様々な階層があることから八大地獄とも呼ばれるのですが、他にも百三十六地獄や六万四千地獄などがあるとされています。
ここでは代表的な八大地獄について、どのようなものなのか詳しく解説します!

1.等活地獄

等活地獄とは、いわゆる殺生をした罪人が堕ちる地獄です。
地獄の中でも最上層にある地獄とされています。

ここでいう殺生とは、この世の生き物の命を絶つことです。
小さな虫であってもその命をいたずらに奪った者が懺悔しなかった場合に行く地獄とされています。
この中に堕とされた場合、互いに害心を抱き、自らの身に備わった鉄の爪や刀剣などで殺し合わなくてはならないとされます。
他にも、地獄の番人とされる「獄卒」に身体を切り裂かれ粉砕させられ、挙げ句の果てには魂も死んでしまうのだとか。

しかし、等活地獄では涼風と獄卒の声によって元の体として生き返るため、再び同じ責め苦が何度も何度も繰り返される地獄となっています。

2.黒縄地獄

黒縄地獄とは、殺生だけでなく、窃盗をした罪人が堕ちる地獄です。
罪がより深いという事で、等活地獄の下の階層にある地獄とされています。

黒縄地獄では獄卒が罪人を捕らえ、熱く焼けた鉄の地面に伏し倒します。
そして、同じく熱く焼けた縄で体に墨縄を打ちます。
鉄の斧や鋸をその跡に合わせて切る、裂く、削るといった恐ろしい罰を与えるのだとか。

この黒縄地獄には左右に大きな鉄の山があるとされ、その山の上に鉄の縄を張り、罪人にその縄の上を渡らせるという罰もあるとされます。
当然、バランスを崩した罪人は縄から落ち、砕けたりして死んでしまいます。
そして、等活地獄と同様に、獄卒によって生き返らされ再び罰を与えられるのです。

この苦しみは等活地獄の10倍とされています。

3.衆合地獄

衆合地獄とは、殺生・窃盗の他に邪淫をした罪人が堕ちる地獄です。
邪淫とは淫らな行為のことであり、この地獄は黒縄地獄の下の階層にあるとされます。

衆合地獄では多くの罪人が、相対する鉄の山の両方から崩れ落ち、圧殺される地獄となっています。

また、剣の葉を持つ林の木の上に美人が誘惑して招き、罪人が登ると今度は木の下に美人が現れて誘惑してきます。
その昇り降りを繰り返すごとに罪人の体から血が吹き出るのだとか。

その他、鉄の巨象に踏まれて押し潰されることもあるなどするため、この苦しみは黒縄地獄のさらに10倍とされています。

4.叫喚地獄

叫喚地獄とは、殺生・窃盗・邪淫の他に飲酒をした罪人が堕ちる、衆合地獄の下にあるとされている地獄です。
飲酒や売買するだけでは堕ちません。
お酒に毒を入れて人を殺したり、他人にお酒を飲ませて悪いことをしたりすると落ちる地獄とされます。

叫喚地獄では、熱湯の大釜や猛火の鉄室に入れられ、罪人たちが終始泣き叫ぶ地獄となっています。
その泣き喚いて許しを請う声を聞いた獄卒がさらに怒り狂い、罪人をより罰するという無限に続く地獄が広がっているわけです。

また、頭が金色で目から火を噴く、赤い服を着た巨大な獄卒が罪人を追い回して弓矢で射られるという罰もあります。
他には、焼けた鉄の地面を走らされ、鉄の棒で打ち砕かれるなど、その苦しみは衆合地獄の10倍となるそうです。

5.大叫喚地獄

大叫喚地獄とは、殺生・窃盗・邪淫・飲酒の他に妄語をした罪人が堕ちる地獄です。
妄語とは嘘をつくことで、これらの地獄は叫喚地獄の下の階層にあります。

罪人は叫喚地獄で使われる鍋や釜よりさらに大きな物が使われ、より大きな責め苦を受けて泣き叫ぶのだとか。
この苦しみは叫喚地獄の10倍とされています。

6.焦熱地獄

焦熱地獄地獄とは、殺生・窃盗・邪淫・飲酒・妄語の他に邪見をした罪人が堕ちる地獄です。
邪見とは仏教の教えとは相容れない考えを説いて実践することで、これらの地獄は大叫喚地獄の下にあるとされています。

この焦熱地獄では、常に極熱で焼かれ焦げることになるのだとか。
熱した鉄板の上で焼かれたり、鉄串に刺されて焼かれたりするとされています。
また、目・鼻・口・手足などに分解されてそれぞれが炎で焼かれることもあるという、非常に恐ろしい地獄となります。

この焦熱地獄の炎に比べると、それまでの地獄の炎が冷たく感じられるほどとされます。
この焦熱地獄の火を少し地上に持って来ただけで地上が焼き尽くされると考えられています。
その苦しみは、大叫喚地獄の10倍だとされています。

7.大焦熱地獄

大焦熱地獄とは、殺生・窃盗・邪淫・飲酒・妄語・邪見の他に犯持戒人をした罪人が堕ちるとされる地獄です。
犯持戒人とは、尼僧や童女への辱めや乱暴などのことを指します。
この地獄は焦熱地獄の下にあり、焦熱地獄よりも更なる極熱で焼かれる地獄です。

ここでは上の6つの地獄すべての諸苦に対して10倍の責め苦を受けるとされています。

8.阿鼻地獄(無間地獄)

阿鼻地獄(無間地獄)とは、殺生・窃盗・邪淫・飲酒・妄語・邪見・犯持戒人の他に、父母や聖者の殺害をした罪人が堕ちる地獄です。
地獄の最下層にある場所であり、真っ逆さまに堕ちたとしてもこの地獄に堕ちるまで2,000年かかるとされています。

上の7つの地獄が夢のような幸福であるかのように思えるほど、阿鼻地獄・無間地獄の責め苦は非常に重いとされています。
いわゆる地獄の中の地獄が、この阿鼻地獄(無間地獄)に当たります。

つまり、奈落というのはこの阿鼻地獄(無間地獄)を表しているともいえます。

まだまだある豊富な地獄の世界

その他にも地獄はさまざまな種別があるとされています。
特に八大地獄と比較されるように紹介されることが多い地獄が、八寒地獄です。

八大地獄が炎に焼かれるのに対して、八寒地獄は寒さによる責め苦を受けるという特徴を持っており、こちらも相当厳しい罰が待っています。

まとめ

奈落とは仏教世界での地獄のことです。
「奈落の底」というのは、そんな地獄の中でももっとも深い場所の事を指します。
八大地獄という考えに照らし合わせると、阿鼻地獄(無間地獄)のことと言ってもいいかもしれません。

この「奈落の底」を使った表現として、「奈落の底に突き落とされる」というものがありますが、これは深い絶望や回復不能なまでの失望を指す言葉となっています。

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