「一挙両得」とはいうけれど何を得するの?意味や由来をご紹介

1つの行為で2つの利益を得ることをあらわす言葉のひとつに「一挙両得」があります。
しかし、どのような「2つの利益を得た」のでしょうか。
それを知るには、この言葉の語源を知る必要があります。

そこでここでは、「一挙両得」がどのような意味があるのか、また、背景にある故事について解説します。

「一挙両得」とは

まずは、「一挙両得」という言葉について見ていきましょう。
ここでは一挙両得の意味と対義語をまとめます。

「一挙両得」の意味

一挙両得は、「一挙」が1つの動作や行動を、「両得」が得た2つの利益の事をあらわしています。
つまり、1つの行為で同時に2つの利益が得られることを意味しています。

また、わずかな労力で多くの利益を得る例えとしても用いられます。

対義語は「二兎を追う者は一兎をも得ず」

一挙両得の対義語は「二兎を追う者は一兎をも得ず」です。
これは2つを追えば1つも得られないという例えとなります。

2羽の兎を追う中で、それぞれ別の方に向けて逃げられたら、少なくとも一瞬はどちらを追うか悩んでしまいます。
そうすると、1羽どころか2羽とも捕まえ損ねてしまう事は大いにあり得ます。

この言葉は、そんな欲張った行動を戒める際にも用います。

「一挙両得」の由来とされる2つの故事

「一挙両得」の由来としては、2つのある故事があげられます。
ここからは「一挙両得」の元とされる故事について見ていきましょう。

国を大きくする術から生まれたとする故事

前漢末に編纂された「戦国策」という書があります。
これは、中国における戦国時代に当時の遊説家(ゆうぜいか)が策謀として挙げたものを、前漢の時代になってまとめた書物です。

この書の中に「一挙而名実両附」という言葉が出てきます。
名と利の両方が得られることを指す言葉です。
これは、秦という国が蜀という国を攻めるという提案がされた時の言葉です。

秦の国王の前で、天下を取るために韓という国を攻めることからはじめるか、蜀を攻めるかについて議論が行われた際の事です。
まず、周辺国と同盟を組み、韓を攻めることで当時の中国の中心的存在だった周に軍を進める算段を取るべきだという意見が出ました。
それに対して、広大な土地を有す蜀を攻めようという意見も出ました。

当時の秦は領土が狭く、民は貧困にあえいでいました。
そんな状態で天下を目指しても国民が付いてきませんし、まだ中央で健在だった天子への反逆とみなされてしまいます。
それよりも蜀を攻めることで、広大な領地を得ることができれば、国土が広くなるだけでなく国の困窮状態を払拭できます。
そうすれば民からの信用も得ることができるだろうというものでした。

そう、蜀攻めはという一手は、国土と名声の両方を得ることができる計画となるのです。
こうして、蜀を攻めた際のメリットとして挙げられた「一挙而名実両附」という言葉が、変化して「一挙両得」になったとされています。

虎の退治から生まれたともされる故事

一挙両得は、もう1つの中国の故事から生まれたともされています。

その昔、ある1人の男が2頭の虎を退治しようとしていました。
しかし、当然ながら1人で2頭を相手にするのは非常に危険です。

そこで、男はまず虎同士を戦わせることを思いつきます。
そして勝った一頭の方だけを退治したわけです。

その結果、2頭分の手柄を得ることができました。
この逸話から「一挙両得」という言葉は生まれたともされています。

この物語は、三国志の時代の後に天下を治めた晋という国の歴史書「晋書」に書かれた逸話となります。
そのため、時代的には秦が蜀攻めを決めたという時代よりかは後の時代となります。

「一挙両得」の類義語

ここからは、「一挙両得」の類義語を見ていきましょう。

一石二鳥

一石二鳥とは、文字通り1つの石で2羽の鳥を得ることをあらわす言葉です。
転じて、1つの行動で2つのいい結果を得ることを意味するようになりました。

濡れ手で粟

「濡れ手で粟」とは、 濡れた手で粟を掴むことからきた言葉です。

濡れた手で粟を掴めば、粟粒がたくさんついてきます。
そうやって小さな工夫で多くの利益を得ることを表現します。

工夫次第で骨を折らずに利益を得られることの例えとして用いられます。
転じて、やすやすと金儲けをすることの例えとしても使われるようになりました。

まとめ

一挙両得は、1つの方法で2つの利益を得ることを指した言葉です。
これは国を大きくする術に関する故事からきているとも、虎を退治しようとした男に関する故事から来たともいわれています。

類義語としては、「一石二鳥」や「濡れ手に粟」などがあげられます。

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