「時雨」とはどんな雨?どのような意味が込められている名前なの?

降ったり止んだりを繰り返す雨のことを「時雨(しぐれ)」といいます。

この「時雨」という天候は、全国津々浦々で見られるものではありません。
長野や福島といった地域の山間部や盆地の京都では秋の終わりから冬にかけて見られます。

では、なぜ山間部や盆地でしか見られないのでしょうか!?
そこでここでは、時雨という天候の特徴、そして名前の由来について見ていきましょう。

時雨とは

 

時雨のしぐれという読みは、「過ぐる」が転じて付けられたともいわれ、通り雨の一種ともいえる気象現象です。

秋の終わりから冬の初めに降る時雨

時雨は、秋の終わりから冬にかけて発生する北西からの季節風に乗った雲が、日本海側から太平洋側に移動する際に湿った雲となり、山間部や盆地に雨を降らせるため発生します。

通り雨との違い

季節風が山にぶつかったことで冷えて湿った空気が雲を作り、その雲が山越えの際に雨を降らせるのが時雨です。
そのため、山間部や盆地以外の場合は秋や冬の通り雨に過ぎないということになります。

時雨の語源

実は時雨の読みについての語源は、正確なものは分かっていません。
「過ぐる」が転じて付けられたというのも一説に過ぎず、他にも一時的に周りが暗くなる様子をあらわす「しばし暗き」が転じて付けられた名前ともいわれています。

時雨という漢字は、「時に降る雨」という降っては止んでという様子から当てられたと漢字だと考えられています。

時雨は冬の季語

晩秋から冬にかけて京都などで発生する「時雨」は冬をあらわす季語とされており、和歌などで度々登場する言葉になっています。
本来の意味での時雨は、その発生条件から京都などの盆地や、長野県や福島といった山間部でしか起こり得ません。

しかし、山のない江戸でも冬の通り雨などは時雨と呼ばれていました。

時雨がよく起きる地域がある

 

冬時の季節風によって起こる時雨は、特定の地域では頻繁に発生することから名前がつけられています。

北山時雨

 

京都市にある船岡山や衣笠山といった平安京の北部に当たる地域は古くから「北山」と呼ばれていました。
有名な鹿苑寺金閣があるのも北山です。

この北山方面から降る時雨は「北山時雨」と名付けられています。
北山は古くから時雨が降ることで有名で、時雨といったら北山を指すとまでいわれています。

高島時雨

 

琵琶湖の西部にある高島市などでも、昔から時雨が多いことから、この地域に降る時雨は「高島時雨」と呼ばれています。

七時雨山

時雨が降るのは日本海側だけではありません。
岩手県にある「七時雨山(ななしぐれやま)」は、名前に時雨と入っているように時雨が降る場所とされ、1日7回時雨になる山という意味があるとされています。

この七時雨山は、1日に7回も降ったり止んだりを繰り返すほど、天気の移り変わりが激しい山ともいわれています。

「時雨」から生まれたことば

 

時雨という天候は降ったり止んだりを繰り返すことから印象深い天気だったのか、時雨を由来とする名前が付けられた言葉もありますのでご紹介します。

時雨という感情表現

 

涙を流し、頬や袖を濡らす様子を「時雨」といいます。
決して大泣きではありませんが、涙ぐみしっとりと袖を濡らす様子を時雨とあらわすのは美しく雅な表現ですね。

しぐれ煮の名前は時雨から来た?

現在は生姜の入った佃煮のことを「しぐれ煮」といいますが、元々は蛤の佃煮「煮蛤」のことを「時雨煮」と呼んでいました。
これは時雨の降る10月ごろに煮蛤を製造していたのが由来とされてきます。

本来は煮蛤だけを指していた「しぐれ煮」でしたが、次第に多くの佃煮に当てはめられるようになり、現在ではしょうがを用いた佃煮全般を指すようになっています。

この名前は、短時間で煮詰めて仕上げる製造方法が時雨のようにパッとできる様子から付けられたという説もあります。

まとめ

時雨は晩秋から冬にかけて北西から吹く季節風が山にぶつかることで雨雲を生み、山越えの際に降らせる雨のことです。
この特徴から本来、広大な平野の広がる関東では起こり得ない現象ですが、江戸時代には秋冬の通り雨のことを時雨と江戸でも呼ばれていました。

もしかしたら、様々な地域から人が集まっていた江戸で、秋冬の通り雨を見て故郷の天気「時雨」を思い出した人いたのが始まりかもしれませんね。

また、京都の北山や琵琶湖の西部など時雨が発生しやすい土地というのもまた古くからあり、その地名に由来する名前が付けられています。
ちょうど紅葉の季節に降る時雨、降っては止む時雨を楽しみながら歩く北山というのも情緒深いかもしれませんが・・・その際は寒さ対策をしっかりしてから行きたいものです。

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