梅雨時の言葉のひとつ「虎が雨」。この虎は動物のことではなく人名なんです!!

梅雨を表す表現のひとつに「虎が雨」という言葉があります。
その字面から動物のトラが何かしら関連しているようにも見えますが、この表現における虎は人名なんです!

ここでは、この梅雨の別称となる「虎が雨」について解説します。

「虎が雨」とは

 

「虎が雨」がどのような雨なのかを見ていきましょう。

「虎が雨」はどんな雨?いつ降る雨

「虎が雨」は、旧暦5月28日に降る雨とされます。
これは、現在の暦に換算すると6月下旬から7月中旬ごろに相当します。

ちょうど梅雨の時期ということから梅雨の別称とされることもありますが、厳密には特定の日に対してのみ使う言葉なので「梅雨=虎が雨」ではありません。

「虎が雨」の由来

 

なぜ旧暦5月28日の雨には、「虎が雨」という特別な名前があるのか、その由来について見ていきましょう。

由来となった「曽我兄弟の仇討」

「虎が雨」の由来には、「曾我兄弟の仇討」が関係しています。
日本三大仇討ちのひとつとして挙げられるこの「曾我兄弟の仇討」は、鎌倉時代初期の出来事です。

それは1193(建久4年)年5月から長期に渡って、源頼朝は多くの御家人を集めて富士で大規模な巻狩「富士の巻狩り」を行いました。
そんな中、5月28日に御家人のひとり「工藤祐経(くどう すけつね)」が、旅館にいたところ押し入ってきた「曾我祐成・時致(そが すけなり・ときむね)」の兄弟によって殺害されるという事件が起きました。

実は、殺された工藤祐経という人物は、曾我兄弟にとっては実の父親である「河津祐泰(かわづ すけやす)」の仇だったのです。

虎御前の涙から「虎が雨」となった

見事、父親の敵を討った曽我兄弟でしたが、兄の祐成は工藤祐経の配下によって討たれてしまいます。
この事実を知った祐成の愛人「虎御前」は悲しみから涙をこぼしました。

曽我兄弟が敵討ちを果たし、祐成が命を落とした5月28日には雨が降っていたことから、両者が結び付けられ旧暦で5月28日に降る雨のことを「虎が雨」というようになったとされます。
また、「曾我の雨、虎が涙」と言われることもあります。

梅雨時の言葉

 

ここからは、梅雨の別称であったり梅雨時の語句について見ていきましょう。

薬降る

「薬降る(くすりふる)」は、旧暦5月5日の正午に降る雨のことです。
この時の雨水で薬を作ると薬効が優れるとも、その雨が降り注いだ薬草を煎じて薬とすると優れた薬効になるともされていることにちなみます。

五月雨

「五月雨(さみだれ)」も日本における梅雨の別称です。
5月の雨なのに梅雨を指すのは、今の暦の中で生まれた言葉ではないからです。

虎が雨や薬降ると同じく旧暦の時代に成立した言葉なので、今と指している時期が異なります。
旧暦と今の暦では、大体1ヶ月から1ヶ月半ズレが生じることがあります。

そのため、五月雨はちょうど梅雨時の言葉ということになります。

まとめ

旧暦5月28日に降雨のことを指す「虎が雨」。
ここでいう虎は、動物のトラのことではありません。
「曾我兄弟の仇討」でも知られる曾我祐成の愛人「虎御前」の事を指しています。

仇討ちは成し遂げたものの命を落とした祐成を思って涙を流した姿と、その日は雨が降る日とされていることから結びついて生また言葉となります。

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