世界最小の国はバチカン市国だけど、2番目に小さい国はどこ?

『世界最小の国』といえば、学生のときに習った人もいると思いますが、キリスト教カトリックの中心地である「バチカン市国」です。
では、2番目の小ささを誇る国はどこかご存じでしょうか?

それは、モータースポーツの聖地でもある、あの国ですよ。

今回は世界最小の国と、2番目に小さな国について見ていきましょう!

さらに、ここも国と捉えると世界最小の国が変わるぞ!という場所があるので、併せてご紹介していきますね。

世界最小の国家:バチカン市国

 

世界最小の国は、イタリアの首都・ローマに隣接する、バチカン市国です。

大きさ

世界最小の国であるバチカン市国の面積は、0.44㎢しかありません。

数字だけでは分かりにくいですので、他の場所の広さと面積を比較すると、中国・北京にある天安門広場と同等の広さとなります。
しかし、天安門広場との比較ではいまいちピンとこない方も多いと思うので、日本国内の場所で比較してみましょう。

そうすると、東京ディズニーシーの敷地面積が0.49㎢なので、それよりも若干狭いということになります。
国としては確かに小さいですが、宗教施設だと考えると十分大きいような気もしますね。

バチカン市国の歴史

 

実はバチカン市国は、純粋な国家としての歴史は浅く、まだ100年も歴史はありません。

バチカン市国のはじまりはカトリックの聖地として

国家としての歴史は浅いですが、カトリックの聖地としての歴史は非常に長いです。
もともとローマの人々の共同墓地として利用されていた「ウァティカヌスの丘」に、初代ローマ教皇といわれる聖ペトロの墓所と教会が建てられたのがバチカンの始まりです。

それが326年の事で、それ以来カトリックの本拠地となり世界中のカトリック信者に影響力を及ぼすようになります。

イタリアとの仲は険悪だったことも

バチカンはカトリックの総本山であるので、キリスト教が栄えたイタリアと仲が良いと思ってしまいますが、実は違います。
特に近代は、イタリアとバチカンの関係は非常に悪かった時期が長く続いていました。

現在のバチカンの領土は、東京ディズニーシーよりも狭いですが、以前はそうではありませんでした。

ローマ教皇は教皇領と呼ばれる広大な土地を領していたのです。
この土地では独自に税の徴収や裁判も行われていましたので、教皇は実質的にその土地の領主だったと考えて問題ありません。

教皇はこの土地を寄進という形で受け取り、その領土を広げていたのですが、一時は北イタリアの大部分を有していたそうです。
ところが南北イタリアが統一されて興ったイタリア王国は、1870年にこの教皇領全てを接収してしまいます。
教皇に残されたものは、バチカンと中世までローマ教皇が居住していたラテラノ宮殿だけでした。
これに憤慨した当時のローマ教皇はイタリア王国の政府関係者を破門、自らを「バチカンの囚人」と称してバチカンに籠ってしまったので、両者は断交状態になってしまいました。

ちなみに、その間にもイタリア王国側は首都をローマに遷都するなど、現在のイタリア共和国につながる行動をしています。

バチカン市国の成立は20世紀に入ってから

このように断交状態にあったバチカンとイタリアの関係に、変化が訪れたのは1923年の事です。
不健全な関係を改善するため、ローマ教皇側とイタリア王国で条約が結ばれました。

その条約の名は「ラテラノ条約」。
この条約はローマ教皇側は教皇領の権利を放棄することで、代わりにイタリア王国はローマ教皇のいるバチカンを独立国家として認めると共に、イタリア王国内でカトリック教会を特別な地位として保証するという内容でした。
こうして世界一小さい国家「バチカン市国」が誕生したのです。

歴史的な経緯から見ると、イタリアの首都ローマのすぐそばにバチカンができたのではなく、イタリア王国がわざわざ首都をローマ教皇がすぐそばにいるローマに移してきたといった方が正しいようですね。

バチカン市国とバチカンの使い分け

バチカン市国は報道などで、「バチカン」といわれることもあります。
これは国家としての「バチカン市国」、キリスト教カトリックの総本山である「バチカン」とで使い分けがされているからです。

国家として扱う場合は「バチカン市国」と呼称される一方、カトリックの中心地として紹介されたりする場合は「バチカン」と呼び表されるので、呼称からどの視点で見ているかが分かります。

世界で2番目に小さい国:モナコ公国

 

世界で一番小さい国が「バチカン市国」であることは知っている人も多いと思いますが、2番目となると一気に知名度は下がります。
しかし、2番目に小さな国家「モナコ公国」自体は、モータースポーツF1の会場として多くの人が知っているはずです。

大きさ

世界で2番目に小さな国は、地中海に面する「モナコ公国コ」です。

その大きさは2.02㎢。
国連加盟国の中では世界一小さい国家です。
皇居が外苑まで含めると2.3㎢あることから、それよりも狭い面積しかないということになります。

モナコの歴史

 

モナコが建国したのは1297年の事です。
この年にグリマルディ王朝が、モナコの地で興ったのがその始まりとされています。

この王朝の子孫が、現在のモナコ公にまでつながっているので、非常に歴史の長い一族という事になります。

モナコは非常に狭い国土という事もあり、フランスやかつてあった国家サルデーニャ王国などの庇護下に入ることで生き延びてきました。
実は、現在もモナコの軍事防衛はフランス軍が担っています。
2005年に「フランス・モナコ友好協力条約」が締結されるまでは外交に関してもフランスへの事前承諾をとっておく必要がありました。

騎士団が世界最小の国家?:マルタ騎士団

 

一般的に国家というと、私たちは日本やアメリカのような領土内に住む国民がいる場所だと考えてしまいますが、中には例外もあります。
それが実質的に国家とみなされる「主権実体」といわれる組織です。

この「主権実体」であるマルタ騎士団が、世界最小の国家という見方をすることもできます。

マルタ騎士団とは

マルタ騎士団の正式名称は「ロドス及びマルタにおけるエルサレムの聖ヨハネ病院独立騎士修道会」といい、キリスト教カトリックによる騎士修道会です。
騎士というと全身を包み込む鎧を装着し、長い両手剣を持ったいわゆるゲームや映画などで見る姿を想像してしまいますが、現在のマルタ騎士団は違います。

難民支援災害支援や社会扶助、医療活動といった救援機関としての活動が主になっています。

騎士団がなぜ国家扱いされるの?

では、なぜ騎士修道会であるマルタ騎士団が国家扱いされることがあるのでしょうか?
それはマルタ騎士団の歴史に大いに関りがあります。

マルタ騎士団は聖ヨハネ騎士団としてはじまった

マルタ騎士団は、聖ヨハネ騎士団という騎士団が現在まで存続した組織です。

キリスト教の聖地エルサレムで、ヨハネ修道院の跡地に病院と巡礼者宿泊所を兼ねた施設が建てられました。
それにより端を発す聖ヨハネ騎士団はその後、病院施設としての役目だけでなく、キリスト教徒の保護と聖地エルサレム防衛の主力としての軍事的側面が強くなっていきました。

聖ヨハネ騎士団からロドス騎士団へ

しかし、エルサレムの防衛が難しくなり撤退。
ロドス島を本拠地としてその後は活躍します。

そして、ロドス島を本拠地にするようになってからは、聖ヨハネ騎士団からロドス騎士団と名を変えます。
しかし、さらに本拠地がマルタ島に移動したため、現在の「マルタ騎士団」へと名称が変わりました。

このようにロドス島やマルタ島を自治していたため領土を有し独立自治を行っていたマルタ騎士団ですが、フランスの英雄ナポレオンがエジプト遠征をおこなった際にマルタ島を占拠されてしまった事で失地してしまいました。

領土を有していた経緯から国と同等に扱われることも

この歴史から「領域・人民・主権」と国家の3要素をかつては全て兼ね揃えていたマルタ騎士団は、現在でも完全な国家ではないにしても「主権実体」としてその存在を承認している国もあります。
実質的に国家と同じ扱いをしている国々があるという事ですね。

国際連合では国際赤十字などと同様、「国連総会オブザーバーとして参加するために招待を受ける実体 (entity) あるいは国際組織」という位置づけがされています。
また、国際連合加盟国の107ヵ国と外交関係があり、在外公館を設置しているという事から実質的に国として認識している国もあるようです。

しかし、この外交関係のある国々というのはキリスト教圏が多く、中東の国々や日本、そしてアメリカや中国とは外交関係にありませんし、在外公館も設置していません。

他にも留意する点としては、国際連合内での立場もオブザーバーであって、投票権は与えられていないということもあります。

マルタ騎士団に領土がある?

マルタ騎士団には領土はないとしましたが、イタリアのローマにあるマルタ騎士団本部、マルタ宮殿は治外法権が認められていることから、この本部が一種の領土と考えることができます。
その場合、この本部施設の面積は0.012㎢となることから、マルタ騎士団を国家とみなした場合は"世界最小"になります。

しかし勘違いされてはいけないので説明しますが、マルタ宮殿はあくまでイタリア政府から自治と治外法権が認められた場所であって、その土地自体はイタリアの領土となっています。

ちなみに、防衛に失敗したエルサレムやロドス島にマルタ島の主権を有しているとされることもあるのだとか。

まとめ

世界一小さな国といえば、多くの人がご存じのように0.44㎢しか面積のない「バチカン市国」です。
しかし、国家とみなされることもあるマルタ騎士団も治外法権が許された土地が0.012㎢ばかしあることから世界最小の国とされることもあるようです。

とはいえ、日本では外交関係もないのでマルタ騎士団を国家として承認してはいません。

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