人の欲望は尽きないことがよくわかる・・・「隴を得て蜀を望む」の起源には2人の中国の英雄が!

「隴を得て蜀を望む」とは、人の欲望は尽きないことを表した言葉です。
この「隴を得て蜀を望む」という言葉は、古代中国史好きなら誰もが知っている2人の中国の英雄が関係しているとされています。

そこでここでは「隴を得て蜀を望む」という言葉がどういう意味を持っているのかを解説しつつ、その背景についても迫りたいと思います。
特に三国志好きなら知っておきたい言葉ですし、満たされない欲望を抱えている人も学ぶことの多い由来があるようですよ。

「隴を得て蜀を望む」とは

 

そもそも「隴を得て蜀を望む」とはどういう意味を持つ言葉なのでしょうか?

「隴を得て蜀を望む」の意味

「隴を得て蜀を望む」とは、1つの望みを遂げたとしても次から次へと望みは起こってくることを例えた言葉です。

簡単に言えば、人の欲望には限度がないことを表した言葉となります。
確かに人はどんなに恵まれていても満足することができない生き物であり、「隴を得て蜀を望む」という言葉はまさにその核心を突いた言葉と言えそうですね。

類義語は「千石を取れば万石を羨む」

「隴を得て蜀を望む」の類義語は「千石を取れば万石を羨む」という言葉。

「千石を取れば万石を羨む」とは、人の欲望にはきりがないという意味が込められています。
千石手に入れても次は万石を望む、つまり現代風に言い換えると1千万円手に入れても次は1億円望むようになるということを表現した言葉です。

「隴」と「蜀」とはどこの事?

では「隴を得て蜀を望む」という言葉にある「隴」と「蜀」とはどういう場所を指しているのでしょうか?

「隴」は現在で言うところの中国の甘粛省東南部のことで、「蜀」は四川省のことを指しています。

類義語の「千石を取れば万石を望む」ではその対象がお金だったのですが、そもそもの「隴を得て蜀を望む」は領土が対象となる言葉ということです。

「隴を得て蜀を望む」の由来は曹操?

 

「隴を得て蜀を望む」という言葉の由来には、日本でもよく知られている三国志に登場する曹操が関係しているとされています。

部下の進言への反応から来た

「隴を得て蜀を望む」という言葉は、かつて太平の世を目指していた曹操が部下である司馬懿の進言への答えが語源となっているとされます。

曹操率いる魏軍が隴の地を手に入れて平定しました。
この時、臣下のひとり司馬懿は、さらに蜀を攻めることを画策して曹操に提案をしました。
その際、曹操は司馬懿に向けて「隴の地を手に入れたというのに、それに満足せず更に蜀も手に入れようというのか」と言い、提案を却下しました。

「隴を得て蜀を望む」には、人の欲某には終わりがないという意味が込められていますが、これは曹操が部下を諭すために伝えたものだったのです。

曹操とはどんな人物?

曹操とは、後漢末期の2世紀後半から3世紀にかけて活躍した武将であり政治家でもあり、当時を代表する兵法家であり、時代を築いた詩人です。

特に後漢の時代の丞相、魏王として三国時代の魏の基礎を作った人物です。
ちなみに丞相とは、古代中国の戦国時代以降のいくつかの王朝で君主を補佐した最高位の官吏のことを指しています。

曹操は後世から武帝や魏武とも称され、未だに語り継がれる偉人でもあります。

三国志の活躍から武将や政治家としての面が有名ですが、詩の才能も豊かで当時花開いた建安文学の中心人物のひとりでもあります。

「隴を得て蜀を望む」の起源は光武帝?

 

「隴を得て蜀を望む」の起源は、曹操ではなく後漢を開いた光武帝とも考えられています。

光武帝の領土拡大の意欲からきた?

かつて領土拡大を考えていた光武帝は、後に中華統一を果たすのですが、隴と蜀の地は最も反抗の大きな地でした。
そんな中、部下に対して「隴を平定したら今度は蜀の対立勢力を鎮圧したい」と考えをまとめた手紙を送っています。

その書の中で、自分の野望がとどまることなく溢れてくることもしたためていたのだとか。
さらに、軍隊を動かす度に白髪が増えていくと自嘲気味に語っていたとされます。

この、光武帝の手紙の内容から、人の欲望には限りがないことを例えて「隴を得て蜀を望む」と言うようになったとされています。

こちらの場合は領土拡大への意欲について放った言葉が「隴を得て蜀を望む」という言葉の由来となったと考えられています。

光武帝とは

光武帝とは、後漢王朝の初代皇帝です。

新朝の混乱期に中華を統一し、漢王朝の再興として後漢王朝を建てた人物です。
彼は中国史上唯一、一度滅亡した王朝の復興を旗印として天下統一に成功した皇帝です。

国宝に認定されている「漢委奴国王」の金印、これを倭(日本)の奴国の使節に与えた皇帝が光武帝です。

まとめ

人の欲望はどんなに満たしてもきりがありません。
そんな虚構にも似た状況を指して曹操や光武帝が口にしたのが、もともとの「隴を得て蜀を望む」という言葉だったそうです。

確かに、どんなに求めても満たされない人も現代には多いかもしれません。
中国の偉人たちが遺した言葉、モノに溢れすぎている現代だからこそしっかり噛みしめておきたいところです。

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