ハナカマキリは真っ白な姿が美しいカマキリの一種です。白い姿は目立つので自然の中で生き抜くには適していないようにも見えます。しかし、ハナカマキリは蘭の花に擬態することに特化した、蘭の花への保護色として白い体を用いている昆虫です。美しい姿をした擬態の達人、ハナカマキリの擬態を用いた捕食活動についてご紹介します。
目次
ハナカマキリの生息域と生態
ハナカマキリの生息域
ハナカマキリは東南アジア全域に分布している昆虫です。主に熱帯雨林に生息しており、成虫は蘭の花の側で擬態して捕食活動をしています。
ハナカマキリの生態
ハナカマキリの成虫体は、メスが7cmほどある大型のカマキリとなります。オスはメスの半分しかなく、3~4cm程度の大きさにしかありません。
カマキリの仲間としては珍しく、メスとオスの間で極端な体格差があります。小柄なオスはメスよりも小回りが利くため敏捷に動きまわり、交尾の際はメスに捕食されないよう後方から慎重に近付くそうです。
擬態の達人
ハナカマキリの成虫は蘭の花の側に身を隠し、待ち伏せすることで花の蜜を吸いに来たハチやチョウなどの昆虫を捕食します。
幼虫と成虫で実は擬態による捕食方法が違う
ハナカマキリの擬態による昆虫の捕食方法は実は幼虫時代と成虫になってからでは違うという事が分かっていますので紹介します。
幼虫は花のフリをしておびき寄せて捕食する
小柄な幼虫時代のハナカマキリは、植物の葉の上にいるだけでまるで花のように見えます。体色も白へと変化途中で薄いピンク色をしており、まるでピンク色の花のように見えます。蜜を探すハチを花に見える姿でおびき寄せて捕食します。
外見でおびき寄せるだけでなく、フェロモンを分泌することで幼虫のハナカマキリはハチをおびき寄せています。ハナカマキリの幼虫のあごからは、ハチが仲間を呼び寄せるのに用いる際に使うフェロモンと同じ化学物質が検出されています。
このフェロモンの効果でハチは花に擬態したハナカマキリの幼虫の元へとおびき寄せられるのです。そしてフェロモンを分泌する能力は幼虫だけで、成虫からはフェロモンが分泌されません。
成虫の捕食方法は花に隠れて擬態
体も大きくなり、ハチをおびき寄せるフェロモンも分泌されなくなった成虫は擬態による捕食方法が変わります。幼虫は葉の上で自分が花に見せかけるように擬態をしていましたが、成虫は花に紛れ込むことで、花の蜜を吸いに来たハチやチョウを捕食します。
オスは白くない
メスの半分程度しかないオスのハナカマキリですが、実は色も白くはありません。花に擬態するメスとは違い、交尾するためにも動き回る必要があるオスの場合、白い派手な体色では昆虫を捕食する生き物に簡単に見つかってしまいます。そのためオスのハナカマキリは茶色や薄い黄緑色といった地味な保護色の体色をしています。
生まれたころから擬態がうまい
生まれたばかりのハナカマキリは白くなく、赤みがかった橙色と黒のツートンカラーをしています。1cmにも満たない大きさで生まれたハナカマキリは、脱皮を重ねるごとに色が白くなっていきます。最初は体色が橙色と黒なのは、生息地である熱帯雨林に生息しているカメムシに擬態しているためと考えられています。
カメムシは悪臭を放つことで捕食されないように身を守っている昆虫です。そのカメムシに擬態することで、ハナカマキリの幼虫は身を守っています。
まとめ
白く幻想的な姿をした昆虫です。しかし白いその姿は生き抜くための実用的な姿でもありました。日本には残念ながら生息していませんが、昆虫園で飼育されている時もあるというので、動物園内にある昆虫園の方にも足を向けてみると、ハナカマキリの姿が見られるという幸運に出会えるかもしれません!
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出典:Wikipedia(Hymenopus coronatus)