針がすごいヤマアラシってどんな動物?ハリネズミやハリモグラは仲間?

天敵から身を守るために進化した動物が自然界には多いですが、その中には針で全身を覆うという荒業を考えた動物も!
その一種がヤマアラシです。

ここでは、このヤマアラシがどのような動物なのかを見ていきましょう!

ヤマアラシは大きく分けて2種類いる

 

ヤマアラシは、ヤマアラシ科やアメリカヤマアラシ科に属する哺乳類齧歯目の動物です。
草食動物のため、肉食動物に狙われることもしばしばあるのですが、持ち前の針を使って天敵から身を守る特殊な生態を持っています。

そしてヤマアラシには、「ヤマアラシ」と「アメリカヤマアラシ」の2種類いて、どちらも長い針毛が体を覆っています。

ただ、両者はとても似た姿はしていますが、それぞれ別々に進化した動物で近縁な関係ではありません。

ヤマアラシ(旧世界ヤマアラシ)

ヤマアラシは夜行性で、通常は巣穴で生活している草食動物です。
ユーラシア大陸やアフリカ大陸、一部のヨーロッパ大陸に生息しています。

針のような毛を持ち、身の危険を感じると針毛を逆立てて威嚇します。
針毛の先端は尖っていて、一度刺さると抜けにくいという性質があるため、他の動物はなかなか襲うことができません。

インドタテガミヤマアラシという種は体長60〜90cm、体重10〜25kgという体格に、最大30cmにもなる長い針毛を有しています。

一度抜けた針毛は、しばらくするとまた生え変わることもあり、ある意味でヤマアラシは絶対無敵の防御を誇る動物と言えるでしょう!

アメリカヤマアラシ(新世界ヤマアラシ)

アメリカヤマアラシも夜行性の草食動物です。
分布域は南北アメリカ大陸であり、樹上性の動物です。

中にはキノボリヤマアラシのように、長い尾を木の枝に巻きつくことができる種もいます。
それもあって、木登りに役立つ丈夫な爪があるなど、旧世界ヤマアラシとは異なる特性もあります。

カナダヤマアラシは最大1mにもなるなど、体格の違いが旧世界ヤマアラシとはあります。
ちなみに、このカナダヤマアラシは、体が大きいことも影響してか3万本以上といわれる針毛があります。

しかし、全てのアメリカヤマアラシが大きいわけではありません。
オマキヤマアラシは体長が40cmほどなので、インドタテガミヤマアラシより小柄となっています。

実は全く関係のないヤマアラシとアメリカヤマアラシ

ヤマアラシとアメリカヤマアラシは、ヤマアラシ科とアメリカヤマアラシ科で、全く別の科に分類される生き物です。

では、なぜ同じような名前が付いているのかというと、それはかつて同じ動物だと思われていたからです。

その昔、ヨーロッパから新大陸に渡った開拓者たちは、新たな地で出会ったアメリカヤマアラシ類を、旧世界すなわちアジアやアフリカ、ヨーロッパに生息するヤマアラシの仲間だと考えました。
しかし実際は、それぞれヤマアラシ科とアメリカヤマアラシ科に分類されているように、独自の進化をした別の生き物です。

違う動物なので生息地以外にも、口元の形状や歯や骨格、肉球についての違いがあります。

同様の名前が付けられ混合されやすい両者を区別する際には、専門家や研究家などからは「旧世界ヤマアラシ」と「新世界ヤマアラシ」で呼び分けされるようです。

まるで仲間!針毛を持つ動物たち

 

ヤマアラシの他にも、針毛を持つ動物がいます。

一瞬ヤマアラシの仲間?と思ってしまいますが、針毛を持つこと以外に共通点はないので、残念ながら別種になります。

ハリネズミ

ハリネズミは、全身に短くて鋭い棘を持つ動物です
針のような短い毛を持つことから、そのままハリネズミと呼ばれています。

近年ペットとして注目されているのは「ヨツユビハリネズミ」という種で、体長15〜20cmほどとヤマアラシに比べると半分以下の大きさとなっています。
アフリカのサバンナに生息しており、他のハリネズミの後ろ脚が5本指なのに対し、4本指となっているのが名前の由来です。

ヤマアラシは襲ってきた相手に積極的に針毛を刺そうとしてくるのに対し、ハリネズミの場合は臆病な性格もあって、針毛を刺そうとしてくることは少ないそうです。

ハリモグラ

ハリモグラも、全身に細長い棘を有する動物です。
その生息域はインドネシアやパプアニューギニア、オーストラリアといったオセアニアです。

全長は30〜50cmほどなので、ヤマアラシよりかは小柄です。
また、暑さには強い一方で、寒さには非常に弱く、冬になると冬眠をします。

気温の高い時は夜行性の傾向が強いですが、気温の低くなってくると温かい時間に行動するため昼行性に変わってくるそうです。

天敵に襲われると全身を丸くして針毛で身を守ります。
また、モグラと名前に付くように、穴を掘るのも得意なので、針毛が無い部分を地面に潜らせることもあります。

トゲ以外にも吻(ふん)と呼ばれる突出した口と舌を持っており、アリクイに似た口元をしています。
この形状は食性に関係しており、ハリモグラはアリクイと同じくアリやシロアリを捕食しています。

ヤマアラシは妖怪だった?

 

日本では、ヤマアラシを妖怪の類として考えられていた時代もあったようです。
ここからは、妖怪のモデルになったのではないかと考えられている話についてもご紹介します!

頭にトゲを持つ妖怪:山颪

「山颪(やまおろし)」というヤマアラシと似た名前の妖怪がいます。
この妖怪は、似ているのが名前だけでなく姿もヤマアラシに似ています。

山颪は、頭におろし金のような無数のトゲを持つという奇怪な姿をした妖怪とされています。
ちなみに知られているのはその姿だけで、どんなことをする妖怪なのかはわかっていません。

この頭部に無数のトゲがあるというその姿はヤマアラシを彷彿とさせるため、ヤマアラシがモデルになったのではないかという説があります。

全身がトゲに覆われた妖怪:山荒

「山荒(やまあらし)」は、トゲ状の突起に全身が覆われた妖怪です。
別名で「シイ」とも呼ばれていたそうです。

山荒ことシイが毛を逆立てた姿形を、牛が異様なほど恐れるという言い伝えがあったことから、牛飼いの間で「後ろからシイが来るぞ」と言って牛を前へと歩かせていたなんて話もあります。
この山荒は実在するヤマアラシを描いたものだという説もある他、ヤマアラシが棘で天敵を威嚇するという性質を妖怪視したものという説があります。

まとめ

ヤマアラシは針毛で体を守る動物です。
旧世界ヤマアラシと呼ばれるユーラシア、アフリカ、ヨーロッパに住む種と、南北アメリカ大陸に住む新世界ヤマアラシの2種がいます。

しかしこの2種は全く別の進化を経た動物なので、近しい関係にはありません。
たまたま似たような姿をしており、針毛を持っていたことから混同されてしまいました。

いくつか違いがありますが一番分かりやすいのは、旧世界ヤマアラシが陸上性なのに対し、新世界ヤマアラシは陸上でも生活できるがメインは樹上性という点ではないでしょうか。

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