男もしくはオスをあらわす「♂」と、女もしくはメスを意味する「♀」という記号は多くの場面で目にします。
性別を表すこの記号は、なぜこのような形をしているのでしょうか?
そこで「♂」と「♀」、それぞれどのような由来で用いられるようになったのかを見ていきましょう。
目次
♂と♀のマークが使われるわけ
「♂」と「♀」が男と女、オスとメスをあらわす記号として用いられた歴史は古く、18世紀までさかのぼります。
生物学者が用いたのがはじまり
「♂」と「♀」をオスとメス、すなわち雌雄記号として最初に用いたのはカール・フォル・リンネという植物学者です。
この人物は動物学や鉱物についての研究者でもあり、特に「綱・目・属」という生物の分類単位を考案し、生物分類を体系化した功績から「分類学の父」と称される人物です。
もともとは惑星記号
このカール・フォル・リンネがオスを「♂」、メスを「♀」という記号を用いることを発案しました。
「♂」はマスキュラ (muscular)、 「♀」はフェミニン (feminine)と読みます。
雌雄記号として採用されたこの2つの記号ですが、本来は天文学の惑星記号です。「♂」が火星、「♀」が金星を意味します。
雌雄同体を示すとされた「☿」
ちなみに現在では廃れており使用されることは稀ですが、雌雄同体の生き物をあらわす記号として「☿」という水星の惑星記号をカール・フォル・リンネは採用しています。
♂の由来
火星の惑星記号であり、オスの雌雄記号の「♂」、この記号の起源はローマ神話にあります。
ローマ神話には戦と農耕を司る「マルス」という男神がいます。
この神は火星と同一視されています。
このマルスをイメージして作られた記号が「♂」です。
マルス神とは
マルスは、ローマでは3月が農耕のはじまりとされていました。
そのため農耕を司るマルスは3月の神でもあります。
3月を意味する英語「March」もマルスが由来となっています。
農耕を司る一方で、マルスは戦争を司るという真逆の性質も持っています。
しかし、勇猛さを好んだローマ市民にとってマルスのこの二面性は好ましいものだったようで、マルスはローマ帝国で最高神ゼウスに次ぐ人気があったそうです。
♂はマルスのマーク
マルスは軍神だったため武器や鎧を装備した姿で描かれることが多い神です。
「♂」のマークも「→」に似た部分が槍を、「○」は盾を意味し、武装したマルスの姿をあらわしているとされています。
♀の由来
金星の惑星記号にしてメスの雌雄記号「♀」もまた、ローマ神話に起源があります。
ローマ神話の愛と美の女神「ウェヌス」、金星と同一視されるこの神をあらわす記号が「♀」です。
日本では「ウェヌス」という名前よりも「ヴィーナス」、もしくはギリシャ神話での名前「アプロディーテー」といったほうが通じるかもしれません。
ウェヌス神とは
愛と美を司ることから非常に美しい姿で描写される女神です。
その美しさは多くの神々も虜にしたようで、マルスもまたウェヌスに恋い焦がれたという話があります。
ローマ帝国を建国した「ガイウス・ユリウス・カエサル」の祖先とされることから、ウェヌスを祖神とし祀る為の壮麗な神殿まであったといいます。
♀はウェヌスのマーク
美の女神「ウェヌス」は手鏡を見て自分の美しさを確かめていたといいます。
そこから鏡を持つ姿をイメージして「♀」のマークは生まれたといいます。
確かに「○」が鏡に見えてきますね。
まとめ
「♂」は男神マルスが司る火星、「♀」は女神ウェヌスが司る金星をそれぞれ意味する惑星記号を転じたことでそれぞれ雌雄記号として採用されました。
ちなみに雌雄同体として用いられた「☿」が意味する水星はローマ神話では「メルクリウス」、科学の神として聡明な一面がある一方で、神の中で最も俊敏という側面も持ち合わせています。