コウノトリにはなぜ「赤ちゃんを運んでくる」という逸話があるの?

コウノトリには、西洋の言い伝えとして「赤ちゃんを運んでくる」があります。
これは日本でもよく知られている言い伝えです。

ではなぜ、コウノトリにこのような言い伝えがあるのか。
それはヨーロッパなどで見られるコウノトリの習性から来ているともされています。

そして「赤ちゃんを運んでくる」という西洋の言い伝えだけではありません。
日本にもコウノトリにまつわる伝説がありますので、あわせてご紹介します。

実は赤ちゃんを連れてくるのはコウノトリではない

 

「赤ちゃんを運んでくる鳥といえば?」と聞かれれば、多くの人が「コウノトリ」と答えるはずです。
しかし、実際に赤ちゃんを運んでくるのはコウノトリとは違った鳥だったりします。

コウノトリは逸話のあるヨーロッパに生息していない

そもそも、コウノトリが分布しているのは、日本や中国、台湾や朝鮮半島、ロシアの南東部などユーラシア大陸の極東地域とその周辺に限定されています。
そのため、伝承のあるヨーロッパには生息していません。

つまり、コウノトリの逸話があるヨーロッパにはそもそもコウノトリは生息していないので間違って伝わった伝承ということになるのです!

逸話のあるコウノトリの正体は「シュバシコウ」

では、ヨーロッパで語られる赤ちゃんを運んでくるという鳥は何者なのでしょうか。
コウノトリとして日本に伝わる赤ちゃんを運んでくるとされる鳥、その正体は「シュバシコウ」という鳥です。

シュバシコウはコウノトリの仲間で、ヨーロッパや北アフリカや中近東に生息する渡り鳥の一種です。
つまり、厳密にはコウノトリではないけれど、コウノトリの仲間が「赤ちゃんを運んでくる」とされているのです。

このシュバシコウ、分布域はヨーロッパだけではなく中央アジアにまでという広大なエリアです。
そんなシュバシコウですが、最大繁殖地はポーランドとされています。
世界に生息するシュバシコウの4分の1はこのポーランドの地で繁殖するとされています。
そのため、繁殖期のポーランドでは、いたるところがシュバシコウの巣だらけになるのだとか。

シュバシコウを漢字で表記すると「朱嘴鸛」となります。
つまり「朱色のクチバシをしたコウノトリ」という意味です。
一見、コウノトリとは関連ないような名前ですが、非常に濃い関係だというのが漢字表記を見ると分かりますね。

コウノトリもといシュバシコウが赤ちゃんを運んでくるとされる理由

 

では、なぜコウノトリの仲間であるシュバシコウに、赤ちゃんを運んでくるという言い伝えがあるのでしょうか?

ヨーロッパでの習性から生まれた逸話?!

この言い伝えは、シュバシコウの習性が関係しているとされています。

ヨーロッパに生息しているシュバシコウの中には、家の屋根や煙突、塔に巣を作り繁殖するものも多くいます。
この民家など人の住む場所の傍に卵を産み、大切に育てます。

この春先に巣を作りに来るというのがポイントでした。
中世や近世のヨーロッパでは、夏至の頃に結婚をし、春先に出産の時期を迎えることが多かったとされます。
それが、ちょうど春になると繁殖のためにシュバシコウが渡ってくる時期と重なったため、「赤ちゃんを運んでくる」という伝承が考えられたとされています。

これとは全く別の由来も考えられています。
中世社会のヨーロッパでは、コウノトリが沼や池や泉などの水の中、あるいは岩山の洞穴から赤ちゃんを見つけてくるともいわれていたのだとか!

コウノトリが赤ちゃんを運んできたとされる物語

実際にコウノトリが赤ちゃんを運んできたとされる物語が残っています。
その物語とは、アンデルセン物語のひとつ『沼の王の娘』です。

この物語は、睡蓮の花の上にいる赤ちゃんを見つけたコウノトリが、子供に恵まれないヴァイキングの夫婦の元へ運ぶことで物語が始まります。

日本にもあるコウノトリにまつわる伝説

 

ヨーロッパにおいて、コウノトリが赤ちゃんを運ぶという伝承があるように、日本にもコウノトリに関する伝承が残っています。
そこで、ここからは日本におけるコウノトリの伝説をご紹介します。

鴻巣のコウノトリ伝説

埼玉県鴻巣市にある「鴻神社」、この神社には地名の由来となるコウノトリの伝説が残っています。

「鴻神社」が創建する前、この地には木の神と地元で呼ばれる大木がありました。
この木は地元では大いに大切にされ、お供えをし祀っていました。
もしお供えをしないと災いを起こしていたともいわれています。

そんなある日、この木にコウノトリがやってきて卵を産み、大切に育てていました。

ところが、どこからともなくヘビが現れ、コウノトリが大切に育てている卵を食べようとしたのです。
このヘビから卵を守るため、コウノトリは勇猛果敢に戦い、その果てに勝利しました。

するとその後、木の神が人々に危害を与えることは無くなり、平和な日々が訪れたのだとか。
平穏に過ごせるようになった人々は、この木の下にお宮を作り「鴻の宮」と呼びました。

そして、そのお宮をこの地の守り神としたとしたのです。
このコウノトリに関する伝説と神社から、この地は鴻巣という呼ばれるようになったとされています。

久久比神社のコウノトリ伝説

兵庫県豊岡市にある「久々比神社」にも、コウノトリ伝説が残っています。

この地にある下宮地区はその昔「ククイ村」と呼ばれていました。
ククイとはコウノトリの古称です。
このククイ村は、古来よりコウノトリが大空を舞う地域とされています。

そしてその情景から日本書紀にコウノトリ伝説が残っています。
その昔、垂仁天皇(すいにんてんのう)の時代、息子の誉津別命(ほむつわけのみこと)とともに宮殿前に立った際、コウノトリが大空を舞っていました。

それを見た誉津別命は「あれはなにか」と問いました。
当時皇子は大人でしたが、この時まで言葉を話すことができなかったとされています。

しかしその日、コウノトリを見て言葉を発しました。
それに天皇は大変喜び、「誰かあの鳥を捕まえて献上せよ」と指示を出しました。

その中で天湯河板挙(あめのゆかわたな)という人物が「私が必ず捕らえて献上します」と申し出て、コウノトリを追いかけていきました。
そして、はるか遠く出雲国もしくは但馬国で捕らえることに成功し、無事に献上しました。

このことからククイは、霊鳥として大切にされる存在となりました。
人々はその鳥が住んでいる土地を久々比と呼ぶようになり、同地で名前の似ている木の神「久久能智神(くくのちのかみ)」を祀る神社を創建しました。
これが久々比神社のはじまりとされています。

まとめ

赤ちゃんを運んでくるという伝承のある「コウノトリ」。
実際にはその正体は、コウノトリの仲間であるシュバシコウとされています。

この言い伝えは、ヨーロッパが古くからシュバシコウの繁殖地となっていること、そして繁殖のために渡ってくるのがちょうど春先で、中世の人たちの出産シーズンとも被っていたというのが理由だとされています。

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