「精進揚げ」は野菜の天ぷらと同じものとは言えない?!普通の天ぷらとはなにが違うの?

法事や葬儀などの時に目にする野菜の天ぷらをなぜ「精進揚げ」というのでしょうか。
エビの天ぷらは海老天ですし、イカもイカ天といい食材の名前がそのまま使われるのが一般的です。

単純に野菜天でいいような気もしますが、実は精進揚げには通常の天ぷらとは料理としての違いがありました!
今回は「精進揚げ」とはどのような特徴があるのかを解説します。

精進揚げという料理

 

精進揚げ

精進揚げは仏事などで出されることの多い、精進料理としての野菜類を揚げた天ぷらです。
天ぷらというと、一般的にはエビやキス、肉などを揚げますが、殺生を禁じている仏教の食事、精進料理の精進揚げでは動物性のものは具材として用いられることはなく、お皿に盛られているものは全て野菜になります。

主に使われる具材としては、ニンジンやナスにタケノコ、ゴボウにレンコン、シュンギクやサツマイモがあります。
ピーマンやアスパラガスといった比較的日本に入ってきて日の浅い野菜が使われることもあります。

天ぷらとここが違う

精進料理で肉や魚等を使うことが無いというのは徹底されています。
それは食材として使ってはいけないと言うだけではなく、目に見えない場所にまで及んでいるため、通常の天ぷらでは使われているものが精進揚げでは使えないというものがあります。

①衣のつなぎに「たまご」は使えない

 

にわとりが産む「たまご」は無精卵であっても動物性食品に含まれることから、衣にたまごは入れることはできません。

②出汁で「鰹節」を使えない

 

薄力粉をとく際に用いる出汁ですが、鰹節ももちろん動物性の食品ですから出汁としてを使うことはできません。
出汁を準備する際は椎茸や昆布などが用いられます。

精進揚げは野菜なら何でもいいというわけではない

 

精進料理というのは、仏教の不殺生といった戒律に基づいた上で、煩悩を刺激しないように作られた料理です。

「獣類・魚類・鳥類」を食べない「三厭(さんえん)」に関しては、今日でも精進料理と言われたら想像する代表的な特徴です。

精進料理に使ってはいけない野菜がある

 

三厭で肉食を戒め、飲酒も禁じている仏教では、野菜や海藻など植物性のものを用いて精進料理を作ります。
ですが、野菜の中にも5種の使ってはいけない野菜があります。

それは以下の野菜になります。

・大蒜(にんにく) 
・韮(にら) 
・葱(ねぎ) 
・辣韮(らっきょう) 
・野蒜(のびる)

この5種の野菜は「五葷(ごくん)」と呼ばれ、辛味や臭気の強い上に、食べると精が付くもしくは怒りの感情がわくとされ、修行の妨げになることから食することが禁じられています。

この五葷とされる野菜は時代や地域によって代わり、野蒜ではなく「小蒜(こびる)」すなわち「ギョウジャニンニク」が五葷のひとつとされることもあります。

お寺によっては「不許酒肉五辛」と書かれた石碑が境内や山門の近くに建っていることがあります。
これは酒と肉、そして五葷を持ち込んでの修行に挑んではいけません、という戒めが記された石碑になります。

他にも精進料理に使ってはいけない野菜がある

 

今日では、ニラに似た香りのする「野蒜」はあまり一般的な食材とはいえません。
そこで曹洞宗では、より一般的で同じく香りの強い「玉葱(たまねぎ)」が野蒜に代わり五葷のひとつとされています。

また、日本ではなく外国の話になりますが、癖のある爽やかな香りが近年人気の「パクチー」を食することを禁止している国もあるそうです。

五葷の「葷」という漢字の意味

「五葷」に使われている「葷」という漢字。
現在の日本では一般的に用いる漢字ではありませんが、この漢字は「臭い野菜」を意味する漢字です。

ニンニクやニラ、ネギ類の強い臭いにある野菜や、ショウガのように辛味のある野菜を指しています。

音読みでは『トウ』ですが、訓読みは『なまぐさ』と読みます。
これは、この漢字が戒律の対象となる野菜の意味から転じ、同じく食べることを禁じている肉類の意味を表すことになったためだとされています。

まとめ

仏教的行事の中で出される精進揚げは精進料理の一種なので天ぷらと違い動物性のものは使っていません。
厳密に作られたものだと具材が野菜というだけではなく衣や出汁にも使われていない、徹底された料理です。

また、驚いたことに野菜だったらなにを使ってもいいわけではなく、「五葷」と呼ばれる使用してはいけない野菜もあります。

精進揚げを食べる際は何の気にもせずに一般的に販売されている鰹出汁のめんつゆを使っていませんか?
今度精進揚げを口にする際は、塩もしくは昆布出汁のつゆで食べることで精進料理として徹底的に味わってみるのもいいかもしれません。

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