日本には、国や公共に対して優れた成果を残した方、または社会のさまざまな分野で活躍した方へ「勲章」と「褒章」を授与する栄典制度があります。
しかしこれらに対して「自分のような一般人には関係ない」「勲章と褒章の違いも分からないし」なんて思っていませんか?
勲章や褒章にはたくさんの種類やランクがあり、有名人や国家公務員じゃなくても授与されることがあるんですよ。
今回は勲章と褒章の違いと種類、さらには授与されるのはどんな人なのかを解説いたします。もしかして皆さんも授与されることがあるかもしれません。
目次
勲章・褒章とは?
日本には、国や公共のために努力し功績を残した方や、社会や福祉、文化などを通じて名誉ある行いをした方に対し、天皇から表彰される「栄典制度」があります。その際に授与されるのが勲章と褒章です。
勲章
勲章を授与されるのは、国や公共のための功労を国家に認められた方です。
受章者の判断基準は「長年の努力と功績が認められた方」のため、主に70歳以上の方、もしくは55歳以上の方で人目に付きにくい分野で業務に務めた方が対象です。
70歳以上の方の例は、病院長、社会福祉施設長、幼稚園園長、自治会長や商工会議所の役員、企業経営者、国勢調査員、保護司、人権擁護委員、民生・児童委員、調停委員などです。
55歳以上の方の例は、保育士、看護師、へき地の医師・保健師・助産師、介護職員、消防団員、水防団員、水位観測員、灯台灯火監視協力者、森林保全作業員などです。
勲章は「生涯にわたる功労」が基本のため、これらの業務において20年以上の活動歴が必要です。
褒章
褒章の授与は、社会や福祉、文化などに貢献した個人または団体を対象としており、年齢制限はありません。
例としては、人命救助をした方、スポーツ選手、ボランティア従事者などがあげられます。
勲章・褒章の種類
勲章と褒章には種類があります。
勲章の種類
勲章は大きく分けて6種類あり、さらにその中でいくつかのランクに分けられているものもあります。すべてランク順に解説していきます。
大勲位菊花章(だいくんいきっかしょう)
日本で最高位の勲章で、大勲位菊花章頸飾と大勲位菊花大綬章があります。
・大勲位菊花章頸飾(だいくんいきっかしょうけいしょく)
出典:wikipedia.org
大勲位菊花章の中でも、大勲位菊花章頸飾の方が位が高い勲章です。勲章の中で唯一首飾りの形状をしています。
授与対象者
日本国の最高勲章として、更に卓越した功績を成した者に対し大勲位菊花大綬章と共に授与されるか、すでに大勲位菊花大綬章を受章した者に加授されることになるが、外国元首への儀礼的叙勲を除くと叙勲例は非常に少なく、生前授与の例はさらに限られる。
これまでの授与者は、天皇や皇族または外国人への儀礼叙勲を除くと、内閣総理大臣を長年務めた方が多く見受けられます。その他には軍隊の司令官や元老を務めた方なども授与されています。
・大勲位菊花大綬章(だいくんいきっかだいじゅしょう)
出典:wikipedia.org
最高位の大勲位菊花章頸飾に次ぐ勲章です。
授与対象者
日本国憲法施行後、一般国民への叙勲は、約5年以上内閣総理大臣を務めた者、最高裁判所長官を長年務め多大な功績があった人物などに授与される例が多いが、戦後の生存者叙勲再開後では、生前授与されたのは総理大臣経験者3名と非常に少ない。
戦後の授与者の多くは内閣総理大臣で、その他に最高裁判所長官も授与されています。
桐花章(とうかしょう)
当初は旭日章の最上位としてつくられたのですが、2003年の栄典制度改革により桐花大綬章として独立した勲章になりました。
・桐花大綬章(とうかだいじゅしょう)
出典:wikipedia.org
授与対象者
現在では「国家または公共に対し功労のある者」の中から、特に「旭日大綬章または瑞宝大綬章を授与する功労より優れた功労のある者」に対して授与される。
内閣総理大臣・衆議院議長・参議院議長・最高裁判所長官といった三権の長をつとめた者には概ねこの勲章かそれ以上のものが授与されている。また民間では卓越した功労のあった企業経営者や、経済団体連合会の会長で功労のあった者などにも授与されている。
これまでの主な授与者は、内閣総理大臣、最高裁判所長官、参議院議長、経済団体連合会会長、マレーシア首相、シンガポール共和国首相などです。
旭日章(きょくじつしょう)
教育や文化の振興、社会福祉の向上、経済および産業の発展など、社会のさまざまな分野における功績の内容に着目し選考されます。6つのランク順にご紹介します。
・旭日大綬章(きょくじつだいじゅしょう)
出典:wikipedia.org
授与対象者
ア 内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長又は最高裁判所長官の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日大綬章
イ 国務大臣、内閣官房副長官、副大臣、衆議院副議長、参議院副議長又は最高裁判所判事の職(これらに準ずる職を含む。)にあって顕著な功績を挙げた者旭日重光章又は旭日大綬章
さらに、功績が際立っている県知事や大企業の経営者、労働組合幹部なども対象となっています。
・旭日重光章(きょくじつじゅうこうしょう)
出典:wikipedia.org
授与対象者
イ 国務大臣、内閣官房副長官、副大臣、衆議院副議長、参議院副議長又は最高裁判所判事の職(これらに準ずる職を含む。)にあって顕著な功績を挙げた者旭日重光章又は旭日大綬章
ウ 大臣政務官、衆議院常任委員長、参議院常任委員長、衆議院特別委員長、参議院特別委員長又は国会議員の職(これらに準ずる職を含む。)にあって顕著な功績を挙げた者旭日中綬章又は旭日重光章
エ 都道府県知事の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日中綬章又は旭日重光章
地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の29第1項の指定都市の市長の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日小綬章、旭日中綬章又は旭日重光章
さらに、全国的に活動している公益団体の長や、経済社会の発展に大きく貢献している企業の最高責任者も対象となっています。
・旭日中綬章(きょくじつちゅうじゅしょう)
出典:wikipedia.org
授与対象者
ウ 大臣政務官、衆議院常任委員長、参議院常任委員長、衆議院特別委員長、参議院特別委員長又は国会議員の職(これらに準ずる職を含む。)にあって顕著な功績を挙げた者旭日中綬章又は旭日重光章
エ 都道府県知事の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日中綬章又は旭日重光章
地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の29第1項の指定都市の市長の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日小綬章、旭日中綬章又は旭日重光章
指定都市以外の市の市長又は特別区の区長の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日双光章、旭日小綬章又は旭日中綬章
町村長の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日単光章、旭日双光章又は旭日小綬章
オ 都道府県議会議員、市議会議員又は特別区の議会議員の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日単光章、旭日双光章、旭日小綬章又は旭日中綬章
さらに、全国的に活動している公益団体の長や、経済社会の発展に大きく貢献している企業の最高責任者も対象となっています。
・旭日小綬章(きょくじつしょうじゅしょう)
出典:wikipedia.org
授与対象者
地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の29第1項の指定都市の市長の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日小綬章、旭日中綬章又は旭日重光章
指定都市以外の市の市長又は特別区の区長の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日双光章、旭日小綬章又は旭日中綬章
町村長の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日単光章、旭日双光章又は旭日小綬章
オ 都道府県議会議員、市議会議員又は特別区の議会議員の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日単光章、旭日双光章、旭日小綬章又は旭日中綬章
さらに、全国および都道府県を活動範囲としている公益団体の長、経済社会の発展に大きく貢献している企業の経営者、技術などで高い評価を得た企業の最高責任者も対象となります。
また、科学、文化スポーツなどで活躍した方や実業家、教育者なども対象者です。これまで授与された有名な方の中には、俳優の津川雅彦さん、落語家の柳家小三治さん、作家の角野栄子さんなどがいらっしゃいます。
・旭日双光章(きょくじつそうこうしょう)
出典:wikipedia.org
授与対象者
指定都市以外の市の市長又は特別区の区長の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日双光章、旭日小綬章又は旭日中綬章
町村長の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日単光章、旭日双光章又は旭日小綬章
オ 都道府県議会議員、市議会議員又は特別区の議会議員の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日単光章、旭日双光章、旭日小綬章又は旭日中綬章
町村議会議員の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日単光章又は旭日双光章
さらに、全国または都道府県区域を活動範囲としている団体の長や役員、市町村の区域を活動範囲としている団体の長、技術などで高い評価を得た企業の最高責任者、納税・薬事・弁護士・地方自治などの功労者も対象になります。
・旭日単光章(きょくじつたんこうしょう)
出典:wikipedia.org
授与対象者
指定都市以外の市の市長又は特別区の区長の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日双光章、旭日小綬章又は旭日中綬章
町村長の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日単光章、旭日双光章又は旭日小綬章
オ 都道府県議会議員、市議会議員又は特別区の議会議員の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日単光章、旭日双光章、旭日小綬章又は旭日中綬章
町村議会議員の職にあって顕著な功績を挙げた者旭日単光章又は旭日双光章
さらに、市町村の区域を活動範囲としている公益団体の長も対象者です。
瑞宝章(ずいほうしょう)
国家または公共に対して長年にわたり功労し成績をあげた方に授与されます。主に学校教育や社会福祉、医療または保健指導に直接携わる業務や、保護司、民生委員などです。1919年より女性も授与対象になりました。
職務の複雑度や困難度、責任の程度、特に重要と認められる職務を果たしうえでの成績結果などを考慮し、6つのランクに分けられます。ランク順にご紹介いたします。
・瑞宝大綬章(ずいほうだいじゅしょう)
出典:wikipedia.org
授与者には、事務次官や検事総長、会計検査院長、主要大学の学長などを経験した方が多いようです。
・瑞宝重光章(ずいほうじゅうこうしょう)
出典:wikipedia.org
授与者には、事務次官や高裁判事、大学の学長などが多いようです。
・瑞宝中綬章(ずいほうちゅうじゅしょう)
出典:wikipedia.org
中央省庁の部局で長を務めた方や大学教授が多く授与されてます。
・瑞宝小綬章(ずいほうしょうじゅしょう)
出典:wikipedia.org
本府省の課長を務めた方や郵便局長や警察署長、税務署長、公立高校長などが多く授与されています。
・瑞宝双光章(ずいほうそうこうしょう)
出典:wikipedia.org
保護司や小・中学校長などを務めた方が多く授与されています。
・瑞宝単光章(ずいほうたんこうしょう)
出典:wikipedia.org
消防団長、民生・児童委員、看護師長などが多く授与されています。
宝冠章(ほうかんしょう)
女性を対象としてつくられた勲章です。しかし2003年の栄典制度改定により、旭日章、桐花章、菊花章が女性も対象とされたため、現在では功労の評価による叙勲はされておらず、女性の皇族や外国人に対する儀礼叙勲として運用しています。
・宝冠大綬章(ほうかんだいじゅしょう)
出典:wikipedia.org
授与例
皇后、皇太子妃及び親王妃の結婚の儀を行う当日
内親王が満20歳を迎えた日
・宝冠牡丹章(ほうかんぼたんしょう)
出典:wikipedia.org
授与例
王妃が結婚の儀を行う当日
女王が満20歳を迎えた日
・宝冠白蝶章(ほうかんしろちょうしょう)
出典:wikipedia.org
・宝冠藤花章(ほうかんとうかしょう)
出典:wikipedia.org
・宝冠杏葉章(ほうかんきょうようしょう)
出典:wikipedia.org
・宝冠波光章(ほうかんはこうしょう)
出典:wikipedia.org
文化勲章(ぶんかくんしょう)
授与対象者
科学技術や芸術などの文化の発展や向上にめざましい功績を挙げた者に授与される
すでに文化功労者として表彰されている方の中から選考されます。これまでには、ノーベル賞受賞者や大学教授、歌舞伎役者、指揮者、小説家などが授与されています。
褒章の種類
褒章には、それぞれの分野に分かれた6つの種類があります。
紅綬褒章(こうじゅほうしょう)
授与対象者
「自己ノ危難ヲ顧ミス人命ノ救助ニ尽力シタル者」に授与される。
自分自身の危難を顧みず人命を救助した方に贈られます。
緑綬褒章(りょくじゅほうしょう)
授与対象者
「自ラ進デ社会ニ奉仕スル活動ニ従事シ徳行顕著ナル者」に授与される。「長年にわたり社会に奉仕する活動(ボランティア活動)に従事し、顕著な実績を挙げた方」に授与されると説明される
長年にわたりボランティア活動などで功績のある個人や団体が対象です。
黄綬褒章(おうじゅほうしょう)
授与対象者
「業務ニ精励シ衆民ノ模範タルベキ者」に授与される。「農業、商業、工業等の業務に精励し、他の模範となるような技術や事績を有する方」に授与されると説明する
長年にわたり農業、商業、工業等の業務に打ち込み、規範となるような技術や実績を持つ個人や団体に贈られます。
紫綬褒章(しじゅほうしょう)
授与対象者
「学術芸術上ノ発明改良創作ニ関シ事績著明ナル者」に授与される。「科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた方」に授与されると説明する。
科学技術分野における発明や、学術や芸術、スポーツにおける分野で優れた業績を挙げた個人や団体に授与されます。芸能人やオリンピックメダリストが授与し報道されることがあるので、有名な褒章です。
これまでの授与者は、ワールド・ベースボール・クラシック第1回大会で優勝した日本代表チーム、歌手の石川さゆりさん、建築家の隈研吾さん、芥川賞作家の川上弘美さんなどがあげられます。
藍綬褒章(らんじゅほうしょう)
授与対象者
「教育衛生慈善防疫ノ事業、学校病院ノ建設、道路河渠堤防橋梁ノ修築、田野ノ墾闢(こんぺき。開墾)、森林ノ栽培、水産ノ繁殖、農商工業ノ発達ニ関シ公衆ノ利益ヲ興シ成績著明ナル者又ハ公同ノ事務ニ勤勉シ労効顕著ナル者」に授与される。「会社経営、各種団体での活動等を通じて、産業の振興、社会福祉の増進等に優れた業績を挙げた方」、「国や地方公共団体から依頼されて行われる公共の事務(保護司、民生委員・児童委員、調停委員等の事務)に尽力した方」に授与されると説明する
公共の仕事で優れた業績を挙げた個人や団体に贈られます。
紺綬褒章(こんじゅほうしょう)
授与対象者
「公益ノ為私財ヲ寄附シ功績顕著ナル者」に授与される。
公益のために私財を寄付した方に贈られます。
勲章・褒章に金銭はない!
勲章と褒章には金銭の授与はありません。
賞金や年金はない
勲章と褒章を授与しても、金銭的な報酬を受け取ることはありません。賞金がないことに驚かれる方もいると思いますが、勲章も褒章もとっても名誉ある章ですので、それだけで嬉しいことなのです。
文化勲章受章者は例外
文化勲章は文化功労者の中から選ばれます。文化功労者とは、文化の向上発達に関して大きく貢献した方を対象に文部科学大臣が表彰するもので、副賞として年金が支給される制度です。文化功労者に選ばれた方は、選ばれた年から死亡するまで年間350万円が支払われます。
このことから、文化勲章の授与者は「賞金を受け取っている」と捉えられるかもしれませんね。
まとめ
一般の方でも勲章や褒章を授与するチャンスがあることが分かりました。また、「ぜひともこの人に叙勲して欲しい!」と思える方が身近にいれば、個人で内閣府賞勲局に推薦することもできるんですよ。
もしかして、皆さんや皆さんのご家族が授与されることがあるかもしれませんね!
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出典:Wikipedia(菊花章) / Wikipedia(大勲位菊花章頸飾) / Wikipedia(大勲位菊花大綬章) / Wikipedia(勲章(日本)) / Wikipedia(桐花章) / Wikipedia(旭日章) / Wikipedia(瑞宝章) / Wikipedia(宝冠章) / Wikipedia(文化勲章) / Wikipedia(褒章)