【赤ずきんと健康】井上涼に美大時代の旧友が直撃!ほぼノーカットインタビュー 仕事編【びじゅチューン!】

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2007年に制作した卒業制作『赤ずきんと健康』が、翌年ネット上で大ブレイクし、現在NHK Eテレ『びじゅチューン!』等で活躍中のアーティスト、井上涼さん。そんな井上さんに、金沢美術工芸大学のクラスメイトであり、10年来の友人である、FUNDOライターが独占インタビュー。元クラスメイト相手だからこそ見せる、井上さんの本音や素顔に迫ります。

井上 涼 (いのうえ りょう)
1983年6月10日生まれ 兵庫県小野市出身
2007年 金沢美術工芸大学卒業
卒業以降は、会社勤めの傍ら制作をしていたが、2014年からアーティスト活動に専念。
代表作に『赤ずきんと健康』(2007年)『マチルダ先輩』(2012年)等
現在NHK Eテレ『びじゅチューン!』等で活躍中
井上涼オフィシャルサイト
公式Twitterアカウント

『赤ずきんと健康』ブレイク秘話に迫る

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―本日はよろしくお願いします。今回は、せっかく元同期がインタビューをするので、他のインタビューでは聞けないことが聞けたらいいなというのと、普段通りのラフな感じでいきたいなと思うんですが…
はーい。わかりました。

―…ということで、タメ口でいい?
いいよー(笑)

―卒業した年に動画『赤ずきんと健康』でインターネット上でブレイクしたけど、きっかけはYoutube?
最初は、ニコニコ動画かな。

―ニコ動には自分で投稿したの?
あれは自分じゃなくて、2007年の『baca-ja』(映像コンペ)で佳作になって。入賞すると副賞としてテレビで流れるっていうのがあって…詳しく覚えてないんだけど。それをアップロードした人がいたっていう。

<『赤ずきんと健康』(2007年)オープニングシーンより>
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―それが爆発的に人気になったの?
爆発的にってよりは、じわじわきて、急にバーン!と。1年ぐらいはじわじわしてて急に…。

―じゃあバーンて来た時の心境を…あっ、でも涼ちん(井上さんのあだ名)が仕掛けたわけじゃないのか。
そうそう、ある日大学の後輩から電話かかってきて、『涼ちんニコ動で5位になってるよ!』って言われて、『えっ?』って。その電話で初めて知って。だからその時の心境はあまり覚えてない…(笑)会社勤めもしてて忙しかったしね。

<『赤ずきんと健康』(2007年)の動画はコチラ>

出典:youtube 赤ずきんと健康

―じゃあ、最近でもいいんだけど、『自分こりゃ売れたな。』って思うことある?
売れたなって…(笑)。やっぱり街で声かけられた時かな?電車とかでたまに。

―どういう人が声かけてくるの?
サブカル女子とフェス大好き系の中間くらいの人が(笑)

制作スタンスも、寝場所も…学生時代から変わらないスタイル

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―私、学生の時に涼ちんが『誰も見たことのないものを作りたい』って言ってたのが印象的で…
それ聞いて、『うわ!そんなこと言ってたんだ、恥ずかしっ!』ってなった(笑)。でも、あの頃みんな言ってなかった?私としては、自分だけがそう言ってたというよりは、周りの人に影響されて…という気がする。

―今もそう思ってる?
思ってるけど、その難しさもこの10年くらいすごい実感しているので、そこに到達したら、ラッキーだなって思ってる。(新しいものを作るとき)毎回チャレンジめいた要素は持とうと思っているんだけど、それが“見たことないモノ”に、なったらな…と。運によるところも大きいな、と今は思ってる。

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―見る側の人にもよるもんね。
そうそう。自分で『これ絶対新しい』って思ったものでも、必ずどこかにあったりするし。そんなに簡単なことではないなと思います。

―『YADOKARI』とか『マチルダ先輩』って、OLの日常や心情を題材にしてるけど、“誰も見たことのないもの”を探しながら、そういいった“日常”の感覚を持つ為に何かしてることってある?
ありがちだけど、人間観察的なことはよくしているのかも。電車にも乗るし。喫茶店の横の人が何喋ってるかつい聞いてしまったりとか。

<OLの日常をテーマにした作品 『YADOKARI』(2011年)/『マチルダ先輩』(2012年)>

出典:youtube YADOKARI/youtube マチルダ先輩

―あっ、それ(喫茶店の横の人が喋ってた面白いこと)よくツイッターで言ってるよね。
そうそう。最近いけなくなっちゃったけど、うちの近所の喫茶店にすごい面白いおばちゃんとかいっぱいいて。

―そこで1番衝撃的だったエピソードは?
急に言われると…(笑)。そこ、毎朝の様に行ってたんだけど、そこに5・6人の常連の人がいて、その人たちがホンっとに毎日同じやり取りをしてて。例えばお店の人がおばちゃんに『綺麗だから、おまけしとくよ』ってちょっかい掛けて、(そのおばちゃんが)『もうやだ~』みたいな下りを毎日やってて。微笑ましいのと、ちょっと狂ってるなって(笑)。

―あはは(笑)何かわかる気がする。狂ってるって(笑)
微笑まし~く狂ってるの(笑)でも最近いけなくなっちゃってちょっと残念。

<喫茶店であった滑稽な風景のツイート>


出典:twitter
―忙しくて行けなくなっちゃったの?
そうそう、あとは家がちょっと遠くなっちゃって。

―学生の時から忙しいといろんなとこで寝てたよね?
そうそう。学生の時と同じ。そこの(作業場)ソファーとかで。

〈井上さんが寝ているという作業場のソファ〉
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―学生の時は、段ボールとかしいて床でも寝てたよね。
そう。今も一緒だよね。どこでも寝ちゃう。会社勤めもしたけどまわりまわって結局学生の時とおんなじ(スタイル)に戻っちゃった感じ。まあ会社勤めの時もどこでも寝てたんだけど、会社だとやっぱり怒られちゃうから(笑)

『“中毒になるくらい観るがいいわ!”とか思ってるわけではないので(笑)』井上作品とびじゅチューン!誕生秘話

―他のインタビューとかで不思議系って書かれてることが多いけど、そのことに対してどう思う?
ええ~(笑)別に『私は不思議系ではない!』って(否定的に)思うわけでもないし。まあ、数あるエンタメコンテンツの中で分類するとしたら、(自分の作品は)不思議系っていわれるのかなって(笑)、それぐらいに思ってます。

―あと、作品に中毒性があるってよく言われてるよね。
あ~そうそうそう。言われる。

―それは計算外の結果なの?それとも、ちょっと自分から仕掛けてる感じ?
う~ん。歌いたくなるような歌になればいいなと思って作ってるんですけど、びじゅチューン!は特に。番組としてもそこを気にしてたりもするから。びじゅチューン!が始まったのも、私の歌が頭に残って覚えやすいっていうことをプロデューサーさんが発見して、自分がキャスティングされたっていうのがあって。でも『中毒になるくらい観るがいいわ!』とか思ってるわけではないので(笑)

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―あはは(笑)びじゅチューン!といえば、毎回ひとつの美術作品を題材に取り上げてるけど、取り上げた作品の中で、自分が影響受けたかもな…っていうものはあったりする?
ああ、大いにありますね。今ちょうど水墨画の絵をモチーフにした映像を作ってるんですけど、水墨画に影響受けたり。あとは、画家について調べたりすると、画家がどういう生き様だったのかとか書いてあって。今ルノワールの資料読んでて、ルノワールってふわふわした女の人の絵が有名だけど、そこに辿り着くまでに、ちょっと画風がくっきりした時期とまたふわふわに戻った時期と、中には絵の半分はくっきり描いて、残り半分はふわふわっと描いた絵とかあって(笑)

―あはは(笑)
何が一番いいのかを探しに探したっていう人が結構多いから、精神的な部分でよく影響をうける。

―作風っていうよりは、精神的な影響?
うん、アーティストとしての生き方とか。やっぱり色々試してたんだなっていうところとか。『まあルノワールも頑張ってたんだし頑張ろう!』とか(笑)

『毎回1番新しいものが1番思い入れが深いかも…』井上涼の一番好きな作品とは

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―びじゅチューン!も含めて自分の作品で、一番好きな作品とか思い入れのある作品は?
難しいな(笑)どの作品も思い入れには事欠かなくて…。ファンの人たちの『次もこういうの欲しいな』とか『次は違うのみたいな』とかいう声をツイッターなんかで見ることがあるんだけど…それを踏まえつつ、変化球でこうしてみよう!とか今度はホラー調の曲にしてみたらみんな驚くかな…とか今までやってみたことがなかったことをやってみた作品が、思い入れ深いかな…。

―じゃあ、どれってことではなく…。
…あ、どれって話が聞きたいんだよね?(笑)

―うん。でも毎回そういうことを考えて作っているなら、毎回新しい作品が一番思い入れが強い感じ?
そうそう!毎回1番新しいものが1番思い入れが深いっていうのが近いかも!

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―私は…『YADOKARI』も好きだけど…びじゅチューン!で好きなのは『レーサーはゴーギャン』が好き。
え~私も好き~

―最後の、あの花の場面カッコいいね!
そうでしょ~(笑)カッコいいとおもうやろな~と思って。

ゴーギャンも凄い面白くって。ゴーギャンにはダニエル君っていう友達がいて、ゴーギャンはタヒチに住んでて、ダニエル君はフランスに住んでて、手紙のやり取りをずっとしてるんだけど。その合間に、『この花とこの花の苗を送ってくれ、こっちで植えるから』ってやりとりがあって、その花があのアニメの最後に出てくるやつ。

<『レーサーはゴーギャン』(2014年)ラストシーン>
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―へーー。なんかカッコいいね!
カッコいいやろ?(笑)なんかそういう引用の仕方オシャレやろな~って思ってやってみたかったの。

―気づかないくらいの要素とかも作品の中に結構散りばめられてるよね。
そうそう。やっぱり画家のこととか調べると、バックストーリみたいなものがめちゃくちゃあるから、そういう要素もいれないと、もったいないって思う!調べたし、使いたくなるし、知ってほしくなって。

―(そういう要素って)今びじゅチューン!観てる子供が、将来美術に興味持ってさ、勉強した時に『あっ!』ってなったりしそうじゃない?
そうそう。そうなるといいなっていうのが番組の狙いでもあるんだけど。1回きっと忘れちゃうけどなんかのテスト勉強とかしてる時に『…風神雷神図屏風デート!』とかって頭に戻ってきたりするとか、そういうことがあるといいねってことから始まってるところもあるので。

<『風神雷神図屏風デート』(2013年)のワンシーン>
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美術のとっつきにくさみたいなものと、好奇心の懸け橋に

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―びじゅチューン!をきっかけに美術館行く子供増えたんじゃないかな?
そういう反応もありますね。今のお母さんって、子供に何が向いているのか早めに見極めなければって思ってるらしくて。だから美術館にも『できれば連れていきたい!』って思ってて。『びじゅチューン!を見て子供が率先して美術館に行きたいって言いだしたので嬉しいです!』みたいな意見を聞くと、よかったなって思う。

―うん、それってすごいことだよね。だって、美大とか目指してた私たちでも、高校生くらいの時にお堅い美術の番組見るのってちょっと鬱陶しかったりしたし。
そうそうそうそう!大学の時でさえ授業寝てたり

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―今考えると勿体ないっておもうけど(笑)
まあしょうがないなって思うんやけど、でも知っておいて無駄なことは全然なかったなっというか、知っときゃよかったなって思うことはすごいよくあるよね。

―でも、びじゅチューン!はそういう美術の堅苦しさとか、とっつきにくさ(と子供の)の間に入ってるよね。クッション的な存在というか。
そうね、そういう存在になれたらと…。でも自分は、美術を大まかに歌とアニメにしてるけど、ちゃんと勉強すると“真実”というか、“画家としてはこういいたかった”みたいな、“本当の価値”みたいなものがあるから、そこに辿り着く為の入口みたいになるといいなって思っています。

ブレイク秘話から『びじゅチューン!』まで、仕事について大いに盛り上がった前半戦。後半では、井上涼さんのプライベートに迫ります。乞うご期待!!


出典:youtube 赤ずきんと健康/youtube YADOKARI/youtube マチルダ先輩/twitter


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