「こけんにかかわる」は、本人の体面に関わることをあらわす言葉です。
本人の品位やプライドに関して傷付きそうなときに用いられることが多いです。
漢字での表記は「沽券に関わる」となります。
では、この「沽券」とは何を指す言葉なのか、その語源なども含めてみていきましょう。
目次
「こけんにかかわる」とは
まずは「こけんにかかわる」という言葉について、その意味や用い方を見ていきましょう。
「こけんにかかわる」の意味
「こけんにかかわる」とは、本人の体面にさしつかえることを意味します。
本人の品位やプライドに関わる事態に対して用いられます。
本人が大切にしているものや守るべきことといった、自分の価値を定める事柄が失われそうな際に使います。
「こけんにかかわる」の用い方・例文
「こけんにかかわる」は、自分の品位やプライドの損失に関わる場面で使います。
自分が大切にしていることが傷つけられるような場面で使用します。
「彼に頭を下げるなんて、沽券に関わる」という表現がされたならそれは、その人物に頭を下げることで自分が屈辱を感じる、頭を下げることがプライドに差し支えるような相手だということを表現しています。
「こけんにかかわる」の由来
では「こけんにかかわる」とはどこから来た言葉なのでしょうか?
ここでは漢字表記である「沽券」について見ていきましょう。
「沽券」は何かの券?
「こけんにかかわる」は漢字表記で「沽券に関わる」と書きます。
この「沽券」とは、土地や建物などの売り渡し証文のことです。
「売券」や「沽却状(こきゃくじょう)」などとも呼ばれていました。
意味合いに変化が生じた「沽券」
江戸時代、江戸の街で町人と正式に認められていたのは町屋敷を構えていた人物だけでした。
そのため、江戸の街の「沽券」を持っているというのは町人としてのステータスの一種となっていました。
ステータスとして「沽券」が価値を得るようになったので、「沽券」は誇りや品位を指す言葉として使用されるようになりました。
「沽券に関わる」という言葉は、このようにして「沽券」の意味合いに変化が生じたことで生まれたのです。
「こけんにかかわる」の類義語
「こけんにかかわる」と同じような意味を持つ類義語は多々あります。
ここでは、それらの中でも「面目が立たない」「立つ瀬がない」「名折れ」といった言葉について見ていきましょう。
面目が立たない
「面目が立たない」とは、体面が保たれないことを意味する言葉です。
本人の顔が立たない状態にあることを指します。
ここで言う「面目」とは、世間に合わせる顔のことです。
つまり、周囲からどう見られているのかを指しています。
スポーツの世界で例えるならば、勝てばスターになれますが、負ければ応援してくれた人に「面目が立たない」状況となるわけです。
立つ瀬がない
「立つ瀬がない」とは、世間に対して体面が保てないことを言います。
自分の立場を失って、世間に顔向けできない事態に陥ることを指します。
特に本人が名誉を傷つけられるような場面に対して用います。
この言葉は、「瀬」という漢字に成り立ちがあります。
「瀬」とは、川の中でも流れが緩やかで水が浅い場所のことです。
つまり「立つ瀬」とは川の中でも立つことのできる場所のことを言います。
これが転じて、立場についてもあらわすようになったとされています。
名折れ
「名折れ」とは、今まで築いてきた名誉が傷つけられることを言います。
自分の誇りなどが打ち砕かれることを指した表現です。
古くは「武士の名折れ」などのような言葉として使用されました。
現代でも、名前を汚されることを意味します。
まとめ
「こけんにかかわる」は、自分の品位やプライドに差し支えるものがあることを意味します。
本人にとって価値を決めるものが損なわれるような場面で使います。
特に大切にしてきたものなどが貶されるような場面で用いられます。
江戸時代に用いられていた土地や建物などの売り渡し証文の「沽券」が、商人のステータスとなったことから「品位」や「誇り」を意味する言葉として用いられるようになりました。
そこから、自分の誇りや品位を損なうような事態に対して「こけんにかかわる」と表現されるようになったともされています。