
土の中から「ジージー」というなにかの鳴き声が聞こえる・・・、まるで心霊現象のようなことがあります。
その声を聞いた人の中には「これはミミズの鳴き声だよ」という人がいますが、それは間違いです。
そこで、ここでは土の中から聞こえてくる鳴き声の正体についてご紹介します。
その他、なぜそれがミミズの鳴き声だと言われるようになったのかについても解説します。
目次
土中から聞こえる鳴き声の正体

土の中から聞こえてくる何かの鳴き声、これはミミズの鳴き声だと言われています。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
そもそもミミズは発声器官を持たない生き物で、鳴きようもないのですが。
ミミズに発声器官は無い
土の中から聞こえてくる「シージー」という鳴き声に対して「ミミズが鳴いているなぁ」なんて言う人もいるのですが、そもそもミミズには発音するための器官が存在しません。
つまり、発声器官を持たないということは自分から声を出すことはできないということです。
移動によって土などが摩擦を起こして微量の音がすることは現実としてあるかもしれませんが、結論を言うとミミズが鳴くということはありえません。
では何が鳴いているの?
それでは土の中から聞こえてくる音はどういった生き物が鳴いているのでしょうか。
これはケラという生き物の仕業だとされています。

「おけら」という呼び名でなら知っているという方もいるかもしれません。
地中から響いてくるのはこのケラの鳴き声とされます。
それをミミズの鳴き声と勘違いしたところ、俗説として広まってしまった可能性が高いです。
ちなみにケラとはバッタ目ケラ科の昆虫で、もぐらにも似た大きな前足をしており、土を掘るのが得意で土中での活動も行います。
前羽が短くて発音器があるという不思議な構造をしています。
その発音器から「ジージー」という鳴き声を発します。
蚯蚓鳴く
ミミズに関する言葉の中で「蚯蚓鳴く(みみずなく)」というものがありますが、これは秋の季語となっています。
これは秋の夜や雨の日などに地中から「ジージー」と聞こえるのをミミズが鳴いているとしたものです。
この言葉があることから、古くから土中から聞こえる「ジージー」という鳴き声をミミズが鳴くと思われていたという事が分かりますね。
実際に地中から不穏な音が聞こえてきたということで地面を掘ったところ、大半がケラではなくミミズが出てくることが多かったことから、ミミズの鳴き声だという俗説が広まったとされています。
ミミズはもともと目が見えていたのだけれど、その眼と引き換えに綺麗な声を手に入れたという昔話をもあったりします。
余談とはなりますが、「蚯蚓鳴く」の他にも春の季語として「亀鳴く(かめなく)」という実際には鳴かない動物の鳴き声にまつわる季語も存在します。
ミミズに関する言葉「蚯蚓出」

ミミズに関する言葉は他にもありますのでご紹介します。
ミミズが這い出てくる時期をあらわす
「蚯蚓出」とは、5月10日頃から14日頃までを指す言葉であり、この時期は冬眠していたミミズが地上に出てくる時期とされています。
暖かくなってくる時節にミミズが這い出てくるという様子から、「蚯蚓出」という言葉が使われるようになったそうです。
七十二候とは
「蚯蚓出」は立夏の次候、七十二候の20番目に当たるとされています。
この七十二候というのは、二十四節気をさらに3つ細かく分けたもののことで、古くから中国で生まれ日本に伝わってきた季節の区分のことです。
二十四節気とは太陽が移動する天球上の道を黄道と呼び、その黄道を24等分したものです。
1年を日数もしくは太陽の黄道上の視位置によって24等分し、その分割点を含む日に季節を表す名称を付けたものとなります。
ミミズにまつわる豆知識

ミミズは奇妙な生態を持つ生き物であるだけではなく、恐竜よりも古い時代から生きている他、体の構造からして前進しかできない生き物です。
ここからはそんな豆知識をご紹介します。
ミミズは恐竜より古い時代からいる
ミミズの誕生は今から約4.6億年前とされています。
氷河期を乗り越えた生き物であり、始祖動物の一種とされるなど地球にとって欠かせない貴重な生き物なのです。
ミミズは土を健康にしてくれるなど、地球にとって大きな役割を持つ生き物となっています。
恐竜の誕生が今から約2.5憶年前とされているので、恐竜よるもはるか以前から地球にいる生き物だとわかります。
ミミズは前進しかできない
ミミズは、「蠕動運動」という特殊な動き方をします。
その体を構成する多数の体節の伸縮を利用して狭い隙間を移動するのです。
多くの動物に見られる脚を使った移動方法と比べると、非常に単純な動作で移動していることがわかっており、そのため前進しかできない生き物となります。
まとめ
土の中から音が聞こえてくると「ミミズの鳴き声」だとする人がいますが、これは正確には「ケラの鳴き声」です。
ミミズは発声器官がないので、その他の動物のように鳴いたりはしません。
この勘違いは相当古くからあるようで、和歌や俳句の季語に「蚯蚓鳴く」という秋の季語があるほどです。