やたらとカッコいい「不知火(しらぬい)」という言葉は、どういう意味や由来のある言葉なの?

「不知火(しらぬい)」という言葉を聞いたことはありますか?漢字と言葉の響きが、なんだかカッコいいですよね。

漫画やゲームなどの創作物によく登場してくる言葉なので、一度は目にしたことがあるという人も多い言葉ではないでしょうか。

そんな「不知火」が表す言葉の意味や由来などを調べてみたので、解説したいと思います。

不知火とは

熊本県と鹿児島県、そして天草諸島の間にある内海の八代海(やつしろかい)、もしくはその北部にある有明海では暗闇に浮かぶ幻想的な発光現象が発生します。これが「不知火」と呼ばれる現象です。

不知火の正体

海に光が見えるこの現象は蜃気楼の一種だと考えられています。

八代海と有明海は遠浅の海が続いています。そのため日中干潟の砂は温められますが、日が沈んでからは冷たい水路の水が流れ込んでくるため、場所によって温度が変わります。温度が場所によって変わっている海の上に微風が吹くと、空気がレンズの役割を果たし、本来は遠く、水平線の向こうにある漁船が灯す光が海岸からも見えるようになります。

この八代海や有明海の地形が起こす蜃気楼現象が不知火の正体なんだとか。

不知火の見える時期

海水の温度差が起こす不知火という現象は、残念なことに一年中見られるわけではありません。よく見えるのは、温度差の出来やすい時期の旧歴の8月1日だといわれています。

旧歴では新月の日を1日としていたことから、真っ暗闇となる上に漁船が多く出る旧歴の8月1日が不知火が一番発生しやすいとされています。

現在の暦では9月頃の新月の日がその日に当たります。

不知火に関わる伝承

不知火の正体が蜃気楼の一種と考えられるようになるまで、その正体は謎に包まれており、それ故にその正体に関して、様々想像を働かせていました。

不知火は妖怪の仕業?

かつては不知火の正体は妖怪だと考えられていました。

「親火」と呼ばれる沖合に突然現れる光と次第に増えていく様や、そして近寄ることができない蜃気楼ならではの様子から龍神が引き起こす怪火だと昔の人々は考えたようです。

不知火は幸運の証?

不知火が龍神によって引き起こす怪火だとして恐れ、不知火が起きた日は竜神の怒りを買わないように、漁に出ないようにしていたといわれています。

一方で、不知火がよく発生する年は大漁の年ともいわれていたようで、不知火が起きた日は漁に出ないで三味線や太鼓を鳴らして祭りにように賑やかに過ごしたともいわれています。

不知火の語源

かつては正体不明の灯火とされていた不知火。何かがわからないの意味の「不知(しらぬ)」と火をあらわす言葉「い」が合わさって「不知火」と名付けられたと考えられています。

不知火の名を冠するもの

不知火という現象は古くから用いられており、日本書紀など奈良時代に編纂された書物にも登場してくる名詞です。そのため「不知火」の名を冠するものは非常に多くありますので、一部をご紹介します。

柑橘類の「不知火」

長崎県で1972年に交配種として生まれた柑橘類に「不知火」という種があります。

この不知火の中でも糖度13度以上、クエン酸1.0以下といった条件をクリアしたものを「デコポン」といいます。ちなみにこのデコポン、その名前を使っていいのは日園連に加盟している全国のJA(農業協同組合)のみだそうです。

四股名としての「不知火」

横綱の土俵入りの型の1つに「不知火型」というのがあります。この名前は不知火型を最初に取った11代横綱「不知火光右衛門」に由来した名前と言われています。

不知火光右衛門は肥後国、現在に熊本県出身ということから、四股名の不知火も出身地に関わるものとして付けられたようです。

地名としての「不知火」

現在では干潟の埋め立てなどが理由で不知火が見られる機会が減ってしまいましたが、かつては八代海が不知火の本場とされていました。

そのため、不知火の起きる海という意味から「不知火海」という別名がありました。

また、現在は合併により宇城市(うきし)になってしまいましたが、かつて八代海に面した熊本県宇土郡には、不知火町(しらぬひまち)という街もありました。

まとめ

やたらとかっこいい漢字と読みをしている「不知火」はかつては怪奇現象や妖怪と考えられていた、八代海と有明海で発生する一種の蜃気楼現象をあわらす言葉でした。

カッコいいからと様々な創作物などで用いられたため、語源のように本来の意味が「不知」ものにしてはもったいない、八代海と有明海でしか見れない自然現象の不知火でした。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事