腕の悪い医師のことをなぜ「ヤブ医者」と呼ぶの?その語源を解説

診断能力が低かったり、腕が悪いといった下手な医者のことを指して「ヤブ医者」といいますが、「ヤブ」とは何を指すのでしょうか?

漢字表記では「藪医者」と書くので、竹藪など木の生い茂っているような場所に居を構えていた医者でもいたのでしょうか?

そんなわけないと思いながらも調べていくうちに「ヤブ」にはいくつかの語源とされる説があることがわかりましたので、その中でも3つの説をご紹介します。

ヤブ医者の語源①:地名由来説

ヤブ医者の語源は名医の一族を排出した土地名から来ているという説があります。

語源となったとされる兵庫県の「養父」

江戸時代、現在の兵庫県にあたる但馬国(たじまのくに)養父(やぶ)には、将軍とその家族の診療を担当する「奥医師」を任される名医の一族が住んでいました。

そのため、養父には医者を目指す人が弟子入りを志願するために訪れ、養父に住んだといいます。結果、養父からは多くの腕前の立つ医者が巣立っていったといいます。

この事から「養父の医者」とは名医を指す言葉として用いられていたそうです。

名医を指す言葉から蔑称に変わる

「養父の医者」は名医の証でしたが、次第にその名声を利用しようと「養父の医者の弟子」を自称する、腕の悪い医師や悪徳な医師も出てきました。

腕の悪い「養父の医者」もしくはその弟子を騙る人物が増えていったことで次第に「養父の医者」の名声は下がっていきました。

本来「養父の医者」は誉れ高い肩書でしたが、これらの悪辣な人物たちにより蔑称となってしまい、「藪の医者」に転じ、現在の「ヤブ医者」もしくは「藪医者」になったとされています。

ヤブ医者の語源②:霊能者語源説

「ヤブ」は、まじないなどを生業とする霊能力者を指す言葉から来たという説もあります。

ヤブは「藪」ではなく「野巫(やぶ)」のこと

かつて日本の田舎には、占いなどを職業とする「野巫(やぶ)」と呼ばれる霊能力者がいました。また、野巫たちは呪術やまじないを用いて、医療行為も行っていました。

この野巫が転じて田舎に住む医者のことを「ヤブ医者」と呼ぶようになり、漢字表記では「藪医者」になったとされています。

2つめの語源はまじないで医療行為を行う「野巫」から来たという説です。

ヤブ医者の語源③:ことわざ由来説

しなくていいことをして自体を悪化させてしまうことをあらわすことわざ「藪をつついて蛇を出す」も「ヤブ医者」の語源のひとつとも考えられています。

無駄な治療を施す腕の悪い医者は、患者にとって正に「藪をつついて」くる危機を増やしてくるかもしれない非常に厄介な存在だ、という理由から付けられたとされています。

実は古い言葉の「ヤブ医者」

江戸時代の名医を輩出した土地がはじまり、という説もある「ヤブ医者」ですが、実はこの言葉は江戸時代以前からも使われている言葉です。

医師の古い呼び方の1つに「薬師(くすし)」という言葉があります。この薬師の腕前が低いことを「藪薬師」と呼称されている例が、鎌倉時代の説話の中に出てきます。

「養父」から将軍家も診察する名医が輩出するよりも400年ほど昔から、腕の絶たない医師を「藪」と呼ばれていたようです。そのため、「養父」が語源というのは民間に伝わるお話の1つに過ぎないようです。

それに対し「野巫」は呪術師という意味の他に「物知らずな修行中の僧」という意味もあることから、一見正しい由来のようにも見えますが、使われることの機会が少ない言葉なので、語源と断定するには弱いといわれています。

まとめ

診察能力が低かったり、手術の腕前が低い医師を意味する「ヤブ医者」、実はこの言葉は古く、鎌倉時代には使われている言葉だそうです。

治療の成功率が低い医師というのはやはり昔から信用度が低かったようで、蔑称も古くから使われていたようです。

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