近年、菜食主義の人を指して「ヴィーガン」と呼称されているのを見かけますが、以前から聞く「ベジタリアン」とは何が違うのでしょうか?
両者は呼称が違うだけではなく、これがOKあれはNGといった生活スタイルの違いがありました。
さらに他にも菜食主義の人たちをあらわす言葉、実は菜食主義にはあてはまらないとされる生活スタイルもわかったので併せてご紹介していきたいと思います!
目次
ベジタリアンのベジは「ベジタブル」のことではない
野菜しか食べない人のことを、一般的に「ベジタリアン」と呼びますよね。
では、なぜベジタリアンと呼ぶのでしょうか?
実は野菜を食べるからベジタリアンというのではなく、「ベジ」には別の意味がありました。
ベジタリアンの名前の由来
ベジタリアン (Vegetarian) という言葉は、1847年に英国ベジタリアン協会発足の際に使われるようになった言葉です。
その由来は、「健全、新鮮、元気のある」という意味のラテン語「vegetus」にあります。
ベジタリアン協会が発足した頃、すなわち19世紀のベジタリンは、肉や魚は食べないという点は現在と違いはありませんが、卵や乳の摂取に関しては本人の自由とされていたそうです。
最初期のベジタリアンとは、「健康的な食事をする人」という意味だったようですね。
それが時代の変化とともに「健康的な食事をする人→野菜を食べる人→野菜しか食べない人」という使われ方をするようになったようです。
現在でもベジタリアンの定義は流動的で、時代のライフスタイルによって変化し続けています!
20年後、30年後にはもしかしたら現在のベジタリアンとは違う定義になっているかもしれませんね。
ベジタリアンの種類
ベジタリアンは単に肉や魚を食べないだけではなく、それぞれこだわりを持って食事をしています。
そのため、さらに細分化していくことも可能です。
以下、主なベジタリアンの種類となります。
ラクト・ベジタリアン
ラクト・ベジタリアンは、植物性食品の他に乳製品を食べる人たちのことです。
牛乳やチーズなどの乳製品を普通に食べても問題ないと考えているベジタリアンです。
オボ・ベジタリアン
オボ・ベジタリアンは、植物性食品の他に卵製品を食べる人たちのことを意味します。
卵は肉や魚にも共通する点があると考え避ける人もいますが、このオボ・ベジタリアンに分類される人たちの場合は卵製品を口にすることを忌避していません。
ラクト・オボ・ベジタリアン
ラクト・オボ・ベジタリアンは、植物性食品と卵・乳両方を食べる人たちのことです。
オボ・ラクト・ベジタリアンと称されることもあります。
欧米のベジタリアンの大半が、このラクト・オボ・ベジタリアンだともいわれています。
ヴィーガンは肉や卵を摂取しないだけではない
近年話題となっている「ヴィーガン」は、"肉や卵を決して食べない"と認識している人も多いと思いますが、それは完全に正しいとも言えません。
ヴィーガンとは
ヴィーガンとは、厳密にいうと菜食主義ではありません。
食用や衣料用などの目的で動物を搾取するのはできる限り控えようとする考え方を「ヴィーガニズム」といい、この考えを提唱・実践する人たちのことを総じて「ヴィーガン」と呼びます。
動物に苦みを与えることへの嫌悪から動物の肉や魚、卵や乳を食べないのが特徴です。
またそれだけではなく、動物を使った製品を着用しない人たちでもあります。
食用だけでなく、動物を製品化すること自体を否定しているわけですね。
ヴィーガンの棲み分け
ただ、ヴィーガンは本人がどういう信念でライフスタイルを決めているかによっても違ってくるため、厳しさに応じて分類がされています。
以下、参考までにヴィーガンの棲み分けについてご紹介します。
ダイエタリー・ヴィーガン
ダイエタリー・ヴィーガンは、食事はヴィーガンと同様ですが、動物製品の使用に関しては特別忌避しているわけではない人たちのことです。
ヴィーガンの中でも敷居は一番低いといえますね。
フルータリアン
フルータリアンは、果物やトマトやナッツなど木に実っており、植物の生命に直接関わらない食品のみを食べる人を意味します。
リンゴは木の実なので収穫しても樹木が枯渇することはありませんが、大根など収穫すると葉の部分が生きていけず死んでしまう野菜がありますよね。
フルータリアンは、収穫するとその植物の命が絶えてしまう植物を食さないようにしているわけです。
ヴィーガンよりもさらに食事に制限がかかっているため、より食事へのこだわりが強い人にみられます。
オリエンタル・ベジタリアン
オリエンタル・ベジタリアンは、東洋の菜食主義で肉や魚や乳製品、精力の付くニンニク、ニラ、ラッキョウ、ネギあるいはタマネギといった五葷(ごくん)と呼ばれる野菜を摂取しない人のことを意味します。
ヴィーガンと同じ意味を持つ名称
ヴィーガンとおおよそ同じ意味を持つ言葉としては、「ストリクト・ベジタリアン」や「ピュア・ベジタリアン」などがあります。
ストリクト(strict)は厳しい、厳格という意味が、ピュア(pure)には純粋という意味があります。
ベジタリアンの中でもより厳格な生活スタイル、純粋な菜食主義ということですね。
伝統的な日本食は菜食主義ではない!
伝統的な日本食と聞けば、菜食主義だと思っている人もいるかもしれません。しかし、厳密には日本食は菜食主義ではありません。
伝統的な日本食とは
ここでいう伝統的な日本食というのは、鶏肉や牛肉を食べない明治以前の食事のことを意味します。
"昔ながらの和食"と言われた場合に想像されるような、白米に味噌汁、納豆に焼き魚に卵焼きといったセットなら簡単に想像がつくと思います。
この食事は人によって菜食主義すなわちベジタリアンの食事に見えるかもしれませんが、厳密には菜食主義とは異なります。
伝統的な日本食に近しいペスカタリアニズム
では、何が菜食主義とは違うのかといえば、"魚を食す"という点です。
伝統的な日本食に近い菜食に加えて魚介類を食べるというライフスタイルの人は、「ペスコベジタリアン」とも呼ばれるそうです。
現在、ベジタリアン協会では伝統的な日本の食生活を菜食主義とは認められていません。
厳格な僧侶の食事はヴィーガン
一方、仏教的な食事として知られる精進料理などではオリエンタル・ベジタリアンに近い食事が摂られているため、ヴィーガンと分類される生活スタイルと言えます。
まとめ
ベジタリアンは菜食主義なのに対し、ヴィーガンは食事だけでなく皮革製品やシルクなど、動物製品が使われることも否定する生活スタイルだという違いがあります。
また、ベジタリアンやヴィーガンといっても各々のスタンスに応じてこれはOK、あれはNGといった線引きがあるという点にも注目が必要ですね!