ウロコフネタマガイは2001年に発見された地球上で唯一、硫化鉄を体の構成成分としている生命体です。
世界でも希少な鉄による生体構成をしているウロコフネタマガイの生態や特徴についてご紹介します!
目次
ウロコフネタマガイの生息地と生態
ウロコフネタマガイは足の裏にびっしり鱗が生えていることから、スケーリーフット(scaly-foot)鱗のある足とも呼ばれています。
生息域
ウロコフネタマガイが発見された海域
ウロコフネタマガイが2001年に発見されたのは「中央インド洋海嶺」の「かいれいフィールド」と呼ばれるエリアでした。位置としてはモーリシャス共和国の東南東のエリアだったそうです。
2007年には「南西インド洋海嶺」で標本が採取され、後に2011年に生きた標本が採取されました。
2009年には最初の発見地「かいれいフィールド」の北部にある「ソリティアフィールド」で、同種ながら硫化鉄を含まない白いウロコフネタマガイが採取されました。現在のところ、インド洋内でのみウロコフネタマガイは発見されています。
ウロコフネタマガイの生息場所
ウロコフネタマガイが生息しているのはインド洋内の「熱水噴出域」という場所です。熱水噴出域は地熱エネルギーで熱された水が噴出する割れ目があるエリアです。
熱水噴出孔から噴出する水温は400度にもなりますが、ウロコフネタマガイが発見されたのは水深2400~2900mという深海のため、高い水圧がかかっているので水は沸騰しないで液体のままだそうです。
ウロコフネタマガイの住まい
この「熱水噴出域」で海底から噴出する水には金属などの物質が含まれています。その熱水に含まれていた物質が沈殿して時間の経過とともに積み重なり、柱状に固まって構造物を形成します。この沈殿物による構造物を「チムニー」といい、ここをウロコフネタマガイは巣としています。
ウロコフネタマガイの生態
ウロコフネタマガイが生息する深海は栄養素がほとんどありません。熱水が噴出しており、栄養も無い場所でウロコフネタマガイが食事をどうしているかというと、すべては食道部分には共生細菌任せです。
この細菌はウロコフネタマガイが吸収した熱水噴出域から発生している硫化水素を栄養に変換するという性質を持っています。そのため、ウロコフネタマガイは食事をすることなく栄養を摂取することができるそうです。
ウロコフネタマガイの特徴
鉄製の殻と鱗
ウロコフネタマガイの鱗は鉄とイオウを原材料とする硫化鉄、殻はグライガイトと黄鉄鉱でできています。殻は外側の層が鉄を含んでいるグライガイトと黄鉄鉱でできていますがその内側は通常の貝類と同じく炭酸カルシウムでできています。ウロコフネタマガイは貝の蓋を持っていないため、危険が迫った場合は鉄の鱗のある足をすぼめることで身を守ります。
熱水固有種
熱水噴出孔にすむ生き物は現在数百種が知られています。そのうちの7割以上がこの熱水噴出孔での生存に適応しすぎてしまい、他の環境では生きていけなくなっています。この他の環境で生存できない生き物を熱水固有種といいます。この熱水固有種にはウロコフネタマガイも含まれています。
ウロコフネタマガイは、熱水噴出孔から噴出する硫化水素を吸収して硫化鉄の鱗を持つようになり、酸素の薄い深海だからこそその体を錆びさせずに生存できていました。実際標本として地表に持ち帰られた個体は体が錆びてしまったそうです。
ウロコフネタマガイの標本が見られる!
ウロコフネタマガイは残念ながら地表では生きていけず死んでしまいましたが、現在は標本として新江ノ島水族館に展示されており、世界で唯一ウロコフネタマガイを実物で見られる水族館となっています。
【公式サイト】
https://www.enosui.com/
まとめ
ウロコフネタマガイは深海にある「熱水噴出域」に住んでいるからこそ、鉄の鱗と殻を手に入れて生存できる特殊な生き物でした。地上に標本として持ってこられた個体は体が錆びていくというストレスで死んでしまったとも考えられていますので、完全に熱水噴出域でしか生きていけない生き物なんですね!鉄の体を持つというのはカッコいいですが大変な生き方のようです。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
出典:wikipedia.org(Scaly-foot snail)