「サイガ」という動物をご存知ですか?見た目がとてもユニークな、ブサカワ動物の代表なんですが、あまり知名度は高くありません。
日本の動物園にもいないですし、大草原に生息しているので、日本ではほとんど知られていないと言ってもいいかもしれませんね。そんなサイガは残念なことに、今絶滅の危機に直面しています。
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ユニークな鼻を持つ動物「サイガ」
まるでゾウの鼻を途中で切り取ったような、柔らかそうな鼻の形が特徴的なブサカワ動物、サイガ。ウシ科の仲間でヤギと同じくらいの大きさがあり、そのコミカルな見た目がなんとも言えずほんわかとした印象を醸し出しています。
見てください、この可愛らしい顔!つぶらな瞳もクリンとして大きく、ぼーっと見ていたら自然と癒やされませんか?
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こんな癒やし系の見た目を持つサイガですが、実は走ったらすごいんです。地上でもっとも足の速い動物の一つと言われ、生物の速度ランキングでなんと23位にランクイン!
23位ってビミョー、と思うかもしれませんが、あのチーターでさえ10位、21位のサーバルと22位のオグロヌー、そしてサイガはみんな走る速度が時速80Kmなので、21位と言ってしまってもいい順位です。ランクの上位は鳥や魚が占めています。
鼻に驚きの機能を持っている
出典:YouTube
別名オオハナカモシカ
そんなサイガの別名は「オオハナカモシカ」といいます。「オオハナレイヨウ」という別名もあります。確かに体の大きさに対して鼻が大きすぎて、ちょっとバランスが悪いようにも見えますね。体の見た目はシカやウシに似ていますが、それにゾウの鼻の根本をくっつけたようにも見えます。
そしてそんな大きな鼻を地面に近づけて走るので、専門家の間では「大草原を走り回る掃除機」というジョークを混じえたニックネームがつけられていたこともあるそうです。
鼻の中で空気を浄化
ではなぜサイガの鼻がこんなに大きいかと言うと、それにはちゃんとした理由があるんです。
サイガの鼻腔の中には、鼻腔嚢というフィルターのようなものがついていて、吸い込んだ空気を肺の中に吸い込む前に浄化したり、温めたり湿らせたりすることができるのだそうです。大草原に大群で棲む習性を持つサイガが、一斉に乾燥したステップ(草原)を移動すると、大量の砂嵐が巻き上がります。その中で上手に呼吸をするために、こんな機能が備わっていると考えられています。
神様は伊達や酔狂でこんな珍しい鼻をサイガにつけたわけではないんですね。
オスの発情期には大きくなる
サイガの鼻はフィルターの役目をするだけではなく、別の場面でも活用されています。それはセックスアピールです。サイガのオスはメスの気を惹こうとするとき、鼻から大きな唸り声を出し、鼻を膨らませて体の大きさを誇示するのだといいます。
それでもお目当てのメスを巡った争いに決着がつかないときは長い角で戦い、勝利を収めたオスはたくさんのメスとハーレムを作るのだとか。その数なんと最高で50頭とも言われ、さらにメスは双子を生むことが多いそうです。見るからに草食動物といった見た目からは想像もつかない習性があるんですね。
絶滅危惧種のサイガ
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ここ数年で問題となっているのが、サイガがどんどん地球上から姿を消していることです。サイガは絶滅危惧種として、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでも近絶滅種として指定され、最も絶滅の恐れが高いと言われています。
かつてはいたるところに生息
ヨーロッパのブリテン諸島から北米のユーコンまで、かつてサイガはいろいろな場所に生息していました。中央アジア圏では一番多い草食動物だった時代もあったほどです。
ところがその数はどんどん減り、現在ではモンゴル南西部とカザフスタン、ロシア南部でしかその姿を見ることはできません。生息域は1950年から2012年までに、8割が減少しています。
25年で95%減少
サイガは過去25年ほどの間に個体数の95%がいなくなり、このままでは滅亡してしまうという危機的状況の中にいます。その大きな理由が人間による乱獲です。オスが持っている角を目的に、多くのサイガが密猟者の手によって殺されてしまいました。しかも角が目当てなのでオスばかりが大量に殺され、現在残っているサイガの95%はメスであるという状態です。
これだけバランスが崩れると、今後の繁殖にも大きすぎる影響を与えることは誰の目から見ても明らかです。
なぜ角を乱獲するのか
サイガの角は解熱作用があると信じられ、中国では漢方薬の原料として高値で取り引きされています。また悪霊を退散させると信じている人もいます。もちろん科学的に薬としての効果があるかどうかは証明されていません。また角だけではなく、皮を利用したり肉を食べる人たちもいます。
謎の大量死で個体数半減
サイガの減少に追い打ちを掛けたのが、2015年に発生したサイガの大量死です。のちにその原因はパスツレラ・ムルトシダ血清型Bという細菌に感染したための、出血性敗血症だったことがわかりましたが、当時は謎の大量死として問題となりました。
パスツレラ菌は生まれたときからサイガの鼻の中に存在している常在菌とみられていますが、何かの原因(おそらく例年にない高温多湿の気候)によって異常増殖が起こり、サイガがその菌に抵抗できなかったのでは、という結論に至りました。
このときの大量死は20万頭にも及び、メスのサイガと子どものサイガが極端に減ってしまったのです。
サイガの未来は厳しい
出典:YouTube
このような事情から、サイガはもうすぐ地球上からいなくなってしまうのではないかと、関係者の間では心配されています。
保護活動の成果もあって、少しずつ個体数は増えているとはいえ、密猟者がいなくなったわけではありません。モンゴルに生息する亜種のモンゴルサイガにも、同じような伝染病が出たら危険だと専門家は言います。
こんな可愛らしい動物がいなくならないように、私たち人間にできることはないのでしょうか?
まとめ
WWFモンゴルでは、モンゴルサイガの保護活動を行っていて、1998年に3,000頭に満たなかったサイガが、2011年には10,000頭を超えています。でもその途中では、一時は増えたサイガが厳しい冬の寒波や積雪、食糧不足などによって80%も死亡したこともあったそうです。
日本もこの活動に寄付をするなど、応援をしているということですので、これまであまり馴染みのなかった動物のサイガですが、見守っていけたらいいなと思います。
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出典:YouTube(IFAW Russia - Saiga antelopes are rare creatures) / YouTube(Saigas are Straight Out of Star Wars)