
※本記事は、歴史資料(裁判記録・同時代文献)や一般的な学説を参考に再構成した読み物です。
史実を断定するものではなく、諸説を平易に紹介する目的の記事です。
ガリレオはあの有名なセリフは本当に言ったのか?
「それでも地球は動く(E pur si muove)」
科学の象徴のように語られるこの名言。
教会の圧力に屈しながらも、真理を信じたガリレオの反骨精神を示す言葉として、世界中で引用されています。
しかし…、
この言葉は、史実には一切残っていない。
後世の創作である可能性が非常に高い。
という驚きの研究結果があるのです。
歴史の授業で聞いたこの名言…実はガリレオ本人が言った証拠は一つもないって知っていますか?
目次
【ポイント①】裁判記録に一言も書かれていない

ガリレオは1633年、地動説を唱えたことでローマ教皇庁に裁かれました。
その裁判記録はほぼ完全な形で残っています。
しかし、そのどこにも…、
それでも地球は動く、という言葉は書かれていません。
裁判の緊迫した状況を考えても、
あの場で挑発的な言葉を吐くのはほぼ不可能とされています。
【ポイント②】最初に言及されたのは100年以上後
この名言が文献に登場するのは、
ガリレオが亡くなってから 124年後(1757年)。
とある作家が出版した本の中に、
突然このセリフが登場し、
そこから一気に有名になりました。
つまり…、同時代証拠がゼロ → 後世の創作の可能性が非常に高い
ということになります。
【ポイント③】なぜ作り話が広まったのか?

ガリレオの裁判は、科学 vs 宗教の象徴として扱われがちです。
そして物語としては、
✔ 科学者が圧力に屈しながらも真実を信じる
✔ 強い信念を胸に名言を残す
✔ 革命の象徴となる
この方がドラマチックで人々の心に残るため、
英雄を美化する神話としてセリフが定着した と考えられています。
歴史にはよくある英雄化のプロセスですね。
【ポイント④】ガリレオ自身は慎重な科学者だった
史実のガリレオは、
挑発的な人物ではなく 極めて理性的で慎重な学者 でした。
・天文観測
・物体落下の研究
・望遠鏡の改良
・科学的方法の確立
地動説を主張したのも、信念より 観測結果に基づく科学的判断 に近いです。
だからこそ、裁判でも、自説を全面撤回したのではなく…、
あくまで従うと表明するにとどめたという現実的な態度が見て取れます。
名言が事実かどうかよりも、人々がそこに真理を求めた心を見たことこそ、ガリレオが残した最大の遺産なのです。
【結論】名言は作り話。でも精神はガリレオそのもの

歴史的事実としては、
それでも地球は動くはガリレオの言葉ではないです。
しかし…、
◇ この言葉が象徴する
◇ 真理への渇望
◇ 権威に屈しない精神
◇ 科学の自由を守ろうとする姿勢
これらは、ガリレオ本人の生き方によく合っています。
つまり、言葉は作り話でも、精神は本物だった。
だからこそ、この名言は300年以上愛され続けているのです。
まとめ:歴史の名言は、物語として完成していく
★ 名言は裁判記録になく、後世の創作の可能性が高い
★ 初出はガリレオ死後100年以上たってから
★ 科学者ガリレオのイメージを象徴する言葉として広まった
★ 物語が真実を補強する典型的な歴史ミステリー
事実は時に淡々と。
物語は時に劇的に。
その間で揺れ続けるのが、歴史の面白さなのかもしれません。