本などの書籍がたくさんあることを「汗牛充棟(かんぎゅうじゅうとう)」と言います。
特にこれらは特定の分野の書物が多いことを言った言葉です。
しかし、なぜその表現が「汗牛充棟」なのでしょうか?
今回はそれら「汗牛充棟」という四字熟語について解説します。
ここではその意味はもちろん、由来や語源についても説明します。
目次
「汗牛充棟」とは
まずは「汗牛充棟」がどのような言葉なのかを見ていきましょう。
「汗牛充棟」の意味
「汗牛充棟」は書物が非常に多いことの例えです。
中でも、特定の蔵書が極めて多いことの形容として使用されます。
これらは単に著作が多いという意味で使用される言葉です。
例えば、あるテーマやジャンルについて書かれた作品が世の中に溢れている状態のことを言う四字熟語となっています。
逆に本が世の中に溢れていることだけを言うこともあるので、そこは状況によって意味も若干変わります。
「充棟汗牛」と表現されることもある
「汗牛充棟」は熟語を入れ替えて「充棟汗牛」とも表現されます。
これら四字熟語には往々にしてそういったケースが見られます。
もちろん、どちらも意味は同じなので好きな方を使用しましょう。
「汗牛充棟」の由来
では「汗牛充棟」はどこから生まれた言葉なのでしょうか?
ここでは「汗牛充棟」の由来や語源についてまとめます。
あるテーマの本がたくさん書かれていることを例えた言葉
「汗牛充棟」という字面からだと、まるで汗をかいた牛の群れがパンパンに犇めき合っているような光景が浮かんできます。
しかし、本来は大量の本を牛車で運ぶと牛が汗をかき、家の中に積み上げると棟木にまで届いてしまうという様子を言った言葉となります。
これらの出典は中国唐代の詩人である柳宗元の「陸文通先生墓表」にあるのだとか。
そこには「其為書、処則充棟宇、出則汗牛馬」という表現があります。
これは「歴史書『春秋』に関する書物は世間に多いため、積み上げれば建物を満たし、荷車に乗せれば牛が汗まみれで引いていく」という意味を持っています。
この建物を満たすという部分が「充棟」と表現されているわけです。
また、牛が汗まみれで引くという部分が「汗牛」と表現されているのです。
それらたくさんの本を積み上げた表現、また牛が汗まみれで引く表現から来たのが「汗牛充棟」と言えるでしょう。
転じて、特定の題材について書かれた本が世間に溢れていることを言うようになったとされています。
近年では単に本が多いことを言った表現としても使用されます。
「汗牛充棟」の類義語
最後に「汗牛充棟」の類義語についても見ておきましょう。
「汗牛充棟」の類義語としては「載籍浩瀚」や「左図右史」などがあります。
載籍浩瀚
「載籍浩瀚」とは、数えきれないほどの書物があることの例えです。
これらは書籍に埋もれんばかりの様子であることを言った四字熟語となっています。
「載籍」は書物や書籍などを意味する言葉です。
「浩瀚」はものが豊かな様子を意味する表現となります。
なお、これらの言葉は本の巻数が多いことの意味で使用されます。
それら無数の本が溢れているという点が「汗牛充棟」と同じと言えるでしょう。
左図右史
「左図右史」とは、所蔵している書物がとても多いことの例えです。
左右のどちらを向いても本ばかりという様子から来た言葉です。
「左」はそのまま左で「右」もそのまま右を意味します。
「図」は書籍のことで「史」は史書のことを言います。
つまりこれらはどこを見ても本だらけの状態を指す言葉なのです。
それらの点が「汗牛充棟」と似ているのではないでしょうか。
まとめ
「汗牛充棟」は書物が溢れんばかりの様子を言った言葉です。
これらは単に汗まみれの牛が棟を満たしていることを言った言葉ではありません。
むしろ大量の本を運ぶことで汗をかく牛、建物を埋め尽くすほどの本を著した表現となります。
そこは勘違いしやすい表現なので、正しい意味を覚えておきましょう。