曲や話の「さわり」の意味が今と昔で大きく違う!?それってどういうこと?

曲や話の「さわり」というと、「最初の部分」という意味で使われますよね。
しかし、それは今の話であり、昔は「さわり」といえば「最も重要な部分」という意味で使われていました。

そこでここでは、「さわり」の現代の意味と旧来の意味とその由来について見ていきましょう。

旧来の「さわり」とは

 

まずは旧来の「さわり」の意味について見ていきましょう。

「さわり」の意味

「さわり」に関しては、漢字を交えた「触り」を辞書で引くと、単純に「触ること・触れること」などを意味とされています。
いわゆる「手触り」「舌触り」「肌触り」のことですね。

これらの「触り」に関しては、人当たりについて表現する際に用いられることもある言葉です。

ただし、ひらがな表記の「さわり」となると意味合いに変化が生じます。
これらの「さわり」は、もともと最大の聞かせどころや聞きどころとされる箇所を指す言葉という意味で用いられます。

それが転じて物語などで最も感動する見どころなどを指すようになりました。

由来は浄瑠璃から

この「さわり」という言葉は、江戸時代に流行った浄瑠璃の用語から来ているとされています。

竹本義太夫という人物が創始した浄瑠璃の流派の1つ「義太夫節」で用いられていた言葉とされています。
義太夫節では「さわり」を最も重要な「聞かせどころ・聞きどころ」という意味で使っています。
そこから普及して、浄瑠璃以外の分野でも用いられるようになりました。

様々な「さわり」

 

もともとは義太夫節で使われていた「さわり」は、さまざまな意味合いで使われるようになりました。
文芸や演芸の中で用いられる「さわり」が、旧来の意味ではどこ部分を指していたのか解説します。

歌の「さわり」

歌など音楽関連で用いられる「さわり」は、聞かせどころが聞きどころという意味です。
そのため、曲のサビ部分に当たりまます。

つまり、その曲で一番盛り上がるところを指しているわけです。

話の「さわり」

話で用いらえる「さわり」に関しては、話の要点を指します。
要約という意味で用いられる他、最も核心を得ている重要な部分を指して「さわり」と表現することもあります。

物語の「さわり」

物語で用いられる「さわり」は、クライマックスやオチを指します。
例えば推理ものの場合、犯人がだれなのか、動機やトリックについて説明することを「さわり」と表現します。
ネタバレと同じ意味合いでも使用されてきました。

現在の用いられ方は異なる?!

 

「さわり」は、もともと「最も重要な部分や要点を指して使われる言葉です。
しかし、近年はむしろ意味に変化が生じてきました。

現在では、最初の部分という意味で用いられることが多いです。

文化庁による国語に関する世論調査

平成28年度に行われた文化庁による「国語に関する世論調査」では、「さわり」に関して、以下のような結果が出ました。

・話などの要点のこと:36.1%
・話などの最初の部分のこと:53.3%

それ以前に行われた平成19年度と平成15年度の調査においても、最初の部分のことという認識で使っている方が半数以上を占めています。
つまり、現代ではむしろ「始まりの冒頭部分」を指して用いられることが多いという結果となっているわけです。

これだけ普及しているとなると、誤用とは言い切れません。
すでに過半数以上が「出だし」という意味で理解しているため、新しい意味として定着しているといえます。

出だしを指すようになったのはなぜ?

では、なぜ「出だし」を指して「さわり」と表現するようになったのでしょうか?

本来は要点などを意味する「さわり」ですが、時代の変化とともに一部分に限定する文脈で使われることが多くなりました。
特に「さわりだけ」や「ほんのさわりで」と表現するようになったことが背景にあるといえます。
そこから「さわり」が「出だし」を指すようになったわけです。

また、漢字で「触る」という響きが、物事に軽く触れることや表だけに触れるというような意味で捉えられやすいことも原因と考えられています。
これら、「ちょっとだけ触れる」というニュアンスから、冒頭部分を指すと連想されるようになったのかもしれません。

まとめ

「さわり」は多くの人が解釈しているように「最初の部分」という意味で使っても間違いとはいい切れません。

旧来の意味は「要点」です。
もともと「さわり」は浄瑠璃で用いられていた言葉ですが、転じて曲や話、物語などでも用いられるようになったとされます。
そして、「ほんのさわりで」といった表現が生まれたことで、本来の意味とは違った意味で使われるようになりました。

しかし、現在では半数以上の人が「さわり」を、「冒頭部分」という意味で認識しているという結果も出ていますので、誤用とは言い切れなくなってきている意味といってもいいのかもしれません。

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