置き去りにされることを意味する「おいてけぼり」。この言葉の由来はちょっと怖い物語から

置き去りにされることを表現する際に使われる「おいてけぼり」。
この言葉の由来は、江戸時代から伝わる『ある怪談』にあるのだとか。

ここでは、この「おいてけぼり」という言葉について、その意味はもちろん由来についても見ていきます。

「おいてけぼり」とは

まずは「おいてけぼり」の意味やその用い方について見ていきましょう。

「おいてけぼり」の意味

「おいてけぼり」とは、置き去りにすることを指す言葉です。
他の者を残したまま、その場を去ってしまうことを言います。
また、自分が置き去りにされた際にも用いられる表現となっています。

「おいてけぼり」の用い方・例文

「おいてけぼり」は、置き去りにする・されることを指して使われることが多々あります。
これは置き去りにしたのがわざとの場合でも、不可抗力な場合でも使用できます。

『洋服を選んでいたら、いつの間にか一緒に来ていた友達の姿が見えなくなっていた。どうやら置いてけぼりにされたようだ。』という場合は、自分が洋服を選ぶのに夢中になっているのに対して、飽きてしまったか用事ができたかは不明ですが、友達が自分に声をかけずにいなくなってしまった様子をあらわしています。
当人が気付いていないうちに置いて行かれていた、というのがポイントですね。

「おいてけぼり」の由来

ここからは、「おいてけぼり」の由来とされる怪談について見ていきましょう。

怪談「置いてけ堀」から

「おいてけぼり」は「置いてけ堀」という怪談から来ているとされます。

「置いてけ堀」というのは、江戸本所にあった堀の名前です。
この場所は、江戸時代から伝わる本所七不思議のひとつとしても知られており、落語にもなっています。

「置いてけ堀」の話

ある日、釣り人が本所にある池で釣りを楽しんでいました。
魚籠いっぱいになるほど釣り、あたりも暗くなってきたので、腰を上げて帰ろうとしたその時です。

なんと水中から「置いてけ置いてけ」という声が聞こえたのです。
この声を聞いた釣り人は怖くなり、慌てて逃げてその場を去りました。

この釣り人が逃げ帰り、家に着いてから釣果を入れていた魚籠を見るとまたも驚く事態が。
籠いっぱいになるまで釣ったはずの魚が1匹もいなかったのです。

この釣り人の話が広まると、その池は「置いてけ堀」と呼ばれるようになったのです。

「おいけてぼり」の由来となった本所七不思議とは

ここからは「おいてけぼり」の由来にもなった「置いてけ堀」以外の本所七不思議について見ていきましょう。

本所とはどこ?

本所七不思議の「本所」とは、現在の東京都墨田区南部にあった町のことです。
浅草や深川同様、江戸の下町を代表する地域の一つです。
水路が発達していたことから、釣りの名所にもなっており、「置いてけ堀」も本所で釣りがよく行われていたからこそ生まれた物語なのかもしれません。

1.送り提灯

「送り提灯」は提灯にまつわる七不思議です。
提灯を持たずに夜道を歩いていると目の前に不気味な明かりが現れるのですが、これらは追いかけると消えてしまうそうです。
その結果、誰もその明かりに追いつけないのだとか。

2.送り拍子木

「送り拍子木」は拍子木にまつわる七不思議となります。
「火の用心」と唱えながら拍子木を打って夜回りすると、打ち終えたはずの拍子木の音が繰り返し聞こえるという七不思議です。
その拍子木の音がした方を振り向いても誰もいないのだとか。

3.燈無蕎麦

「燈無蕎麦」は蕎麦屋にまつわる七不思議です。
これは夜に明かりのない蕎麦屋の行灯に迂闊に火を灯すと、必ず不幸に見舞われるという七不思議とされています。
やがてこの店に立ち寄っただけで不幸に見舞われるという噂が広まったのだとか。

4.足洗邸

「足洗邸」は味野岌之助という旗本屋敷にまつわる七不思議です。
その屋敷では毎晩のように天井裏から剛毛に覆われた巨大な足が降りてきて「足を洗え」と言ってくるのだとか。
足を洗ってやると天井裏に消えるのですが、洗わないでいると足の主が怒って家中の天井を踏み抜いて暴れるそうな。

5.片葉の葦

「片葉の葦」はお駒という女性にまつわる七不思議です。
その昔、お駒は近所に住む留蔵という男性に好意を寄せられていたそうです。

しかし、お駒はその好意を受け入れることはありませんでした。
そんな中、遂に爆発した留蔵は外出したお駒を襲ってしまいます。
その節、片手片足を切り落として殺した挙げ句、隅田川の駒止橋付近の堀に投げ込んでしまったのだとか。

それ以降、駒止橋付近の堀に生い茂る葦はなぜか片方だけの葉しか付けなくなったとされています。

6.落葉なき椎

「落葉なき椎」は本所にあった平戸新田藩松浦家の屋敷にまつわる七不思議です。

その昔、松浦家の屋敷には見事な椎の銘木がありました。
しかし、なぜかこの木は1枚も葉を落としたことがなかったそうな。
その後、松浦家は次第に気味が悪くなり屋敷を使わなくなってしまったのだとか。

7.狸囃子

「狸囃子」は江戸時代の本所にまつわる七不思議です。
囃子の音がどこから聞こえてくるのかと音の方向へ向かっても、音は逃げるように遠ざかっていき音の主もわからないのだとか。
その後、音を追っているうちに夜が明けると見たこともない場所にいることに気づくそうです。

8.津軽の太鼓

「津軽の太鼓」は本所にあった弘前藩津軽越中守の屋敷にまつわる七不思議です。
当時、火の見櫓で火災を知らせるときは板木を鳴らしていました。
しかし、その屋敷の櫓には板木の代わりに太鼓がぶら下がっていたのだとか。

火事の際にはその太鼓を鳴らしたとされています。
しかし、なぜこの屋敷の櫓だけが太鼓だったのかは誰も知らないそうです。

まとめ

「おいてけぼり」は置き去りにすることを言った表現です。
また、自分自身が置き去りにされることなども指す表現です。
これらは本所七不思議という話から生まれた言葉とされています。

それら本所七不思議の1つ「置いてけ堀」が語源だそうです。
本所七不思議は他にもたくさんあるので、ぜひ日本を代表とする奇談・怪談として覚えておくのはいかがでしょうか?

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