「海のお掃除屋さん」と呼ばれる魚、それがホンソメワケベラです。
ホンソメワケベラはその異名の通り、他の魚を掃除して回るとても面白い生態を持った魚です。
そこでここでは、そんなホンソメワケベラについてご紹介します。
掃除とは言っても何を掃除して回っているのかについて詳しく解説していく他、厄介なことをする偽物についてもご紹介しますね。
目次
「ホンソメワケベラ」とは
出典:Wikipedia(©Matthias Kleine)
ホンソメワケベラ、名前にもある通りベラ科の一種です。
まずは、ホンソメワケベラについてご紹介します。
ホンソメワケベラの生息場所
ホンソメワケベラは、太平洋とインド洋の熱帯・亜熱帯の海に分布しています。
日本でも、房総半島以南の海に分布しており、夏ともなると暖流に乗って北上した個体が東北地方や北陸地方の海岸でも見られます。
しかし、あまり北上しすぎた個体は、低温となる冬を乗り越えられないのだとか。
ホンソメワケベラの大きさや姿
ホンソメワケベラは体長が12cm前後で、メスよりもオスの方が大きいとされています。
その体は青白く、体の中央に黒い線が入っています。
青白い背中とお腹に対して、頭部から尾鰭まで走っている黒い帯が目を引きますので、目で追いやすい魚ともいえます。
なお、尾鰭に近づくほどその黒い帯が太くなる傾向にあるとされています。
もともと違う名前だった?
現在ではホンソメワケベラという名前が定着していますが、もともとは「ホソソメワケベラ」という名前でした。
しかし、「ホソ」を「ホン」と読み間違えたことで、のホンソメワケベラという名前が広まったのだとか。
実際、「ソメワケベラ」という名前の魚の方が大柄です。
ホンソメワケベラは「海のお掃除屋さん」!
出典:Wikipedia(©Brian Gratwicke)
ホンソメワケベラは、「海のお掃除屋さん」ともあだ名されています。
ここからは、なぜそのような別名があるのか、その理由をご紹介します。
あだ名はホンソメワケベラの食事風景から
ホンソメワケベラのあだ名である「海のお掃除屋さん」は、その食事風景から来ています。
ホンソメワケベラの食事となるのは、他の魚の体表についている寄生虫や余分な粘液です。
そのため、魚の中には、ホンソメワケベラを発見すると自分から近寄っていくものもいるのだとか。
そして、ホンソメワケベラはその魚たちの回りを泳ぎながら、餌となる寄生虫などをついばんでいくのです。
また、寄生虫だけではなく、鰓の中や口の中にも入り込んで食べかすなども食べて回るとされています。
このホンソメワケベラの食事風景から、「海のお掃除屋さん」と呼ばれるようになったのです。
お掃除される側はホンソメワケベラに気を遣う!
寄生虫などを取ってもらいたい魚は、ホンソメワケベラを驚かさないように、それぞれが独特の方法で運動を制止します。
大型魚は胸鰭を動かして身体の安定を保る他、小型魚はほとんど全身硬直状態になることで、されるがままに掃除されるのです。
お掃除屋さんをするのは生存戦略でもある!
掃除してもらう魚はチョウチョウウオ、ヒメジ類などの小型魚からギンガメアジなどのアジ類、クエ、マハタ、ユカタハタなどの大型魚までいます。
これはサンゴ礁に棲む魚のほとんどを占めているとされ、中には魚食性の強い魚も数多く含まれています。
しかし、この魚たちも自分の体を綺麗に掃除してくれるホンソメワケベラを捕食することは基本的にないのだとか。
ホンソメワケベラは他の魚の体をきれいにするようになったことで、自分が捕食されるのを防ぐことに成功したわけです。
生存競争の激しい世界で、ホンソメワケベラは掃除屋になることで生き抜いているので、見事な生存戦略ともいえます。
厄介なホンソメワケベラの偽物もいる
「海のお掃除屋さん」といわれるホソソメワケベラにはとても似た魚がいます。
しかもこの魚、ホソソメワケベラに似た姿を活かして悪辣なことをしています。
そのため、ホソソメワケベラに体をきれいにしてもらいたい魚にとってなかなか厄介な存在だったりします。
その名は「ニセクロスジギンポ」
ホソソメワケベラにとても似ている魚は「ニセクロスジギンポ」と言います。
このニセクロスジギンポという魚、姿こそホソソメワケベラに瓜二つですが、名前の通り「ギンポ」という魚の一種で、ベラ科のホソソメワケベラとは異なる魚です。
ホンソメワケベラになりすまして行うヒドいこと
ホンソメワケベラは他の魚の体に付着した寄生虫を食べるため、大型魚にも容易に近付けます。
ニセクロスジギンポは、そんなホンソメワケベラに擬態することで大型魚に捕食されることなく接近し、鱗や皮膚をかじりとって食べてしまいます。
寄生虫や汚れを取ってほしかったのに、体の一部をかじり取っていくというのですから、相手にとっては迷惑この上ない行為です。
姿が似ているホソソメワケベラとニセクロスジギンポですが、泳ぎ方や口の開き方が違うため、両者を見比べる分には識別しやすいとされています。
まとめ
ホソソメワケベラは、「海のお掃除屋さん」という別名通り、他の魚の寄生虫や汚れなどを食べてくれる魚です。
そのため、ホソソメワケベラは生息域の魚食性の強い魚から捕食されずに生きていけるそうです。
実に頭のいい生存戦略ですね!
実際、魚がホソソメワケベラに掃除してもらいたくて近寄ってくることもあるそうです。