「初物」を食べるとなぜ寿命が延びるとされているの?旬との違いは?

「初物」は縁起が良く、食べると寿命が延びるとされています。
では、なぜ「初物」を食べると寿命が延びるとされるのでしょうか?

ここでは、食材に使われる「初物」という表現について解説します。
併せて寿命が延びると言われるようになった背景や食材の旬との違いについても見ていきましょう。

初物とは

「初物」とは、そもそもどのようなものをあらわすのでしょうか?

季節に先駆けてとれた食材のこと

「初物」は、季節に先駆けて収穫された野菜や果物、穀物をはじめ、市場に出回るようになった食材の事です。
漁獲時期が限られる魚介類などの獲れはじめたものも含まれます。

旬との違い

初物は、その季節に最初に収穫・漁獲された食材のことです。
数も少なく希少なため、高値がつけられることが多いです。

それに対して、旬はその季節に多く収穫・漁獲・加工される食材となります。
店頭などに並ぶ新鮮で美味しい食材であり、いわゆる食べ頃や出盛りの時期を指します。
そのため、旬の食材は価格も安くて栄養価も高くなります。

初物が取れてから、安定して獲れるようになると旬になるという事ですね。

初物を食べると75日寿命が延びるって本当?

「初物」を食べると、寿命が75日延びると古くから言われています。
しかし、なぜ「初物」を食べると寿命が延びるのでしょうか?
また、75日という日数はどこから来たのでしょうか?
ここからは「初物」と寿命の関係について見ていきましょう。

正確には初物をねだったら寿命が延びた

「初物を食べると寿命が75日延びる」という言い伝えがあります。
「初物七十五日」という言い回しは、江戸時代から伝わることわざとされています。

この寿命が75日延びるというのは、ある死刑囚の逸話が関係しています。
江戸時代、死刑囚には「死ぬ前に何を食べたいか」を聞き、それを叶えるという習慣がありました。

この時、ある死刑囚は1日でも処刑される日を伸ばすため、収穫されるのが当分先となる食材を願いました。
現在のように養殖やハウス栽培は進んでいませんでしたので、その死刑囚の願いをかなえるにはせめて初物が取れるまで待つしかありませんでした。

結果、その死刑囚が願った食材が初物として口にできたのは75日後となりました。
このことから、初物を食すと寿命が75日延びるといわれるようになったとされます。

正確には、初物を食べたので寿命が75日延びたのではなく、初物を食べたいと希望したので結果的に75日長く生きることができたという事になりますね。

江戸時代に迎えた「初物ブーム」

「初物」ブームが訪れたのは、輸送・運搬技術が発展していない江戸時代のことです。
当時は当然ながら冷蔵・冷凍技術は現在のように進んでいません。
そのため、食材が傷んでしまうことも多かったそうです。

そうなると、結果的に「初物」のように無理して早く輸送しているものは値段が上がります。
それでも、験担ぎを大事にした江戸っ子たちは借金してでも「初物」は口にしようとしました。
結果、江戸時代に江戸っ子たちの間では「初物」ブームが生まれました。

「初物四天王」という特に好まれた初物があった

「初物」ブームが生まれた江戸時代、初物の中には初物四天王と呼ばれる食材がありました。

初物四天王:初鰹

初物四天王の中でも特に筆頭格ともいえるのが「初鰹」です。
昔は下魚とされていた鰹ですが、鎌倉時代ごろに「勝男」と当て字されるようになってから特に武家社会で縁起のいい魚とみなされるようになりました。

春先から初夏の時期に漁獲されるものが「初鰹」と呼ばれ、一本あたり三両(現在の価値で20万円相当とも)という高額で購入されたという記録も残っているほどです。

初物四天王:初鮭

「初鮭」もまた、初物の代表格です。
日本では古くから鮭が多くの方に親しまれてきました。
東日本では、大晦日に年越しの食事として食す「年取り魚」とされてきていたほどです。

初物四天王:初茸

初物四天王の1つに「初茸」というものもあります。
これは茸類全般のことではなく「松茸」のことをあらわしています。

室町時代も終盤になると武士が松茸狩りをするようになり、江戸時代には庶民も口にすることができるようになっていたのだとか。

初物四天王:初茄子

「一富士二鷹三茄子」という初夢に関する言葉があるように、昔から茄子は縁起物とされてきました。
これは「(事を)成す」と茄子をかけているともいわれています。

「秋茄子は嫁に食わすな」という言葉もあることから、秋が旬と思われる事もありますが、茄子は初夏から収穫することができます。
そのため、茄子の初物が出回るのも書家という事になります。

「初物」は食べる時に向く方角がある?

「初物」は、恵方巻のように食べる際に向く方角があるという言い伝えがあります。。
ここからは「初物」を食べる方角について見ていきましょう。

初物は東を向いて笑って食べる

関西には、東を向いて笑って食べるという言い伝えがあります。
これは、「東より先に初物を口にした」という意味合いで食べるのだとか。
一種のマウント取りという事になりますね。
また、東は太陽が昇る方角であるため、太陽の恵みに感謝して食べるともされています。

初物は西を向いて笑って食べる

逆に関東や比嘉に資本には、西を向いて笑って食べるという言い伝えがあります。
これも「西より先に初物を口にした」という自慢の意味合いがあるのだとか。

また、はるか西の果てには極楽浄土があると伝わっていたことから、神仏に感謝して西を向いて食べるともされています。

まとめ

「初物」は、その季節に初めてとれた食材のことです。
代表的な食材として、「初鰹・初鮭・初茸・初茄子」があり、これらは初物四天王ともいわれています。
これらの食材を、借金をしてでも口にするというブームが江戸時代には広まりました。

なお、「初物」を食べると寿命が延びるという言い伝えがあります。
これは、ある死刑囚が最後の晩餐に時季外れのものを願い、少しでも長く生き長らえようとしたという話から来ているともされています。

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