
動物園や牧場見学をするとよく見かける「山羊」と「羊」。
この2種の動物、どちらが山羊でどちらが羊か明確にわかりますか?
羊と山羊は角が違い、目は同じ形をしているのかといった外見だけではなく、肉や革の違いまで含めて山羊と羊の違いを解説していきます。
山羊と羊は分類学上違う
そもそも。山羊と羊は違う動物です。
見た目に相違がある、といった事ではなく生物分類学上で違う生き物です。
山羊は「鯨偶蹄目ウシ科ヤギ亜科ヤギ属」を指し、
羊は「鯨偶蹄目ウシ科ヤギ亜科ヒツジ属」の生き物です。
染色体の数も山羊が「60」に対して羊は「54」となっていますので、山羊と羊は別々の進化をしてきた別の動物なのです!
しかし共通点もあり、偶蹄目のため、蹄(ひづめ)は二つに分かれており、胃袋が4つある反芻胃(はんすうい)を持っています。
山羊について

山羊の生態
山羊は、山岳地帯などの高所で険しい地形を好みます。
人間では容易に登ることのできない崖でも移動することができます。
山羊が家畜になった起源
山羊は古くから家畜として親しまれており、紀元前10,000年ごろに現在のトルコ南部で家畜化したのがはじまりとする説があります。
紀元前12,000年ごろに最初に家畜化された犬に次いで家畜化された動物だと考えられています。
家畜としては最初期は肉を、そして次第に毛皮や乳を求められるようになり現在に至るようです。
羊について

羊の生態
羊は群れを作りたがる性質があり、群れから離れることを嫌がります。
それもあって、群れのリーダーに付き従う傾向がみられます。
この性質は家畜されるにあたってとても重宝されたそうです。
羊が家畜となった由来
羊もまた古くから家畜として親しまれており、紀元前7,000年ごろに家畜化されたという説があります。
山羊より家畜になった時期は遅いとされています。
乳、皮は山羊の方が優れているとされていましたが、羊には山羊には無い脂肪が多く蓄えられているという性質がありました。
そのため、乾燥地域で生活をしていた当時の遊牧民には欠かせない存在になったと考えられています。
山羊と羊の星座

山羊座の物語
山羊座は黄道十二星座の一つですが、星座の中でもひときわ不思議な「上半身が羊で下半身が魚」という姿であらわされていることで知られていますよね!
そんな山羊座の物語をご紹介します。
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ゼウスをはじめとした神々はある時、ナイル川の岸で宴会を開きました。
頭に山羊の角が生え、上半身は人間、下半身が山羊という姿をしていた羊飼いと羊の群れを守護する神「パーン」ももちろん呼ばれており、笛を吹いたり踊ることで神々と宴会を堪能していました。
ところが、そんな楽しい宴会にギリシア神話最強の化け物とも呼ばれるティポーンが現れました。
この襲撃が突然だったこともあり、神々は恐れ逃げ出しました。
もちろん、パーンも急いで逃げ出しました。
まずはその姿を山羊に変えて逃げたのです。
更にナイル川付近までやってきたので、水中に逃げ込もうと姿を魚に変えようとしました。
しかし、ティポーンの恐ろしさに慌ててうまく魚に変身できませんでした。
パーンは焦って変身しましたが、返信できたのはなんと下半身だけ。
結果、パーンは上半身が山羊で下半身は魚という珍妙な姿で逃げることになったのです。
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このパーンの姿を神々は大いに気に入り、星座として残したのが山羊座だといわれています。
牡羊座の物語
牡羊座もまた黄道十二星座の一つです。
ギリシア神話の中で語られている物語をご紹介します。
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ボイオティア王アタマスと妻ネペレの間には、王子プリクソスと王女ヘレという二人の子供がいました。
しかし、アタマス王は妻と離別し新しい妻イノをむかえます。
イノとの間にも子供ができたことで、イノは先妻の子供二人を疎んじるようになりました。
そこで、イノは飢饉なのでプリクソスとヘレの二人を神の生贄に捧げよという嘘の神託をアタマス王に告げました。
イノの悪巧みによって生贄となることが決まったプリクソスとヘレですが、そこにゼウスからの助けが入ります。
それが黄金の牡羊でした。
黄金の牡羊は二人を背に乗せると空をかけていったのです。
しかし、ヘレは途中で羊から落ちて命を失ったといわれています。
その後、王子プリクソスはコルキスへ逃亡し、その地で黄金の牡羊を生贄に捧げることで神に返すのでした。
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そうして大役を果たした黄金の牡羊は星座になったといわれています。
羊も羊もギリシャ地方では古くから日常の中で重要な存在だったからこそ神話にも登場し、星座になるほどの存在になったのではないでしょうか。
山羊と羊の特徴的な違い

山羊と羊の特徴的な違いは多くありますので、紹介します。
ただし、山羊と羊それぞれの種類によってはその違いが該当しないということはあります。
尾の長さが違う!
山羊の尾は短い

ご覧の通り、結構短いですね。
羊の尾は長い

これは意外な長さですよね!
ただし長い尾は野生の羊だけです。
家畜飼育している羊の場合、長い尾をしていると尾に付いた汚れが毛に付いてしまい採取量が減ってしまうため、生後すぐに切断されてしまうそうです。
その為、羊の尾も長いイメージがないんですね。
角の長さが違う
山羊の角

婉曲をしながら後方に伸びています。
羊の角

螺旋状の渦を巻いた形をしています。
あごひげの有無
山羊にはあごひげがある

山羊には、蓄えられた立派なあごひげがあります。
羊にはあごひげは無い

羊にはあごひげはありません。
ただし、首元からもこもこの毛が生えていますので、あごひげが生えているように見えることもあるかもしれません。
のどの垂れた肉
山羊には肉髯(にくぜん)がある

山羊ののどの部分には、こぶのような肉垂がありますね。
羊には肉垂はない

羊ののど部分にはこぶのようなものはありません。
食事の違い
山羊
山羊は草の他にも木の葉や木の芽に木の根を食します。

羊
羊は草を好んで食します。

家畜としての違い
家畜としても長い歴史のある山羊と羊。
とはいえ、両者には家畜としての特徴も異なる点があります。
食肉としての違い
山羊肉

山羊肉には強い臭いがあり、世界中で山羊肉料理の際には臭い消しとして香辛料を使うことが多いようです。
日本の場合は、主に南西諸島で山羊肉は消費されています。
特に沖縄では種類が多く山羊汁や山羊刺し、沖縄本島のヒージャー、宮古島のピンザ、多良間島ではピンダと呼ばれる料理が有名ですよね!
山羊の睾丸の刺身は特に重宝されていて沖縄や奄美群島、トカラ列島ではご馳走とされているそうです。
羊肉

羊肉はジンギスカンやラムしゃぶが有名ですよね!
主に北海道で食されているイメージが強いかもしれません。
海外では広く食されていてオーストラリアやニュージーランドの他、宗教的理由からイスラームが普及した国では豚肉の代わりに消費が多くなっているそうです。
日本の宮中晩さん会のメインメニューも、宗教上忌避されていない事から羊肉を使っているそうです!
山羊革と羊革の違い
山羊革
山羊革は「ゴートスキン」と呼ばれています。
革の表面にはシボ模様と呼ばれる小さくてシワがあり、弾力性があり摩擦にも強いです。
製品化しても型崩れしにくいともいわれています。
「ゴートスキン」は成獣の山羊から作られていますが、「キッドスキン」と呼ばれる子山羊の革もあります。
こちらにもシボ模様はありますが、「ゴートスキン」よりキメが細かい革になっています。
羊革
羊革は「シープスキン」と呼ばれています。
毛穴によるきめが細かく、薄くて柔らかいことが特徴です。
ですが、水に弱い点と繊維が粗いという特徴から型崩れするものには使われないことが多いそうです。
しかし、断熱性と保温効果が高いため手袋やコートといった温かさを求められる製品には一番適しているともされます。
「シープスキン」は羊の成獣の革ですが、子羊の革は「ラムスキン」と呼ばれており、「シープスキン」よりもキメが細かく毛穴ま小さく、より滑らかでしっとりとした革になっています。
生後6ヶ月以内のラムスキンは「ベビーラムスキン」とも呼ばれています。
山羊と羊ここは同じ

最初のほうで、偶蹄目のため蹄(ひづめ)は二つに分かれており、胃袋が4つある反芻胃(はんすうい)を持っている点が共通点としましたが、もちろん他にも共通点がありますので紹介します。
瞳の形が四角い

山羊も羊も特徴的な四角い瞳を持っています。
これには視野を広くするという効果があります。
肉食動物に早く気付くことで逃げきれるようにするために視野を広くする四角い瞳になったと考えられています。
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山羊と羊の交配種がいる!
本来違う種の山羊と羊には交配ができません。
ですが、稀に自然交配されることがあります。
その交配種は、山羊の「goat」と羊の「sheep」から「geep(ギープ)」とも呼ばれています。
山羊と羊のハイブリットは、国内では大阪のワールド牧場などで出生が確認されています。
まとめ

山羊と羊には尾や角、あごひげや肉垂の有無といった見た目で判断できる違いが多くあります。
それだけ相違点がありつつも交配種が生まれてきてしまうことがあるというのは驚きですね!
違う種になったとはいえ、相当近い種ではあるようですね!