「一将功成りて万骨枯る」とはどんな意味の言葉?その由来や類義語は?

限られた1人が功績を残す陰で無数の犠牲が生まれることあらわす「一将功成りて万骨枯る」。
これは、戦場で多くの兵士が犠牲になること、もしくはそれによって結果と評価を得た将軍のことを指す言葉です。

ここでは、この「一将功成りて万骨枯る」という言葉について、その意味や由来、そして類義語について見ていきましょう。

「一将功成りて万骨枯る」とは

まずは「一将功成りて万骨枯る」という言葉について見てみましょう。

「一将功成りて万骨枯る」の意味

「一将功成りて万骨枯る」とは、戦場で無数の兵士が犠牲になることを意味します。
もしくは、将軍1人がその功績を我が物とすることを言います。

転じて、1人が功績を上げる陰で多くの人が犠牲となっていることの例えとして使用されます。

近年では、成功者と協力者の関係を指して使用されることがあります。
その際は、上司や部下、先輩や後輩のように上下関係がある中で、上の立場のものが手柄を独り占めするといった状況を批判して用いられます。

「一将功成りて万骨枯る」の由来

 

では「一将功成りて万骨枯る」はどのようにしてうまれた言葉なのか、その由来について見ていきましょう。

曹松という人物の詩の一節が由来

「一将功成りて万骨枯る」は、曹松の漢詩「己亥の歳」の一節を出典とする言葉とされています。
曹松というのは、唐王朝末期に詩人として活躍した人物です。

この詩が詠われたのは、869年頃のこと。
当時は、約300年続いた唐王朝が衰退しはじめた時代でした。

各地で反乱が起こる混迷の時代であり、庶民の暮らしは困窮するばかり。
唐という国そのものも貧しくなっていました。

しかし、そんな混乱の時代であっても将軍たちは自分たちの功績しか考えていなかったのです。

限られたものだけが功名を得ることへの嘆きの詩

曹松は戦乱に苦しむ庶民の暮らしを案じ、ある詩を詠いました。
その詩とは「君に憑む、話る莫かれ封侯の事を、一将功成りて万骨枯る」というものです。

これは「功績を挙げたいなどと語らないことを願う」「将軍1人が功績を上げる陰でおびただしい数の人骨が朽ちていくのだ」というような意味があります。

戦争を重ね勝利すれば将軍は手柄を得るかもしれませんが、庶民の生活は苦しくなるばかりです。
戦場に出れば、名も伝わらぬ兵士たちが多く犠牲になっていたことでしょう。

曹松はこの詩に、自分の功績のことしか考えない将軍に対して嘆きを込めたのです。

「一将功成りて万骨枯る」の類義語

 

最後に「一将功成りて万骨枯る」の類義語を見てみましょう。
類義語としては、「小の虫を殺して大の虫を助ける」や「尺を枉げて尋を直くす」などがあげられます。

小の虫を殺して大の虫を助ける

「小の虫を殺して大の虫を助ける」とは、少数を犠牲にすることで大多数を守ることを言ったことわざです。
全体を生かすために、一部や少数を切り捨てるという用い方をすることもあります。

「大の虫を生かして小の虫を殺す」といった別の言い回しがされることもありますが、意味合いは全く同じです。

犠牲を強いるという点が「一将功成りて万骨枯る」と共通しています。

尺を枉げて尋を直くす

「尺を枉げて尋を直くす」とは、短いものをさらに縮めて、長いものをもっと伸ばすということをあらわすことわざです。
大事のために小事を犠牲にすることを例える際に使用されます。

まとめ

「一将功成りて万骨枯る」は、1人の将軍のために大勢の民衆が犠牲になっていることを詠った唐時代の中国の詩から来ています。
功績のために犠牲を払うといった状況で使用されるほか、功績を上の立場のものが独占するという用い方をすることもあります。

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