「風が吹けば桶屋が儲かる」とは、まったく関係がなさそうなところに影響が出ることを表現した日本のことわざです。
しかしなぜ、風が吹くことと桶屋が儲かることが繋がるのでしょうか。
そこでここでは、「風が吹けば桶屋が儲かる」の意味や理屈について解説します。
また、似たような言葉として挙げられる「バタフライエフェクト」との違いについても解説します。
目次
「風が吹けば桶屋が儲かる」とは
まずは「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉ついて見ていきましょう。
「風が吹けば桶屋が儲かる」の意味
「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざは、一見するとまったく関係ないように思われるところに影響が及ぶことを意味します。
日常生活ではあまり口にしませんし耳にもしない言葉ですが、小説やマンガのような書き物の世界では度々使われてきた言い回しとなります。
また、風がいくら吹いても桶屋が儲かることは実際にはそうそうありません。
そのため、現代では当てにならないことに期待する例えとしても使用されます。
「桶屋」ってなに?
そもそも桶屋というのは、何を指しているのでしょうか?
桶屋とは、桶や樽を作る職人のことを指しています。
かつては、桶結士や桶大工とも呼ばれていた職業です。
10世紀にはすでに存在したともされますが、職人として認められるようになったのは15世紀頃に入ってからだとされています。
その後、桶や樽が容器として庶民の生活必需品となってきたことを受け、17世紀頃からは製造と販売を兼ねる居職の桶屋が増えていきました。
当時、江戸をはじめとした全国の城下町などに「桶屋町」というエリアが存在していました。
現在でも地名や住所として桶屋町が残っている場所もあります。
「風が吹けば桶屋が儲かる」の理屈
では、なぜ風が吹くと桶屋が儲かるのでしょうか?
その理屈について見ていきましょう。
桶屋が儲かるようになるまでの理屈
風が吹くことと桶屋が儲かることは、一見しただけでは無関係に思えます。
しかし、この話は江戸時代の「世間学者気質」という娯楽本にその理屈がまとめられています。
1.風が吹くと、埃が立つ
2.その埃が目に入ると、失明する人が増える
3.失明した人は、三味線で生計を立てることが多い
4.三味線の胴を張るためには、猫の皮が必要になる
5.猫が狩られるので、ネズミが増えて桶が齧られる
6.その結果、桶の需要が増える
7.需要が増えた分だけ桶屋が儲かる
このような理屈から、「風が吹けば桶屋が儲かる」と言われるようになりました。
他にもある由来とされる説
「世間学者気質」にまとめられた理屈以外にも、「風が吹けば桶屋が儲かる」の由来とされる説があります。
例えば「桶」は棺桶のことで、風が吹くことで火事が起き、それによって死者が増え、棺桶の需要が増えることで棺桶を作る人が儲かるというものです。
他にも、北海道のオホーツク海沿岸では北風により流氷が漂着することや気温が氷点下となることなどから、桶が壊れてしまうから桶屋が儲かるという説もあります。
「バタフライエフェクト」とはまた違う
「風が吹けば桶屋が儲かる」と似たような言葉に「バタフライエフェクト」があるのですが、これはまた別物とされます。
ここからは「バタフライエフェクト」について見ていきましょう。
「バタフライエフェクト」とは
「バタフライエフェクト」とは、ほんの些細なことが、様々な要因を引き起こし最終的には大事になることの例えです。
気象学者のエドワード・ローレンツが、「ブラジルにいる蝶の羽ばたきは、テキサスでトルネードを引き起こしえるか」という議題で講演を開いたのが起源となっています。
このエドワード・ローレンツが気象シミュレーションをした際、1回目と2回目で若干数字を変更してしまいました。
初期値が多少違っても、結果に大きな変化をもたらすことは無いだろうと手間を惜しんだからなのですが、算出された両者の結果は大きく異なるものとなりました。
この結果を見たエドワード・ローレンツが着想を得たともいわれています。
「風が吹けば桶屋が儲かる」と「バタフライエフェクト」との違い
「バタフライエフェクト」は、ほんの些細なことが大きな変化の原因となりえることの例えです。
対して「風が吹けば桶屋が儲かる」は、物事が回り回って全く関係のなさそうなところに影響を及ぼすという例えです。
両者は、因果の対象に違いがあるのです。
まとめ
「風が吹けば桶屋が儲かる」とは、一見するとまったく関係ないように思われるところに影響が及ぶことの例えです。
実際に風が吹くことで桶屋が儲かるわけではないですが、理屈としてはうまく通っていますし、意外と物事というのはこういった偶然の連続が重なって影響を受けているものです。
「バタフライエフェクト」が類義語としてあげられることもありますが、こちらは小さな変化が、様々な要因が絡むことで大きな事象になるという例えです。
一見似ていますが、実は意味合いが異なるので注意が必要ですね。