
大阪・新世界にある通天閣。
その展望台の5階にはふっくらした顔と体型で足を投げ出した、ビリケンさんが鎮座しています。
古くから大阪の観光スポットになっているので、見たことがある、ご利益を願って足裏を撫でたことがある、という方もいるかとおもわれます。
そんなビリケンさんは、古くから通天閣のシンボルとして存在していることから、大阪出身の福の神と思われがちですが、実はアメリカ出身なのです!
日本国内のみならず、世界中で愛されている存在のビリケンさんが、世界中でいつどのように広まったのか見ていきましょう。
目次
ビリケンさんはアメリカ出身

ビリケンさん誕生秘話
ビリケンさんは元々どこかの国や民族の神として存在していたわけではありません。
1907年頃にアメリカのミズーリ州で活動していたイラストレーター「フローレンス・プレッツ」が『人々の希望と幸福の象徴』をイメージしてデザインしたものです。
プレッツは、自身の前世は日本人だったに違いないと発言するほど日本に傾倒しており、和服を着た時の写真や日本を想像して描いたスケッチも実在しています。
そのため、ビリケンさんの造形からは東洋美術の影響が見受けられるそうです。
日本伝来は明治時代!
ビリケンさんが日本に伝わってきたのは1909(明治42)年頃のことで、1911年には大阪の繊維会社により販売促進用のキャラクターとして使用されたのが確認されています。
1912(大正元)年に新世界に通天閣と共に建設された遊園地「ルナパーク」。
その一角にはビリケンさんの像が置かれたビリケン堂が設置され、人気スポットになっていました。
しかし、1923年にルナパークが閉鎖された際、このビリケンさんは行方不明となってしまい、現在もなお見つかっていません。
戦後通天閣に設置されたビリケンさん

1979(昭和54)年、かつてルナパークで人気のあったビリケンさんの像を復活させる計画が持ち上がりました。
かくして、ルナパークのビリケンさんを初代とし、2代目ビリケンさんが通天閣に設置されたのです。
2012(平成24)年、通天閣100周年のリニューアルに際して、ビリケンさんも新調されることになりました。
それが現在通天閣に鎮座している3代目ビリケンさんです。
このビリケンさんの内側は空洞になっており、内部には金のビリケンさん、通称「ビリ金さん」が納められています。
基本的にはビリ金さんはビリケンさんに納められていますが、正月や通天閣の創立記念日に公開、展示されます。
ビリケンさんは実は福の神ではない?

ビリケンさんは一般的に福の神とされていますが、実は福の神でありません。
それなら本当は何の神様なのか、それはビリケンさんが鎮座している台座に答えがあります。
ビリケンさんはなんの神様?
台座にはBillikenと名前が記された下に「THINGS-AS-THEY」と書かれています。
これは「THE GOD OF THINGS AS THEY OUGHT TO BE」の略で、訳すと物事のあるべき姿を司る神や全知全能の神を意味します。
ふっくらとして親しみやすい風貌もあって福の神とされているビリケンさんですが、実は全知全能のという突拍子もない力を持つ神様だったのです。
なんで足の裏をなでるとご利益がもたらされるの?
ビリケンさんは足の裏をなでると願いを叶えてくれるとされています。
でも、なぜ足の裏をなでるだけで願いを叶えてくれるのか、と疑問を抱いた方もいると思います。
これはビリケンさんが自力では足の裏に手が届かないからとされています。
ビリケンさんはそのふっくろとした体型や手の長さから、足裏まで手が届かず、自分で掻くことができません。
そのため、代わりに足をなでてあげると喜んで願いを叶えてくれるというのです。
なんでもできるはずのビリケンさんが、実は足の裏を掻くことができないというのがまたかわいらしいですね。
大阪以外でも愛されているビリケンさん
ビリケンさんといえば通天閣!というイメージが非常に強いですが、アメリカ生まれということもあり世界中に存在しています。
世界のビリケンさん
ビリケンさんの出生地とも言うべきミズーリ州にあるセントルイス大学では、ビリケンさんがマスコットになっており、その存在は学内のは全てのスポーツクラブが、ビリケンズを名乗っているほど浸透しています。
アラスカやロシアなどにもビリケンさんは伝わっています。
アラスカではビリケンさんが生まれた直後に、象牙細工で作るビリケン彫刻が流行ったことで、現在では伝統細工の一つとして伝わっています。
ロシアにはアラスカ経由で伝わったとされ、現在では美術品として造形されています。
かつては自分に何かあってもビリケンさんが身代わりになってくれると信じられていたことから、ビリケンさんの像をお守りとしてを持つ狩人も多くいたそうです。
大阪だけじゃない!日本にいるビリケンさん
ビリケンさんは通天閣に安置されている像の他に、新世界や大阪の街中でも見ることができます。
しかも、アメリカから来たという経緯から大阪以外でも実はビリケンさんの姿を見ることができます。
千葉県流山市では、利根運河の土手にビリケンさんが安置されています。
このビリケンさんの像は国内最古のものとされています。
兵庫県神戸市では、兵庫区内にある神社「松尾稲荷神社境内」に奉納されています。
このビリケンさんはかつては神戸市元町にあった洋食店が店の前で飾っていたもの、と伝わっています。
温泉で有名な箱根湯本駅のプラットフォームにもビリケンさんは安置されています。
まとめ
通天閣で有名なビリケンさんはまさかのアメリカ出身の神様でした。
現地アメリカの大学ではマスコットになり、アラスカやロシアでは伝統美術の一つに取り込まれていたりと伝わった国でそれぞれの形で100年以上にわたり愛されている存在のようです。
日本にも意外なところにまだビリケンさんが安置されているかもしれませんね。