九九には割り算バージョンがあった!昔はみんな覚えていた割り算九九「八算」とは!

「九九」といえば、小学校で掛け算と一緒に学習し、懸命に覚えましたね。
そんな九九には、割り算バージョンとも言える存在があるのをご存知ですか?

今回は日本で古くから使われている九九の割り算バージョン「八算」について見ていきましょう。

2種類ある割り算の計算方法

 

割り算の計算方法は主に2種類あります。
一般教養として学習する「商除法」と、現在の計算法では一般的でない「帰除法」です。

商除法とは、現在使われている一般的な割り算の計算方法です。
小学校や中学校で学習するのも、この商除法による割り算となっています。

この商除法は掛け算用を応用した、一種の逆算する計算方法です。

例えば送別会で20,000円のプレゼントを5人で贈ろうとします。
この時に支払いを均等にすると1人いくらになるでしょうか?

そうです、1人4,000円ですね。
この時の計算はどのように出しましたか?
おそらく、端数もないので5でかけると20,000になる数字を掛け算の要領で探して来たのではないでしょうか?

ちなみに筆者の場合は20になる5の段は4、そしてその1,000倍だから4,000円という導き方をしました。
完全に掛け算の九九ありきの算出方法ですね。
このような考え方が商除法です。

帰除法

帰除法とは、昔使われていた割り算用の九九を使う計算方法です。
この代表格が「八算」と呼ばれるもので、帰除法の鍵となります。

帰除法を用いるには、まず八算を暗記しておく必要があります。

その際、九九が「しちしちしじゅうく」といった言葉で覚えることがあるように、八算にも「二一天作五(にいちてんさくのご)」や「三一三十一(さんいちさんじゅうのいち)」という呪文のような暗記術の言葉があります。

八算を知ろう!

 

ここからは八算について見ていきましょう。

八算とは

八算は、8通りのパターンから計算する九九の割り算バージョンです。
この呼び名は、除数が2~9までの8通りあることに由来しています。

中国では除数が1の場合も含めて、9通りということで「九帰法」と呼んでいました。
日本では「1で割る場合は値が変わらない」ことから、一の段を除外して「八算」と命名されたと考えられています。

またこの八算を覚える際には、そろばんについても学んでおく必要があります。

八算の仕組み

前述した「二一天作五(にいちてんさくのご)」や「三一三十一(さんいちさんじゅうのいち)」という呪文のような言葉。

これがどうして割り算の計算になるのか分かりにくいですよね。
実は、八算の仕組みには少しクセがあります。

この言葉の並び方は、「割る数」「割られる数(の10倍もしくは2倍)」「割った結果(割り切れなっかったら余りも)」の順番となっています。
例えば「二一天作五(にいちてんさくのご)」は、2で10を割ると5になるの意味なので、「10÷2=5」の意味になります。

ちなみに「天」はそろばんの五玉を下げて5になったことをあらわしており、「作」はあげられていた一玉を全て下げることを指しています。

以下は、それぞれの段の割り算九九となります。
「一十」を「いんじゅう」ではなく「いっしん」と読むこともあるので、読み方にも注意が必要ですよ!

二の段

・二一天作五(にいちてんさくのご)
・二進一十(にしんがいんじゅう)

三の段

・三一三十一(さんいちさんじゅうのいち)
・三二六十二(さにろくじゅうのに)
・三進一十(さんしんがいんじゅう)

四の段

・四一二十二(しいちにじゅうのに)
・四二天作五(しにてんさくのご)
・四三七十二(しさんななじゅうのに)
・四進一十(よんしんがいんじゅう)

五の段

・五一加一(ごいちかいち)
・五二加二(ごにかに)
・五三加三(ごさんかさん)
・五四加四(ごしかし)
・五進一十(ごしんがいんじゅう)

六の段

・六一加下四(ろくいちかかし)
・六二三十二(ろくにかかに)
・六三天作五(ろくさんてんさくのご)
・六四六十四(ろくしろくじゅうのし)
・六五八十二(ろくごはちじゅうのに)
・六進一十(ろくしんがいんじゅう)

七の段

・七一加下三(しちいちかかさん)
・七二加下六(しちにかかろく)
・七三四十二(しちさんしじゅうのに)
・七四五十五(しちしごじゅうのご)
・七五七十一(しちごななじゅうのいち)
・七六八十四(しちろくはちじゅうのし)
・七進一十(ななしんがいんじゅう)

八の段

・八一加下二(はちいちかかに)
・八二加下四(はちにかかし)
・八三加下六(はちさんかかろく)
・八四天作五(はちしてんさくのご)
・八五六十二(はちごろくじゅうのに)
・八六七十四(はちろくしちじゅうのし)
・八七八十六(はちしちはちじゅうのろく)
・八進一十(はっしんがいんじゅう)

九の段

・九一加下一(くいちかかいち)
・九二加下二(くにかかに)
・九三加下三(くさんかかさん)
・九四加下四(くしかかし)
・九五加下五(くごかかご)
・九六加下六(くろくかかろく)
・九七加下七(くしちかかしち)
・九八加下八(くはちかかはち)
・九進一十(きゅうしんがいんじゅう)

実は必要な一の段

八算では通常、一の段を用いることはありません。
しかし、2桁以上の数で割る場合、23や246など2から始まる数字は二の段を、35や345など3で始まる数で割る場合は三の段を用いるといった具合で計算していきます。

このような状況なら、1で始まる2桁以上の数で割る場合には値が変わってくることから、一の段も必要なものとされています。
今回は一の段もご紹介しますね。

・一進一十(いっしんのいちじゅう)
・二進二十(にっしんのにじゅう)
・三進三十(さんしんのさんじゅう)
・四進四十(ししんのしじゅう)
・五進五十(ごしんのごじゅう)
・六進六十(ろくしんのろくじゅう)
・七進七十(しちしんのしちじゅう)
・八進八十(はっしんのはちじゅう)
・九進九十(くしんのくじゅう)

割り算九九に関する豆知識

 

割り算九九についての豆知識もいくつかご紹介しますね。

学校教育に含まれていた八算

かつての学校教育には、割り算九九も含まれていました。
明治時代に出された教科書では、前述の九帰法という名前で八算が載っています。

一時は掛け算九九よりも普及していた時代もあったのだとか。
そのため、生活に必須な知識として学校で教えられていたそうです。

にっちもさっちもの語源は割り算九九から

「にっちもさっちも」とは、どう見積もってもどうにもできない様子を指す言葉です。
これは割り算九九が語源とされています。

「にっちもさっちもいかない」というように使われますが、「にっち」は「二進」で、「さっち」は「三進」の音が変化した言葉となっています。

共に八算で出てきた「二進一十」「三進三十」から来ています。
2÷2=1ですし、3÷3=1と共に割り切れる式をあらわします。

これが由来となり、計算のやりくり、特にお金のやりくりを指す言葉となりました。

こうして「にっちもさっちもいかない」は、どうしてもやりくりができない様、進退窮まった様子、窮地に追いやられた状況を指す言葉となりました。

まとめ

九九は掛け算だけではなく、割り算もあります。かつては「八算」と呼ばれるものが学校教育にも含まれていました。
しかし、そろばんでの計算が減ったことで次第に廃れていった計算方法となっています。

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