漢字だけど中国生まれじゃない?日本発祥の「国字」ってなに?

日本では「ひらがな」と「カタカナ」、そして「漢字」を使っていますが、漢字の中には中国生まれでないものがあるというのをご存じでしょうか?
その中国以外で生まれた漢字を「国字」といいます。

なぜ国字という文字が生まれる必要があったのか、その理由やどのような字があるかを見ていきましょう!

国字とは

 

「漢字は中国から伝来した」と習ったので、全ての漢字が中国で生まれたと思っている人も多いと思います。
ところが、実際のところはそうではないようです。

弥生時代に伝来した漢字

中国で成立した漢字はおそらく1世紀ごろ、弥生時代の日本に伝来したと考えられています。
それまで文字という概念が無かった日本では生活の跡は発見されていますが、実際にどのように過ごしていたかは文字が無かったため記録が無く、分かっていません。

そのため明確な時期は分かっていませんが、国宝となっている金印「漢委奴国王印」が授けられたのは、後漢の光武帝の時代といわれているので、その頃には漢字は伝来していたと考えられます。
そして後漢の記録書「後漢書」によると、建武中元2(57)年に奴国へ金印を授けたとあるので、この頃に漢字が伝来したのかもしれません。

日本生まれの漢字、「国字」

大和朝廷が成立する以前の弥生時代に伝わっていたとされる漢字ですが、長い歴史の中で日本語に合わせた漢字が足りないということが起きたようです。
例えば中国にはなく、日本の文化の中で必要とされた文字。

他にもなにかしらの理由があってのことか偶然か分かりませんが、日本に伝来しなかった漢字。

このような理由から既存の漢字で対応するものが無かった時、取られた対応が2つありました。

①既存の文字に新しい意味を加える。
②新しい漢字を国内で作ってしまう。

このどちらかが取られ、②の方法を取られて生まれたのが「国字」というわけです。

紛らわしい国字

国字は中国から伝来した既存の漢字を参考にしたため、日本に伝わらなかったと考えられる漢字と同じ形をしていることがあります。
しかし、国字は日本が独自の意味で創作されているので、両者が全く異なる意味という場合もあります。

また、国字は「和字」や「倭字」とも呼ばれる他、「皇朝造字」や「和製漢字」とも呼ばれます。
日本製の漢字のことではなく、ひらがなやカタカナといった仮名を国字とすることもあります。
紛らわしいですが国字には定義が無いため、日本生まれの漢字を国字というのも、仮名を国字というのもどちらも間違いとはいえません。

2種に大別できる国字

 

国字は主に古代の日本で生まれたものと、西洋文化の影響から生まれたものの2種類あります。

古来日本で生まれた国字

明治以前の日本で生まれた国字は、会意に倣って作られた会意文字が多いです。
ちなみに会意文字とは漢字の造字法の1つで、もともとある象形文字や指事文字を組み合わせることを意味します。

例を挙げると、「峠(とうげ)」「榊(さかき)」「畑(はたけ)」「辻(つじ)」などが該当します。
これらの文字の特徴はその多くに音読みが存在せず、訓読みのみとなっています。

西洋文化の影響から生まれた国字

明治時代に入り、西洋文化の影響から生まれた国字もあります。
「膵(スイ)」「腺(セン)」「腟 (チツ、本来はシツ)」といった医療用語に用いられた漢字や、「瓩(キログラム)」「粁(キロメートル)」「竓(ミリリットル)」といった単位など、このような新しい言葉用の漢字が作られました。

日本以外でも生まれた国字

 

国字は日本語を指すわけではなく、漢字の中でもその国ごとによって生まれた漢字を指すこともあります。

つまり、日本以外の国で生まれた国字もあるわけです。
特に朝鮮半島やベトナムで生まれた国字は一部で知られています。

発祥が朝鮮半島の国字

朝鮮半島には、日本の国字に相当する朝鮮製漢字があります。
韓国の国字の場合、既に存在している漢字の音で表現できない音を表すために作られた文字や、吏読(りとう)などで使われる慣用句を書くための文字、固有の文化を表す文字などがあります。

水田を意味する「畓」や、労働者を指す「巭」などもあります。
ちなみに吏読とは漢字による朝鮮語の表記方法の1つで、漢字を借りた朝鮮語の表記の事を指します。

しかし、現在ではあまり朝鮮製漢字は使われておらず、ハングル文字が主流となっています。

発祥がベトナムの国字

13世紀頃に生まれたチュノムという漢字を応用して作られた文字が、ベトナムの国字にあたります。
チェノムはベトナム語を漢字表記するための文字であり、中国語とはまた別の文字体系となります。

ベトナム語にあって中国語には無い単語をあらわすために生まれたと考えられています。
ところが、チェノムは習得が難しいことから一般層には広まらず、現在のベトナムではラテン文字と記号を組み合わせた「チュ・クオック・グー」という文字を使うことの方が多くなっています。

まとめ

国字は、漢字の中でも日本で生まれた文字のことを指します。
文化・風習面などの面から、該当する漢字が無かった際に創造されたようです。

ちなみに国字は日本だけではなく、中華圏内だった朝鮮半島やベトナムにもあります。
日本とはまた違う発想から生まれているという事から、文化の差を伺い知れますね。

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