人の世のはかなさを意味する「邯鄲の夢」、その由来にはどんな物語が?

「邯鄲の夢」という言葉をご存知でしょうか?

この言葉は、人の世のはかなさを表した言葉です。
「諸行無常」と同じような意味合いで使われることが多いですが、この言葉の由来には、不思議な物語があったのです。

「邯鄲の夢」とはどんな夢のことなのか? そしてどんな意味があるのかを解説していきます!

「邯鄲の夢」とは

まずはじめに「邯鄲(かんたん)の夢」の意味について見ていきましょう。

「邯鄲の夢」の意味

「邯鄲の夢」は人の世は儚きものというような意味の言葉です。
万物の繁栄は長くはなく、むしろ短く儚いものであるということを表現しています。

この世界は繁栄や衰退を繰り返していますが、全ては束の間の出来事で、もろいものだということを指す言葉です。

「邯鄲」は街の名前

「邯鄲の夢」の「邯鄲」とは、中国の河北省南部に位置する地級市である「邯鄲市(かんたんし)」のことです。
ここは、かつて中国にあった「趙(ちょう)」という国の都だった場所です。

この地に由来する言葉として、他にも「邯鄲の歩み」という言葉があります。
「邯鄲の歩み」は、むやみに他人のまねをしても自分本来のものも忘れてしまい、どちらも失ってしまうという意味の言葉です。
昔、燕(えん)と呼ばれた国の青年が邯鄲に歩き方を習いにいったが習得できず、自分の出身地の歩き方も忘れてしまい、這って帰ったという故事が由来となっています。

「邯鄲の夢」の由来

「邯鄲の夢」という言葉には、どのような由来があるかを見ていきましょう。

「邯鄲の夢」の元となった故事

「邯鄲の夢」の由来は、中国の作家「沈既済(しんきさい)」が書いた伝奇物語「枕中記(ちんちゅうき)」にあります。

「枕中記」の主人公は、唐の貧しい若者「盧生(ろせい)」。
彼は旅の最中に邯鄲に立ち寄り、とある道士に「栄華が思う通りになるという枕」を借り、一眠りします。
彼はその間、紆余曲折をしながら出世し、50年余りの富貴を極める夢を見ます。

しかし、それは宿の主が炊いていた栗の粥がまだ出来上がらないほど、ごくわずかな時間に起きた体験だったというエピソードです。

別の言い方をされる事もある

「邯鄲の夢」は、「一炊(いっすい)の夢」「邯鄲夢の枕(まくら)」「盧生の夢」というような言い方をされる場合もあります。
いずれも由来は同じで、「枕中記」から来ています。

「一炊の夢」の「一炊」は、粟を炊く時間を意味します。
長い長い時間と思われた夢が粟を炊く時間程度のものだったという事から生まれました。

「邯鄲の夢」から生まれた言葉「邯鄲師」

「邯鄲の夢」から生まれた言葉に、「邯鄲師(かんたんし)」というものがあります。
こちらはどのような意味なのでしょうか?

「邯鄲師」とは

「邯鄲の夢」のエピソードを由来とする「邯鄲」という言葉。
これは昔、宿泊して目覚めたら就寝中に盗難の被害にあっていた状況を指す言葉として使われていました。

このことから、宿泊施設で宿泊客が寝ている間に盗みを働く泥棒のことを「邯鄲師」と呼ぶようになったのです。

「邯鄲の夢」の類義語

この「邯鄲の夢」には、同じような意味合いで用いられる言葉がありますので見てみましょう。

有為転変

「有為転変(ういてんぺん)」は、全てのものは時代と共に変化し、止まらないという様子を表す言葉です。
人の世は移り変わり、同じ状態ではないことを表現しています。

諸行無常

古典文学の「平家物語」の冒頭文に出てくる「諸行無常」は、この世の万物は常に変化しており、少しもとどまるものはないことを意味します。
この言葉は、人生の無常を解く仏教の根本的な考えとして知られています。

人間五十年

「人間五十年」は、「にんげんごじゅうねん」ではなく、「じんかんごじゅうねん」と読みます。
こちらは語りを伴う曲舞の一種である「幸若舞」の演目のひとつである「敦盛(あつもり)」の一節を由来とした、この世のはかなさを表した言葉です。

「敦盛」の中には「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」という一節があります。
これは「人の世の50年の歳月は下天の一日にしかあたらない、夢幻のようなものだという意味です。
ちなみに「下天」というのは、仏教界における天界の一番下にあるそうとされ、そこでの一日は人間界での50年に相当するとされます。

この「敦盛」の一節を、織田信長が特に好んでいたとされ、織田信長にまつわる時代劇や創作物の多くに出てくる言葉となっています。

まとめ

「邯鄲の夢」には、「人の世は儚い」という意味があります。
中国の伝奇小説の一節が由来となっており、人の世はうたた寝をしている間の短い時間ぐらいはかない、ということをあらわしています。

類義語には「有為転変」や「諸行無常」、織田信長が好んだとする敦盛という幸若舞の一節「人間五十年」などがあります。

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