何かをやらかしてしまった時、「もう後の祭りだね」と言われたことはありませんか?毎日のようにミスをしてしまう筆者は、耳にタコができるほどこの言葉を聞いています。
ところでこの「後の祭り」という言葉、実はある特定の祭りの事を指しているそうです。
今回は、あまり良い意味では使われない「後の祭り」という言葉の意味や語源についてご紹介します。
目次
「後の祭り」とは
「後の祭り」は、一般的に悪い意味で使われる言葉です。
まずは、そんな「後の祭り」という言葉について類義語も含めてご紹介します!
「後の祭り」の意味
「後の祭り」とは手の施しようがない、つまり時期を逸して手遅れになってしまった状態や今更騒ぎ立てても遅い状況のことを指す否定的な表現です。
今さらな後悔、後悔するのが遅いという意味で使われますよね。
以下、例文を少しだけご紹介します。
・レポートの期日は機能だから、今更アタフタしても後の祭りだよ。
・契約を解除するには違約金が発生します。今更条件が合わないと言われても、契約は先日締結しましたので後の祭りですよ。
両方とも今さら後悔したり騒ぎ立てても遅い、もっと早く動いたり確認すべきだったという意味で「後の祭り」が使われているのが分かりますよね。
後の祭りの類義語
「後の祭り」には、多くの類義語があります。
ニュアンスは若干変わってきますが、意味としては似ているものが多いのでご紹介します。
臍(ほぞ)を噛む
臍とは、ヘソのことです。自分のヘソは噛もうとしても噛むことができません。
そのため実行しても実現できないので、イライラするだけです。そこから「行っても無理なことを後悔する」という意味になりました。
覆水盆に返らず
覆水とは、器からひっくり返した水の事です。水を床にひっくり返してしまったら、もう元には戻せません。
そのことから「もうどうしようもない状況なので後悔しても遅い」という意味になります。
証文の出し遅れ
出すべき証文(証拠となる文書)は、出すべき時に出さなかったら役に立ちません。
後から出しても期日などが遅れていたら、ただの紙切れになってしまいます。そこから「時期を逃して役に立たないもの」のたとえになりました。
どれも手遅れになって途方に暮れている様子を意味する言葉で、「後の祭り」と同じように使えます。
こんなにもどうしようもない状況を表現する言葉が多いというのは、「やはり後悔先に立たず」だからなんでしょうね!(笑)
「祭りの後」との違い
よく「後の祭り」と似たような意味で、『祭りの後』という言葉を使っている人もいます。
しかし、こちらの言葉は「楽しいことが終わった後の寂しさや虚しさや切なさ」を表現するための言葉となるため、意味合いが「後の祭り」とは異なります。
由来になったのは祇園祭?
「後の祭り」という言葉は、京都で古くから行われているお祭り『祇園祭』に由来するとされます。
京都の祇園祭と、手遅れな状態を指す「後の祭り」という言葉にはどのような関係があるのでしょうか?
祇園祭とは
祇園祭は、毎年7月に八坂神社で催されるお祭りです。
平安時代の貞観年間から1,000年以上続く歴史あるお祭りであり、京都の夏の風物詩の代表格ともいえる行事です。
5月~6月になると京都の人たちは祇園祭の準備を着々と進め、本番は毎年大賑わいとなります。
7月から1ヶ月の期間中に約200万人近くが訪れ、非常に大規模なお祭りなのです。
祇園祭が語源になった理由
この祇園祭は7月1日から約1ヶ月間にわたって続くのですが、「前祭(さきのまつり)」と呼ばれる山鉾巡行が派手なのに対し、後から行われる「後祭(あとのまつり)」は山鉾の数が少なくなり寂しい情景だったといいます。
その差から「後の祭り」という言葉が生まれたようです。祇園祭を堪能するならば、「前祭」は外せない見世物とされてきました。
もしそれを見逃してしまったからといって「後祭」だけ見に行っても、祭りのピークは過ぎているので手遅れだという意味で生まれたのだといわれています。
「後の祭り」の起源とされる他の説
「後の祭り」という言葉の起源は、祇園祭説が確定というわけではありません。
祇園祭の他にも、様々な説が起源として語られているので、簡単にご紹介します。
故人を祭ることが起源だとする説
「後の祭り」にはもともと葬式や法事など、故人の霊を祭ることを指してそう呼んだという説があります。
亡くなった人に対して盛大なお祭りを開催しても本人にとってはあまり意味がないことから、手遅れという意味で「後の祭り」という言葉を使うようになったのだとか。
お祭り後の装飾の扱いを起源とする説
お祭りで使った山車などは他で役に立たないことや、お祭りが終わった後に見物に行っても意味がないことなどから、「後の祭り」という言葉が使われるようになったという説もあります。
お祭りの際に大活躍した道具も、終われば次回まで使われることがありません。
それらが使われることもなくひっそりと置かれている状況を指して、「後の祭り」という言葉が生まれたという話もあります。
まとめ
「後の祭り」という言葉は、具体的にどこから生まれたのかはわかっていません。
ただ、有力なのは祇園祭の「前祭」とは違い、華やかさが薄かった「後祭」の状況を指した言葉だということです。
しかし現在の祇園祭は、「後祭」だけの見物でも決して後悔するようなものではありません。
確かに山鉾の数など盛況さは「前祭」に劣りますが、山鉾の巡行路が「前祭」とは逆方向になりますし、八坂神社に花傘が巡行する姿が見られるからです。
特に「前祭」では八坂神社周辺で花傘も山鉾も見ることができないのですから、これは「後祭」を見る人だけの特権ということになります。
とはいえ、熟語としての「後の祭り」自体はあまり良い意味はないので使う際は注意したいですね。