タツノオトシゴは魚とは思えないほど不思議な姿をしていることから、水族館でも人気の生き物です。
そんな独特な姿をしたタツノオトシゴにはなんと「雄が出産をする」という話があるんです!
この話は本当なのか、タツノオトシゴの生態と併せて見ていきましょう。
目次
タツノオトシゴとは
タツノオトシゴは直立した不思議な姿勢をしていますが、トゲウオ目ヨウジウオ亜目に属するれっきとした魚の一種です。
タツノオトシゴの生息域
タツノオトシゴは現在発見されているだけで40種以上いますが、いずれも熱帯から温帯の浅い海や沿岸部もしくは汽水域に生息しています。
身を隠せる岩礁や海藻、サンゴ礁が多い場所では特にその数を多く見ることができます。
タツノオトシゴの生態
成体の全長は種によって様々で、最小種だと1.4cm程しかありませんが、最大種ならば全長が35cmまで成長するそうです。
全身を覆う甲板は鱗が変化したものです。
尾ひれはありませんが代わりに尾が発達しています。
直立姿勢ということもあって、タツノオトシゴは泳ぐのが得意ではありません。
そのため、発達した尾を海藻やサンゴ礁に巻きつけることで体を固定します。
泳ぎは得意ではありませんが、凸凹した体と体色により周囲環境に馴染む擬態能力に優れており、海藻などに潜り込むと見つけるのは容易ではなくなります。
タツノオトシゴの食性
タツノオトシゴの口は非常に小さく、筒状をしていることから生息域にある海藻などを食べていそうですが、実は肉食性の生き物です。
魚卵や小魚、小型の動物プランクトンに海底生物(ベントス)、そして小型の甲殻類まで幅広い種を捕食します。
擬態能力の高い体で気付かれないようにゆっくり対象に近付きますが、口元まで近付くとそれまでとうって変わり瞬時に吸い込んで捕食していまいます。
タツノオトシゴは本当にオスが出産するのか?
タツノオトシゴにある噂、オスが出産をするというのは果たして本当なのでしょうか。
その実態を見ていきましょう。
メスが産卵します!
残念ながら産卵するのはタツノオトシゴのメスです。
一度の産卵で100~200個ほど、多い個体では1000個ほど卵を産み落とします。
そもそも動物のメスの定義が「卵巣を持ち、卵や子を産むほう」なので、卵を生んだりする時点でオスということはありえないということです。
ではオスが出産をするという話は全くの嘘なのか、というとそうでもありません。
メスが産卵する場所は・・・オス!
嘘ではない理由はタツノオトシゴの産卵場所にあります。
タツノオトシゴのメスはなんと産卵場所にオスの体を選びます。
これには理由があり、タツノオトシゴのオスの腹部には「育児嚢(いくじのう)」と呼ばれる袋状の空間があるからです。
最初から子供の産卵場所になるうようにタツノオトシゴの体は進化しているんですね!
この育児嚢の中で、メスが産んだ卵は孵化し稚魚になるまでの10日から1ヶ月ほどを過ごします。
稚魚になると育児嚢から出ていくのですが、その様子がまるで出産するように見えることから、タツノオトシゴはオスが出産するという話が出てきているのです。
タツノオトシゴはその体の表面を凸凹した甲板で覆われていますが、育児嚢だけはなめらかな皮膚で覆われているため、この育児嚢の有無で雌雄の区別を行うことができます。
安産のお守りとされたタツノオトシゴ
卵を体内で守るというタツノオトシゴの習性は古くから知られていたようで、安産祈願のお守りとしてタツノオトシゴを妊婦に持たせるという風習が日本各地で見られたそうです。
直立し頭部が前を向いているその姿から「龍の落とし子」ともいわれ縁起物とされることもあります。
まとめ
オスのタツノオトシゴは出産するといわれることもありますが、残念ながらそれは間違いです。
メスがオスの育児嚢に産卵し、その中で稚魚になるまで守っているというのが実際のところです。
出産に見える姿は、育児嚢から稚魚が巣立っていく様子が勘違いされたものだったのです。