日本でよく食べられている鯖寿司は、地域や人によってバッテラと呼ばれることもあります。
実はバッテラというものは、もともとはサバを使っていなかった上に、その語源はポルトガル語にあるんだとか!
また、正確には鯖寿司とバッテラは別物とされているそうです。
「鯖寿司=バッテラ」ではなく「鯖寿司≒バッテラ」の関係のようです。
そこで、ここではそんな変わった歴史を持つバッテラについて見ていきましょう。
目次
鯖寿司とバッテラは本来別物
現代でこそバッテラは鯖寿司のことを指して使われることもありますが、本来は別物を指す言葉でした。
ここでは、まずそれぞれの特徴をご紹介するので、その違いについても確認しておきましょう。
鯖寿司とは
鯖寿司とは、棒寿司ともよばれる押し寿司の一種です。
酢飯に塩サバの半身を乗せて、布巾や巻き簾で巻いて柔らかい昆布で包むという作り方が一般的です。
切り分けた時に切り口が丸くなるのが特徴です。
バッテラとは
バッテラとは、酢で締めた塩サバの押し寿司のことです。
バッテラは甘酢で煮た白板昆布や酢で締めて薄く切ったサバ、酢飯を木枠に入れて型抜きするという作り方が一般的となっています。
型抜きしたものを切り分けますので、その切り口は四角くなります。
鯖寿司とバッテラの違い
共に塩サバを使いますが、作り方に違いが見受けられます。
・鯖寿司はサバの半身をまるまる使う。バッテラは薄く切ったサバを使用する。
・鯖寿司は巻き簾で形を整える。バッテラは木枠に入れて押し固める。
・切り口が、鯖寿司は角が無く全体的に丸みを帯びたものになる。バッテラは四角くなる。
バッテラのはじまり
バッテラは、明治時代中頃に生まれたとされる押し寿司です。
しかしその当時は、サバではなくコハダの成魚コノシロが使われていました。
現在ではコノシロは高級魚ですが、明治20年代後半、突如大阪湾で獲れるようになったため周辺地域では値段が暴落しました。
この値段が安くなったコノシロに目を付けたある寿司屋がコノシロを使った押し寿司を開発。
「バッテラ」という名前で売りだしたところ評判となり、定着しました。
しかしその後、大阪湾でのコノシロの漁獲量が減っていってしまい、値段も再び上がっていきました。
そのためコノシロの押し寿司を作るのは難しくなってしまいました。
そこで代用されたのがサバでした。
このサバを使った押し寿司が好評を得たため、現在ではサバの押し寿司をバッテラというようになったのです。
バッテラの語源はポルトガル語
バッテラは、ポルトガル語に由来する言葉とされています。
バッテラは小舟?
バッテラは、ポルトガル語で「小舟」「ボート」を意味する「bateira(バッテイラ)」から来たとされる説が有力です。
日本は古くからポルトガル人との交流も盛んで、南蛮渡来のものが数多く残されています。
実はバッテラ意外にも多くのものがポルトガル語だったりするんですよね!
バッテラ以外にもあるポルトガル語由来の言葉
ここからはバッテラ以外にもあるポルトガル語由来の言葉についてご紹介します。
タバコ
タバコはナス科の植物で南アメリカが原産。
アメリカ大陸に進出したポルトガル人は、この植物をタバコと呼びました。
この呼び名が世界中に広まり、タバコという呼称が世界中で用いられるようになりました。
日本には南蛮貿易を通して伝わり、戦国時代末期から江戸時代初期にあたる1596年~1615年頃にタバコの栽培がされるようになったとされています。
金平糖
金平糖は、ポルトガルでお菓子を意味するコンフェイトスという言葉が由来とされています。
1569年にポルトガルの宣教師が織田信長に献上した際、そのあまりの美味しさに感動したといわれています。
天ぷら
和食の代表にあげられる天ぷらも、その由来はポルトガル語にあります。
天ぷらは室町時代に日本に渡来した南蛮料理の1つで、当時はポルトガル語で調理を意味するテンペロという名前で呼ばれていました。
この言葉が転訛したことで、天ぷらという名前が定着しました。
キャラメル
キャラメルは「砂糖を焼いて褐色にしたもの」を指すポルトガル語、カラメロが語源だとされています。
英語ではなかったんですね。
まとめ
鯖の押し寿司のことをバッテラと呼ぶのはすっかり定番となっていますが、かつてはコハダの成魚であるコノシロが使われていました。
コノシロの押し寿司ではなく、鯖の押し寿司のほうが今では一般的なのは、コノシロの漁獲量が減ったことで、鯖が代用されたのが始まりなのだとか。
鯖寿司をバッテラと呼ぶこともあると思いますが、実は別物。
鯖寿司はバッテラと違い押し寿司ではなく、巻き簾で形を整える寿司となっています。
切り口もバッテラのように四角い角は無く、全体的に丸みを帯びたフォルムになっています。