相撲の取組では、立合いに際して「はっけよい」と行司が掛け声をかけます。
この「はっけよい」は、他競技でのレフェリーによる試合開始の合図とは趣旨が異なります。
そこでここでは、「はっけよい」という掛け声の目的や意味、そして由来についても見ていきましょう。
併せて「はっけよい」との組み合わせで使われる「のこったのこった」についてや、行司にまつわる豆知識をいくつかご紹介します。
目次
「はっけよい」の由来とされる説
まずは「はっけよい」の語源について、諸説ある中からいくつかの説をご紹介します。
「発気揚々」から来たとする説
ひとつに、「発気揚々」という言葉から来たとする説があります。
日本相撲協会でも、「はっきょい」は「発気揚々」が転じた言葉とされています。
「発気揚々」とは、気を盛んに出すという意味です。
「早競へ」が転じたとする説
「早競へ」から転じたという説もあります。
早が「はっ」に、競へが「けよい」に転じたと考えられています。
この「早競へ」の意味は早く競いなさいとなります。
「八卦良い」だったとする説
「はっけよい」の「はっけ」は、古代中国から伝来した易占いの「八卦」のこととする説もあります。
この「八卦」では、「天・沢・火・雷・風・水・山・地」の8つの要素が自然と人生を支配するもとだと考えています。
この八卦の考えが、勝負事である相撲で使われるようになったのだとか。
行司の掛け声の意味
「はっけよい」をはじめとした掛け声を行司は発します。
これら掛け声にはどのような意味が込められているのでしょうか。
「はっけよい」は試合開始の合図ではない
「はっけよい」は、立合いの合図の掛け声ではありません。
格闘技の多くはレフェリーによる「ファイト」という掛け声を試合開始の合図とします。
しかし相撲、特に「大相撲」は異なります。
実は競技開始の明確な合図が存在しないのです。
向かい合っている力士同士が、呼吸を合わせて土俵に両手をついた時点で立合いが成立します。
力士の集中力を高めるために「待ったなし」「見合うて」などと掛け声をすることはあっても、試合開始の合図として「はっけよい」と言っているわけではありません。
では、「はっけよい」という掛け声はなぜ発せられているのか。
それは、動きを求めているからです。
語源とされる「発気揚々」も「早競へ」も確かに、試合を動かすことを求めている言葉ですね。
「のこったのこった」の意味
行司は、「はっけよい」と一緒に「のこったのこった」という言葉も発せられます。
この「のこったのこった」は、力士が動いている時に「まだ勝負がついていないぞ」と伝えるための掛け声となっています。
実際の取り組みでは、明確に転んだり倒れたりしない限りは、結果はわかりません。
それを伝えるために行司が「のこったのこった」ということで、勝負が付いていない状況を伝え続ける役割となっているわけです。
相撲の行司に関する豆知識
相撲に欠かせない存在である行司。
ここでは、そんな行司に関する豆知識をいくつかご紹介します。
行司になる方法
行司になるには、必要となる資格があるわけではありません。
しかし、正式に行司として働くためには日本相撲協会に採用されなくてはなりません。
応募条件は、義務教育を修了した19歳までの男性と定められています。
ちなみに土俵は女人禁制のため、女性が行司になることは叶いません。
行司の定員は45名で、65歳で定年という決まりがあります。
欠員が出た場合にのみ募集されるので、行司になるのは非常に狭き門だと言えるでしょう。
事実、新規採用されるのは毎年1人いるかいないかというレベルです。
行司には格がある
行司には、サラリーマンで言うところの役職に相当する格があります、
この核によってお給料も変わってくるのだとか。
以下、行司の格ごとの月収をご紹介します。
・序二段格:2万円〜2万9,000円未満
・三段目格:2万9,000円〜4万2,000円未満
・幕下格 :4万2,000円〜10万円未満
・十両格 :10万円〜20万円未満
・幕内格 :20万円〜36万円未満
・三役格 :36万円〜40万円未満
・立行司 :40万円〜50万円未満
なお、昇格に関しては勝負判定の他、土俵における態度や指導、日常の勤務状況など総合的に加味して判断されるそうです。
行司の仕事内容
行司は相撲の審判を任されているだけの存在ではありません。
その業務内容は多岐にわたります。
例えば、幕内力士の土俵入りを先導したり、勝敗の決まり手を場内アナウンスにて伝えたりするのも行司の役割です。
翌日の取り組みを書いたり、勝敗の記録を付けるのも、番付や取組編成会議における書記を行うことも行司の役目となっています。
そこに相撲部屋の雑務なども加わるため、実は非常に忙しい仕事となります。
まとめ
相撲において、行司が発する掛け声の1つ「はっけよい」は、他の格闘技におけるレフェリーや審判による試合開始の合図ではありません。
立合いは、力士たちの呼吸にお互いが合わせて始まりますので、分かりやすい試合開始の号令などはありません。
語源とされる「発気揚々」もしくは「早競へ」という言葉が、試合を動かすことや決着を付けることを求める言葉とされ、現在の「はっけよい」もその意味合いで用いられています。