【誤用表現】「すべからく」にはすべての意味は無いから注意!では本当の意味は?

「すべからく」という言葉は、実は間違った表現で使われていることも多いです。
「すべて」という意味で使われることもありますが、本来の意味は「〜をすべき」です。

ここではそんな「すべからく」の意味や由来について見ていきましょう。

「すべからく」とは

 

「すべからく」の漢字表記は「須らく・須く」となります。
この「須」という漢字は、同じ訓読みとして「まつ」や「もちいる」という読みもあります。

「すべからく」の意味

「すべからく」の意味は、「なすべきこと」もしくは「当然するべきこと」、「する必要があること」です。
ある事柄に対して「〇〇すべき」という義務的な重さを感じさせる意味合いとなっています。

漢文において「須」は「すべからく~すべし」と読む再読文字ですよね。

常思病苦時という漢文があります。
書き下すと「 須らく常に病苦の時を思うべし」なります。
意味は「常日頃から病気で苦しんだ時のことを考えて行動すべきだ」という節制を求める文になります。

「すべからく」の由来

すべからくは「する・なす」の意味を持つ動詞「す」に推量を表す助詞「べし」が合わさった「すべし」のク語法から生まれた言葉です。

このク語法とは、動詞の活用系のうしろに「ク(ラク)」を付けることで名詞化する語法となります。
「すべからく」以外にも下記の言葉がク語法の言葉となっています。

・思う+ク⇒思わく⇒当て字がされ「思惑」に
・いう+ク⇒いわく⇒当て字により「曰く」に
・おそる+く⇒おそらく⇒「恐らく」

すべからくに「すべて」という意味は無い

 

現代の日本語表現では「すべからく」を、「すべて含めている」という意味で使われることもあります。
しかし、もともとの「すべからく」に「すべて」という意味はありません。
つまり誤用表現ということです。

どのくらい誤用されているの?

文化庁が発表した平成22年度「国語に関する世論調査」によると、「すべからく」を本来の「すべき」の意味で使っている人が41.2%、誤用の「すべて」という意味で使っている人が38.5%という結果が出ています。
その他の回答が20%近くいたため、正しい意味で認識していた人は半数以下という事になってしまいます。
いかに「すべからく」が正しい意味で浸透していないかがわかりますね。

この使い方は誤用?正しい?判断に苦しむ使い方

誤用されやすい言葉である一方、「すべからく」は誤用した場合でも間違いではないと解釈ができる不思議な言葉です。

例えば、以下の例文では本来の意味と「すべて」の意味、どちらの解釈もできてしまいます。

・「1×1の解はすべからくで1ある」

この場合、「1×1の解は当然1である」と解釈するのが「すべからく」の正しい意味からの捉え方です。
対して「1×1の解は全部1である」と解釈するのは誤用表現となります。
その一方で、問題の解釈としては間違っていません。違和感もありませんよね。

以下、2つの例文も同じです。

・「学生はすべからく勉強に励むべし」
・「議員はすべからく政治を進めるべきだ」

須くの本来の意味から見ると「学生は当然勉強にいそしむべきである」「議員が政治活動を積極的に進めるのは当然のことだ」という解釈になります。
では誤用で解釈してみましょう。
「学生はみんな勉強に励むべき」「議員というものは全員が政治に積極的参加するものだ」本来は間違っているはずの解釈なのですが、正しい解釈とそれほど意味に違いはありませんよね。

「すべからく」の誤用はこのような文章のニュアンスの受け止め方の差異から生まれたのかもしれません。

「すべからく」だけではない!誤用されがちな用語

 

「すべからく」以外にも本来の意味とは異なる、誤用されている用語もたくさんありますので、ごく一部ですが解説とあわせてご紹介します。

ゴリ押し

「ゴリ押し」とは受け手の意向を無視して、自分の意見を無理矢理に押し通すことを意味します。
しかし近年は「マスメディアや広告代理店が流行を作るために、特定のコンテンツを取り上げ、偏った情報を視聴者や読者に押しつけるような形で広められている様子」や「芸能事務所が売り出したいタレントを猛プッシュしてメディアに露出させていること」という本来の意味とは異なる用いられ方もしています。

煮詰まる

「煮詰まる」とは本来、料理を煮込み料理の水分が蒸発して完成間近になることを指す言葉です。
転じて、結論が出る直前の状態のことを指しています。

しかし、現代ではどうしようもなくなって八方塞がりになった状態のことを指すことが多いですよね。
これは「行き詰まる」と混合されたためとも考えられています。

なし崩し

「なし崩し」は物事を少しずつ片付けていくことを意味する用語となります。
もともとは借金を少しずつ返していくことを意味していましたが、転じて少しずつ片付けるに変化したとされています。

しかし、現状では少しずつ変化させることでうやむやになってしまうこと、という本来の意味とは違った使われ方をしています。

「借金をなし崩す」は本来「借金を少しずつ返済していくこと」を意味しますが、誤用表現が広まった現在では「借金をうやむやにしてなかったことにする」というまったく意味合いの違う解釈をする人の方が多いとされています。

まとめ

「すべからく」という言葉は、本来「すべきである」というような意味を持つ言葉です。
決して「すべて含めて」という意味ではないので、そこは誤用しないように気をつけましょう。

とはいえ、「すべからく」を使った言葉の中には「すべき」という解釈だけでなく、「すべて」の意味で解釈しても意味が大差ない、違和感が無いとなる場合もあります。

また、言葉というものは時代に合わせて変化するものだ、という考えもあります。
世の中の半数以上の人が本来の意味を認識していないとなると、そのうち「すべて」という解釈も正しい意味合いだとされることもあるのかも・・・しれません。

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