
「流氷の天使」と呼ばれる海の生物、クリオネ。
小さく透き通った体で羽をひらひらと羽ばたかせながら水の中を漂うよう姿は、まさに天使。
幻想的に泳ぐクリオネの姿は、人々を魅了してやみません。
そんな天使と呼ばれることもあるクリオネですが、実は悪魔のように恐ろしい一面もあるそうです。
そこで今回は、その噂が本当なのかを確かめると共にクリオネの真実について見ていきましょう!!
目次
クリオネとは

「流氷の天使」「氷の妖精」と呼ばれるクリオネの全貌を明らかにします。
クリオネの生息域
クリオネは、海水温度の低い海で見ることができます。
特に広く分布しているのは、主に北極と南極周辺の寒流域で、水面近くから1,000mを超える深さまで生息しています。
クリオネの生態
クリオネの体は、ほとんどの部分が透明です。
泳ぐときにひらひらと動かす1対の羽のような部分は「翼足」といって、左右に広がった翼状の足です。
この翼足を使って、まるで羽ばたいているように優雅に泳ぎます。
世界中に広く分布しているため、地域により大きさに差があります。
北極域のクリオネは7~8cmと大きい一方、イギリス海域では0.3~1cm、オホーツク海のクリオネは0.5~3cmの大きさです。
また、オホーツク海では、冬に出現する「冬クリオネ」、春に出現する「春クリオネ」が存在します。
クリオネの名前の由来
クリオネの正式名称は、「クリオネ・リマキナ」です。
「クリオネ」はギリシア神話に登場する文芸、特に歴史を司る「クレイオー」という女神に由来し、「リマキナ」はラテン語で「ナメクジに似た」という意味があります。
「流氷の天使」という別名の通り、美しい姿をしていますが、ナメクジに似ているといわれたら確かに否定しきれない姿でもありますね。
クリオネの食事が悪魔的というのは本当なの?

神秘的で人々を魅了するクリオネが見せる悪魔のような一面。
それは、あまり見ることができない食事の仕方です。
衝撃的なクリオネの捕食シーン
クリオネの捕食シーンは、普段の姿から想像できないほど衝撃的です。
新江ノ島水族館の公式YouTubeチャンネルが公開した動画があるので、ぜひこちらをご覧ください。
普段とは全く違うクリオネの姿に、少し戸惑ってしまいますね。
クリオネの体の仕組みを解説しながら、この捕食シーンについて説明します。
耳に見えるのは触覚
クリオネの頭部に見える猫耳のような2つの突起ですが、実は触覚なんです。
触覚と触覚の間に口があり、獲物を見つけると、口から「バッカルコーン」という6本の触手を出して獲物をガッチリと捕まえます。
そして、ゆっくりと養分を吸収していくのです。
その愛らしい姿から、クリオネは小さな口で小さなプランクトンなどをパクパクと口に入れるなんて食事をしているのかと思いきや、実際には大きく開けた口からなんと手を出して獲物を捕らえ、相手が力尽きるまでジワジワと養分を吸い取るという食べ方をするのです。
このクリオネの姿は衝撃的で、まるで悪魔のようといわれるのも分かります。
クリオネはなにを食べるの?
クリオネの好物は、フワフワ浮いて生活する「ミジンウキマイマイ」という15mmほどの浮遊性の貝です。
クリオネはミジンウキマイマイを捕食すると、6時間くらいかけてゆっくりと養分を吸収します。
そして、一度食べたら6ヶ月〜1年ほど生きていけるそうです。
クリオネに食事をするイメージがないのはこのせいかもしれませんね。
クリオネの透けている赤いものの正体
クリオネの体で赤く透けている部分は、食道や消化器官です。
体が透明なので、内臓が丸見えになってしまうのです。
クリオネの正体は貝!

天使とも評される美しい姿をしたクリオネですが、実は貝の仲間です。
流氷の天使は巻貝の一種
クリオネが属するのは、軟体動物門腹足綱裸殻翼足類・ハダカカメガイ科。
学術的な日本名「ハダカカメガイ」という貝に属しており、巻貝の仲間です。
生まれてから2週間ほどは貝の殻を持っています。
成長すると貝は退化して完全になくなり、天使のようなクリオネの姿になるのです。
世界最小のクリオネは富山湾で見つかった新種

2017年に、世界で5種目の新種が発見されました。
それはなんと富山湾の水深700m域で、日本海で独自に進化した固有種と考えられています。
しかもこの新種は、体長が最大でも約5mm程度という事から、現在見つかっている中では世界最小のクリオネとされています。
まとめ

クリオネの寿命はとても短く、2年ほどだといわれています。
長くはない一生の間で、私たちを癒し神秘とロマンを感じさせてくれるクリオネは、やはり天使なのかもしれませんね。
捕食姿は見たときは驚きを隠せませんでしたが・・・。