みなさんは「やきとり」と聞いて、どのようなものを思い浮かべますか?
鶏肉を串焼きにしたものを想像することが多いと思いますが、鶏肉以外の肉でも「やきとり」と呼ぶことがあります。
そこでここでは、「やきとり」について見ていきましょう。
目次
「やきとり」は焼き鳥?
「やきとり」と呼ばれる料理は鳥料理のひとつです。
しかし、そのすべてで鶏肉を使っているのかというと・・・そうではありません。
地域によっては、豚肉や牛肉や馬肉を用いた串焼きも「やきとり」と呼ぶことがあります。
「焼き鳥」の始まり
西暦646年つまり飛鳥時代の天武天皇による治世の頃、家畜の食用が禁止・忌避されがちだったこともあり、鶏をはじめとした食肉はあまりされていませんでした。
特に鶏は明け方に鳴くという習性から太陽を呼ぶ縁起物とされてきました。
そのため、飼育こそされていましたが、食用とすることは忌避される傾向にありました。
しかし一方で、狩猟などで捕まえられた動物は食用とされていました。
なので、野鳥などはいつも食べられるわけではありませんが、口にすることは忌避されることなく食されていたとされています。
そして時代が進み、江戸時代になって現代の「焼き鳥」の原型が生まれたとされています。
当時はキジ、ハト、スズメ、ウズラの肉を使が使われていたとされます。
さらに明治時代になる頃には焼き鳥の屋台も登場し、鶏肉を使ったものが提供されることも増えていったそうです。
「やきとり」と「焼き鳥」
鶏肉を使うものを古くから「焼き鳥」と呼ばれ、「やきとり」はそれ以外の肉を使ったものという区別がされるという説があります。
しかし、これには明確な根拠がありません。
・焼き鳥:鶏肉に塩コショウやタレをつけて串焼きにしたもの
・やきとり:鶏肉・豚肉・牛肉・馬肉などを串焼きにしたもの
このような使い分けをしている人もいる、という考えの一例となります。
三大やきとり
日本には「三大やきとり」と呼ばれるものが方々で語られていますが、その中の2つが豚肉です。
つまり、必ずしも「やきとり」だから鶏肉を使うとは限らないわけです。
室蘭やきとり(北海道室蘭市)
室蘭やきとりは、豚肉とタマネギに甘ダレで味付けしたものとなっています。
そこに洋からし(マスタード)をつけるのがメジャーな食し方です。
肉の旨味とタマネギの甘味、洋からしの辛味が絶妙にマッチした名物です。
北海道でも鶏肉を使ったものを主に「焼き鳥」と呼びますが、道南などでは「やきとり=豚串」が定番となっています。
有名な函館の「やきとり弁当」も豚肉なので、鶏肉を使ったものをとは限らないわけです。
東松山カシラ串(埼玉県東松山市)
東松山のやきとりは、豚肉のカシラ肉に味噌ダレで味付けしたものとなっています。
カシラとは顔部分の肉のことです。
つまり、この地域の「やきとり」は鶏もも肉でもむね肉でもなく、豚の顔肉を使っているのです。
弾力のある肉が噛むほどに深い味わいへと変わり、気付けば病みつきになっていると言われるほどの名物になっています。
今治やきとり(愛媛県今治市)
今治やきとりは、鶏肉を鉄板で焼いたものです。
炭火で焼くものが一般的ですが、この地域では鉄板で焼いたものが「やきとり」と呼ばれます。
今治やきとりは鉄板焼きとなるので、またジャンルの違った話となるかもしれませんね。
鶏肉以外でも「やきとり」という理由
なぜ鶏肉以外でも「やきとり」と呼ぶようになったのでしょうか?
これには諸説あるのですが、その中から3つの説をご紹介します。
もともとのやきとりは小鳥の丸焼き
「焼き鳥」は文字通り、焼いた鳥のことであり、鶏肉を使った料理というわけではありませんでした。
スズメやハト、ヒバリなどの小鳥をそのまま串に刺し焼いた、小鳥の丸焼きが起源となっています。
そのことから、串に刺して肉を焼く料理を「やきとり」と表現するようになったという説があります。
偽装説
家畜を食べることがよく思われなかった時代でも、焼き鳥自体は存在しました。
そこで、牛や馬や豚などの家畜を「やきとり」と呼んで食べることで、家畜を食べる罪悪感を軽減したという説もあります。
仕事の手伝いや力仕事をする家畜は非常に大切な存在です。
そのため、年をとったからといって食すといったりしたことに心が傷んだのかもしれません。
少しでもその罪悪感を和らげるために当時の人々は「やきとり」と呼んで、一緒に暮らした家畜ではなく野鳥なのだとしたのかもしれません。
焼き取る説
焼いた肉を串で取るということから、「やきとり」と呼んだという説もあります。
これなら鶏肉だけではなく、豚肉や牛肉や馬肉でも「やきとり」と呼んで問題ありませんね。
やきとり豆知識
ここからは、"ウンチク"として「やきとり」の豆知識をいくつかご紹介します。
ねぎまは、もともとマグロ
「ねぎま」といえば、鶏肉とネギが交互に串に刺さったものを想像しますよね。
実は「ねぎま」という料理は昔から存在していたのですが、それはマグロを使った料理でした。
マグロとネギを一緒に煮込んだ鍋料理は、かつて「葱鮪鍋(ねぎまなべ)」と呼ばれていました。
字を見て分かる通り、「ねぎま」の「ま」は、マグロのことを指していたといわれています。
マグロの赤身は漬けマグロなどにされて美味しく食べられていましたが、トロは脂が多くて調味料が弾かれてしまうことから捨てがちだったそうです。
しかし、それはもったいないということもあり、どうにかして美味しく食べようとしてネギと一緒に煮込むという発想に至ったと考えられています。
その煮込みの際、マグロとネギを串刺しにして煮込んでいたようです。
そしてマグロとネギを串刺しにしたものを「ねぎま」と呼び、焼き鳥のねぎまも同じスタイルだったことから、同じ呼び方がされるようになったようです。
焼き鳥は冬の季語
屋台で暖簾に首を突っ込み、お酒と焼き鳥を楽しむ光景などから、「焼き鳥」は冬の季語として使われています。
俳句や短歌の世界では「焼き鳥=冬」なのです。
「七大やきとり」というのもある
前述した「日本三大やきとり」だけでなく、「日本七大やきとり」も存在します。
こちらも厳密に決まりがあるわけではないですが、やきとりが名物の地として有名な地域となっています。
その地域とは室蘭と東松山と今治に、久留米、長門、美唄、福島の4つの地域が加えられたものです。
まとめ
居酒屋などで定番の「焼き鳥」といえば、鶏肉のものを想像する人が多いですね。
しかし、他の肉を使って「やきとり」としている地域も存在します。
それぞれの地域によって表記の仕方が違うのはもちろん、使っている肉も全く違うのです。