朧月とはどんな月?実は季節が限定される言葉だった!

日本人は古くから月見を楽しむ風習を持っていますが、そんな月を表現する言葉の中に「朧月(おぼろづき)」という言葉があります。また、そんな朧月が出る夜のことを「朧月夜(おぼろづきよ)」と言います。

しかし、これらの言葉の意味がわからない人もいるかもしれません。朧月とは簡単に言えば、ぼやけていてはっきりとは見えない月のことですが、今回はそんな朧月という言葉について詳しくご紹介します。

朧月とは?

朧月とは雲や霧、靄などで霞んだ月のことを意味します。また、朧月夜はその朧月が出ている夜のことを意味しています。まるでベールがかかったような神秘的な夜を表現する際に使われる言葉ということもあり、古くから文章表現で使われてきた言葉です。

ちなみに「朧」には「ぼんやりした様子」「はっきりしない様子」「不確かな様子」などの意味があります。普段から使う言葉としては「朧気」なども同様の意味です。

これらの言葉は月だけではなく空そのものが霞んでいる状態を指すため、月見をするのにはあまり向いておらず、天体観測にも不向きだと言われています。ただ、その幻想的な雰囲気は風情に満ちており、古くから日本人の心を癒してきた存在でもあるのだとか。

実は季節が限定される

朧月はいつでも使える言葉だと思っている人も多いです。しかし、実は季節が限定される言葉だということをご存知でしたか?

朧月は春の季語

朧月は空全体が霞んで見える春の夜の月を指すのですが、この言葉は主に春の季語となっています。春の季語は旧暦の1月~3月を指し、新暦では2月~4月を指すのが一般的です。つまり、朧月は春先に使う言葉ということになりますね。

ただ、特定の日数や期間を表すものではないため、言葉として使う際にも曖昧になってしまっていることが多いです。

他の季節に使うのは間違い

小春日和などの使い方同様その季節に使わなければ間違いとなる点には注意が必要です。月見は空気の澄んでいる秋に行うことが多いのですが、朧月という言葉を使うのは間違いとなってしまいます。

夏や冬の月を見て「朧気だな」という表現はできますが、逆に夏や冬に「朧月が出ている」という表現は間違っているということになります。

もちろん、気象条件によっては春の朧月と同様の霞んだ夜空になることもあるのですが、その際には朧月という表現ではない表現を用いる方が良いですね。

有名な歌「朧月夜」

朧月に関する歌で有名なのが「朧月夜」ですよね。この歌は朧月の儚い美しさを表現しており、名歌の1つとして親しまれています。

歌詞を見ると分かりますが、とても情緒に溢れていて美しい歌だということがわかります。使われている言葉もどこか古書のような表現となっていて文学的です。

春の情景

歌では春の情景を美しく表現しており、歌詞には菜の花畑や春風など季節を匂わせるものが多く使われています。聞けば聞くほど引き込まれるような歌なので、興味がある方は一度聞いてみてくださいね。

素敵な季語「朧月」「朧月夜」

朧月や朧月夜は古来から風情のあるものとして親しまれ、日本伝統の俳句や短歌などでも使われてきた季語です。それだけではなく数多くの小説や物語にも登場しており、かの有名な平安時代の話「源氏物語」にも登場する言葉です。

月の形は問わない

朧月は満月でも三日月でも半月でも朧月という表現が使えます。そのため、俳句や和歌を吟じる時には、どの月の形であっても美しく詠むことができるのです。

霞む月夜

季語としての朧月は霞む月夜を表現する言葉となっており、朧月を入れるだけで情景が思い浮かびます。そのため、俳句や和歌に取り入れる際にも、これ1つでより美しい表現ができるのではないでしょうか。

春にぜひ使いたい季語

朧月は春にこそ使いたい季語です。そこにはちゃんと理由があって、春にこそ見られる気象条件だからと言えます。春は移動性高気圧と温帯低気圧が交互に西から東へ通り過ぎるため、寒暖差が激しくなるなど天候も変わりやすいです。

気温差が大きくなると昼に温まった空気が夜になって急激に冷やされ、空気中の水蒸気が増えます。これこそが霧や靄の正体です。それらの水滴が空に浮かんでいる状態のため、空がぼやけて見えるわけです。

だからこそ、春にこそ朧月は使いたい言葉なのです。ただ、近年は黄砂やPM2.5などによる大気汚染も朧月夜になる原因の1つとなっています。

美しい表現ができる春の季語ではあるものの、そういう地球環境の問題も絡んできているのは少し残念なことですね。

まとめ

朧月という言葉は普段から使うことはあまりないと思います。ただ、朧月というのは情景も浮かびやすく、美しい季語でもあるので、朧月夜の日には俳句や和歌を楽しんでみてはいかがでしょうか。春に月見を満喫するというのも、風情があっておすすめですよ。

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